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【Road to UFC S04】まさかの初戦敗退を経て、エフェヴィガ雄志「このしくじりを大きなバネにできるか」

【写真】Combat Global、TTFCでのサンチェス戦とやるべきことをやっていた。その上での敗北は、Road to UFCに豪州&ニュージーランド勢の現実を再確認させられた (C)MMAPLANET

5月23日(金・現地時間)に中華人民共和国は上海のUFC PI上海で開催されたRoad to UFC S04。ライト級に出場し、豪州のドン・マーファンと対戦したエフェヴィガ雄志は判定負けを喫し、初戦敗退という結果に終わった。
text by Takumi Nakamura

デビューから北米・海外での戦いを見据えてキャリアを積んできたエフェヴィガ。まさに満を持してのRTU出場だったが、結果を残すことはできなかった。試合前のインタビューでは「ギリギリ勝ってトーナメントを勝ち進むんじゃなくて『俺はUFCで戦っていける選手なんだよ』ということを分かってもらう試合をしたい」と絶対的な自信を持っていたエフェヴィガはなぜ敗れたのか。本人にその敗因を振り返ってもらうと共に、再びUFCを目指すために必要なものが何かを訊いた。


――RTUはドン・マーファンに判定負け、一回戦敗退となりました。この結果も含めて今はどんな心境ですか。

「未だに落ち込んでいると言えば落ち込んでますね(苦笑)。試合が終わって2週間はしっかり休んで、3週目からちょっとずつ動き出してみたいな感じで、いつも通りしっかり休みは取りました。気持ち的にはすぐ次だ!次だ!となったんですけど、肉体的には試合と試合までの練習のダメージもあるんで、そこはちゃんとダメージを抜かなきゃなと思って過ごしていました」

自分がパンチを打ったりカーフを蹴ったりすれば、相手は怖気づいくとうか、怯んでくれたんですよ。でもマーファンはそれがなくて

――簡単に結果を受け入れることが出来なかったですか。

「負けた瞬間は何て言うんでしょうね……。ホントに言葉にならなかったです。気持ちを切り替えようと思っても切り替わらなくて……というのがしばらく続いていました」

――エフェヴィガ選手にとってはプロとしての初黒星で、その部分でも初めての感覚だったわけですよね。

「はい。しかも自分の中で過去一ぐらいで自信があった試合で、対戦相手どうこうというよりも、自分自身に対する自信があったんです。その分のダメージというか、衝撃は大きかった気がします」

――試合そのものを振り返っていただけますか。

「とにかくダメダメだなみたいな(苦笑)。そう思うところがキリがないぐらいありました。『なんでここでこうしないんだろう?』とか『ここはもっとこうできたのに…』と反省点がものすごく多いです。グラウンドでトップキープされたのもそうなんですけど、打撃の部分やケージ際で立って組んでいる部分でも反省点が多かったです」

――試合展開そのものは想定していたものでしたか。

「そうですね。マーファンは組みが強い選手で、どんどん来るだろうというのは想定通りでした。ただ想定と違うところ、これまで自分がやってきた相手と違うところは、自分がパンチを打ったりカーフを蹴ったりすれば、相手は怖気づいくとうか、怯んでくれたんですよ。でもマーファンはそれがなくて、マーファンの試合にかける覚悟を感じました。マーファンが本気で自分の首を取りにくるじゃないですけど、こっちの打撃をくらっても前に出てプレッシャーをかけ続けて、なんとしてもコイツを倒してやるという気迫みたいなものは、これまでの相手と違いました」

――マーファンはテイクダウンを切られそうな場面でももうひと粘りしてくる印象でした。

「最初に組んだ時は自分も肩を浮かせてワキを差して五分五分の状態に出来て、マーファンの体のくねらせ方だったりは上手いなと感じたんですけど、これなら組みでもいけるな思ったんです。でも1Rの終盤に両ワキを差された時にめっちゃ強さを感じて、全く抗えずにテイクダウンされたんです。マーファンの得意な形に入ると自分には抗う力がなかったと思います」

――2Rは1Rよりも早いタイミングでテイクダウンを許す展開でしたが、戦っていてどんなことを考えていましたか。

「2Rにテイクダウンされた時はラウンドの残り時間も結構あったので、ここから逃げないとマズイなと思いました。ただそこで全然動けなかったことが反省点ですね。もっと自分の体を使ってマーファンを剥がせればよかったんですけど、マーファンが抑えるのが上手かったですし、それ以上に自分が全然動けませんでした(苦笑)。

しかもヒジで切られて、最後は必死に動きましたけど、バックを取られて極められそうになって…あそこが今回の試合のポイントだったかなと思います。試合後にジャッジペーパーを見たら、ジャッジ3人とも10-8で相手につけていたんで、もっと違う展開を作らないといけなかったですね」

――自分が攻められる展開になることも想定して練習していたと思うのですが、エフェヴィガ選手の動きが固かったのか。それともマーファンのテイクダウン&トップキープが想定以上だったのか。どちらだったと思いますか。

「自分の動きが固かったのも多少あったかもしれませんが、ああいう展開を作られてしまうことが今の自分の1番大きな弱点だと思います。疲れて動けなかったと言えば、そこまでだと思うんですけど。僕も米国のキルクリフで練習させてもらって、日本でも専修大学でレスリングの練習をして、レスリング自体は伸びているし、テイクダウンディフェンスもかなり良くなったと思うんですよ。それでもマーファンにはテイクダウンされてしまったので、そこにはしっかり向き合わなければいけないです」

――3Rはボディを効かせる場面もありましたが、あそこで畳みかけられなかったのはマーファンがタフだったからでしょうか。

「2Rが終わった時、自分の中では2Rは確実に相手に取られて、1Rはどちらが取ったか分からないと思っていて、3Rになったら少し相手が引いてくれるはず、これまでと同じ勢いではこないだろうと思ったんです。案の定、3Rが始まると相手は前に出てこなかったんで、自分から行けたんですけど、逆に自分の方が疲れちゃったんですよね(苦笑)。

それで自分から打撃を当てていたのに組みに行ってしまって『うわ…疲れている。体が動かせない』となってしまいました。セコンドの長南(亮)さんたちからも離れて打撃を出せと言われていましたが、それを出来ずに時間を使ってしまいました。そこは自分の弱さでもあると思います。あとは相手も僕のパンチをもらっていましたけど、気持ちが強くて倒れなかったですね。自分から行けたは行けたけど、その時間がすぐに終わってしまった。もっと勢いよく攻め続けてボディを効かせていれば相手はうずくまっていたかもしれないし、顔面まで打撃をつなげていれば倒せたかもしれないですが、自分がそこまで持っていけませんでしたね」

――想像以上に自分のスタミナのロスを感じていたわけですか。

「ラウンドが始まる瞬間は何も感じなかったんですけど、ワッと攻撃を出したら急に疲労が来た感じはありました。だから今回の試合で始めて分かったことは多かったですね」

――今回の敗戦を踏まえて、今はどんなことを意識して練習しているのですか。

「やることはある程度明確になっているというか。テイクダウンディフェンスは良くなってきているけど、テイクダウンされた時にどうするか。完全にテイクダウンさせずにスクランブルに持っていくとか、テイクダウンされてから立ち上がるとか、スイープするとか……そこが自分の弱点ということはマーファン戦を見た人はみんな分かることだと思います。あとはもともと自分が得意にしているところ、立ちのシチュエーションでのストライキングは意識してもっと伸ばしていきたいです。弱点の克服と持っている武器をさらに強くする、そこを考えていきたいです」

9月14日にTTFCがあるので、そこでふさわしい相手が見つかれば復帰戦になると思います

――何か新しい練習を取り入れることも考えていますか。

「僕はTRIBEという練習の拠点があって、キルクリフにもたまに行くんですけど、その環境の中で出来ることもまだまだあるし、練習内容を少し変える工夫も出来るので、そこまで大きく練習環境を変える必要性は今のところ感じていないです」

――現時点で次の試合はいつ頃を想定していますか。

「今年も9月14日にTribe Tokyo Fight Challenge(TTFC)があるので、そこでふさわしい相手が見つかれば、TTFCが復帰戦になると思います。それが難しい場合でも10月には試合をしたいですね」

――昨年のTTFCではエマニュエル・サンチェスと対戦しました。今年も外国人選手と戦いたいですか。

「僕の希望としては前回の反省もしたいので、こちらの打撃で下がらない選手とやりたいです。自分の我を通してくる選手とちゃんと向き合いたいというか、真っ向勝負したい気持ちです」

――海外にはエフェヴィガ選手の打撃をもらっても前に出てくる選手が数多くいると多いと思います。UFCを目指す意味でも、そういったタイプをどう攻略するかが大きなテーマになりそうですか。

「それは大きなテーマですね、自分が試合で負けて直面した問題から感じることであり、UFCの試合を見ていて思うのが、UFCに出る選手たちはそこができるのは最低条件みたいな。相手に前に出て来られて、すぐに引くようでは当然試合にも勝てないし、お客さんもそれでは満足しないですよね」

――RTUで勝てなかったことをどう捉えて、これからの戦いに活かしていきたいと思っていますか。

「この結果は全く予測していなかったですけど、それはもう起きてしまったことなんで、その結果に真摯に向き合う。試合が終わって1カ月の時点で何がダメだったのか、今の状況について話していますけど、ここで考えることをやめるのではなく、また試合映像を見返したり、長南さんや他のトレーナーの方にも意見を聞いたりして、考える作業をやめるのではなく、さらに積み重ねたいです。

そうすれば1つ問題を解決したら、別の問題も見えてくると思うんで。簡単に言えば大分しくじったと思うんですけど(苦笑)、このしくじりを大きなバネにできるかどうか。そこに自分の今後がかかっていると思います。だから今回の負けをいい意味で忘れないように、絶対に忘れないように…とすごく思いますね」

――RTUはUFC本戦出場をかけたトーナメントという意味で、通常のワンマッチとは違う形式のフォーマットです。よりシビアな競り合いや凌ぎ合いを経験できたことは大きかったですか。

「今の時点でそうは言えないですが、後々になってRTUの負けが大きかったですと言えるようにしたいですね。まだあの負けから何も出来ていない…というか次の試合までは何も出来ないので。これから戦っていく姿や結果で見せていかなければいけないので、あの負けが大きかったと言えるような日々の過ごし方、次の試合への向き合い方をしたいです」

――ここからは来年のRTUを目指す戦いになりそうですか。

「今年は9月・10月に順調に試合をして、来年またRTUが行われるなら、そこに出たいと思っています。今回からオセアニアの選手が入ってきて、ライト級でもトーナメントはやりやすいと思うのですが、まだ読めない部分があるので、そこはどうなるかを見ていきたいです。RTUがなければ別のプランを考えようと思いますが、僕の第一希望はもう一度RTUに出ることです」

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