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【RIZIN LANDMARK11】地元・札幌大会で万智と対戦、ソルト「まだ私の本気の打撃を受けていない」

【写真】部屋の奥には鹿のはく製が飾られていた。さすが北海道……(C)SHOJIRO KAMEIKE

14日(土)に札幌市南区の真駒内セキスイハイムアイスアリーナにて開催されるRIZIN LANDMARK11で、札幌在住のストロー級QOPソルトが、万智と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

ソルトにとっては、これが2度目のRIZIN出場となる。前回は2023年、当時ストロー級QOPのKARENを下してベルトを巻いたあと、RIZIN札幌大会に参戦。DEEPミクロ級&DEEP JEWELSアトム級チャンピオンの、大島沙緒里との王者対決でソルトは破れた。

あれから2年、ソルトは藤野恵実を相手にストロー級QOPの防衛に成功したものの、直近の試合では今年3月、韓国のパク・ボヒョンに判定負けを喫している。そんななかで迎える地元での万智戦――ソルトが大きなマインドの変化を語った。


――RIZIN札幌大会の開催は、2023年6月以来2年振りです。前回も出場しているソルト選手にとっては、今大会についてどのような想いを持っていますか。

「私個人の話をすれば、2年前は1分16秒で負けています。地元の人たちが一番会場に来てくれて、一番観てくれている試合だったのに、すごく短い時間で試合が終わってしまいました。今回は本当に良い試合を見せて、しっかり勝ちたいと思っています」

――この2年の間に、ソルト選手は修斗で戦い、パンクラスでベルトを守り……と様々なことがありました。そのようななかで、ソルト選手は北海道在住選手として、RIZIN札幌大会を待ち望んでいたのでしょうか。

「う~ん……ずっと目の前の試合でいっぱいいっぱいになっていて、常にそう考えていたわけではないです。でも実際に札幌大会の話を聞いた時は、『出場して挽回したい。皆の残念な気持ちを払拭したい』とは考えました」

――大島選手に敗れ、周囲は残念な雰囲気に……。

「私の周りは結構辛口な人たちが多くて(笑)。『相手が強かったから仕方ないよね』というより、『なぜもっとちゃんとやらないの!?』というぐらいの言われ方で」

――かなり辛口ですね(笑)。

「私が、そういうことを言わせちゃうようなタイプなのでしょうね。アハハハ」

――当時はソルト選手がパンクラスのベルトを巻き、大島選手とのチャンピオン対決に期待も高かったのだろうと思います。

「しかもあの体格差で、皆が『これは勝たなきゃおかしいでしょ』と思っていたことも分かります。でもイベント自体は盛り上がっていましたね。普段は北海道から出て行かないとみることができない大会が、地元に来てくれるということもあって」

――以降、ソルト選手は藤野恵実選手を相手にパンクラスのベルトを防衛する一方、修斗では海外勢を相手に1勝2敗という戦績です。

「ずっと試合を視ていた人だったので、藤野さんに勝てたことは自信になりました。そのあとの試合――修斗で負けた試合(※パク・ボヒョン戦)では、自分についてよく知ることができた気がします」

――というと?

「自分の強みと、自分がダメな時と……『こうなると自分はダメで、こういうふうに試合をつくっていく選手なんだ』ということが分かりました。それまで自分で自分のことを分かっていなかったんだと気づいて」

――藤野戦前のインタビューでは「常に焦って、常に追い込まれながら練習している」と言っていました。その中で自身のことを見つめ直す余裕はなかったですか。

「余裕がなかったのか、そもそも考え方が違っていたのか――以前は『私はこうなりたい』とか『こういう戦いが自分には向いているはずだ』と、他の誰かを参考にしていました。いろんな選手の試合を視ながら、その選手みたいに動けるようになろうと考えていて」

――当時は参考にする選手として、スタンプ・フェアテックスの名前を挙げていました。

「そうですね。今もそうした選手を参考にして練習していますけど、まず自分で自分の分析が違うんじゃないかと思って」

――たとえば自分の分析と実際の姿で、どのような点が違うと感じましたか。

「たとえば、私は自分で試合を構成していく力がないことに気づきました。今までの試合は、相手がテイクダウンや打撃の何かを狙っているのを察知しながら試合をつくっていくことが多かったんですよ。そんななかで私が負けるのは、相手が狙っていることを防ぎきれなかった時。なぜ防ぎ切れないかといったら、私の中で『相手はこうして来るから、こうする。でも失敗したらどうしよう?』という気持ちが大きくて。つまり、試合の中で挑戦することができていなかったんですね」

――パク・ボヒョン戦でいえば、どのような点でしょうか。

「前回の試合では組んで壁際になった時、明らかにパワー差を感じたんですよ」

――相手はパワーが強いと?

「いえ、自分がテイクダウンできるんじゃないかと感じました」

――おぉっ!

「でも『どうしようかな』と迷っている間に、ずっと自分が押し込まれたままで時間だけが過ぎていきました。あとから考えると、打撃で自分のほうがリズムを掴めていなかった時点で、ケージ際で自分からテイクダウンを狙っても良かったんです。それだけ自分も練習していますし。でも失敗して『なぜテイクダウンに行ったんだ!』と言われたらどうしよう、と思って……」

――周りは厳しい目で見ている人たちばかりですし。

「アハハハ! でも常にそういう気持ちになっていると、MMAを引退した時、自分の戦い方全てに後悔してしまうだろうと思って。前回の試合が終わったあと、そのことに気づいたので、今は修正しているところです。次の試合は自分からつくったりとか、失敗を恐れずに自分から思いきり行けるようになると思います」

――今回は勝てば、この2年間の全てをひっくり返せるような相手と対戦します。

「最初は対戦相手のイメージとして万智選手と、もう一人別の選手を想定していました。でも私の中では、何となく万智選手と対戦することになると思っていたんです。ただの勘で、何の根拠もないけど……正式決定する前から、勝手に万智選手を想定した練習を始めていましたね。ジムの代表からも『まだどうなるか分からないから、そんなに根詰めるな』とか『全然別の選手になったら、どうするんだよ』とか言われて」

――いわゆる「女性の第六感」は凄いですね(笑)。ただ、それは自身の中に「万智選手と対戦したい」という気持ちがあったからではないですか。

「実は私がプロデビューした直後ぐらいに、東京で万智選手と練習したことがあって。まだ万智選手はアマチュアで試合をしていた頃でしたけど、私が何度もテイクダウンされて、何度も極められました」

――えっ、そんなことがあったのですか。

「はい。さらに今から1年ぐらい前、また万智選手と練習する機会があり、その時もテイクダウンされ続けました。だから今回の対戦が決まったあとも、最初は弱気というかマイナスな練習ばかりしていて。『こうされたらヤバいから、こうしよう』とか……つまり『こうなったら負ける』ということばかり考えていましたね。

でもある時、代表から『相性が悪いとは思っていない。今やっても勝てると思う。お前が負けるとしたら、自分に気持ちで負けた時だよ』と言われたんです。その言葉をもらって、私も気持ちを切り替えることができました。本来は自分から試合をつくっていかないといけない。今は『自分がやりたいように動いたら勝てる』と思えるところまで仕上げてきました」

――とても重要な、素晴らしいマインドの変化です。

「練習した時のことを考えると、万智選手は私が相手でラッキーだと思っているかもしれません。でも練習って、打撃は思いっきり当てないですよね。万智選手と練習した時も――だから『万智選手はまだ私の本気の打撃を受けていないからね』ということです」

――それほどマインドが変化すると、練習の質や成長度合いも大きく変わりませんか。

「はい。前回の試合は、練習で一番良い動きをしなきゃいけない時が一番良くなかった時期で。試合でも良くない面が出てしまいました。今は真逆で、一番大事な時期に良い動きができている。スパーリングでも調子が良くて安心しています」

――練習した時の内容だけでなく、実績を見ても万智選手が有利だと言われても仕方ないマッチメイクです。記者会見でも万智選手の席は前列で、ソルト選手は後列でした。

「そうでしたね。『あ、私は後ろなんだ』と思いました。でも会見の時は、そこまで何も思ってはいなかったんですよ。でも東京から北海道に戻ってきたら、いろんな人に『なぜ後列なの!?』と言われて」

――やはりチェックが厳しい方々ですね。

「アハハハ! そこで私も反省しました。自分はパンクラスのチャンピオンなのに、知名度アップに力を入れることができていない。ただ『強くならなきゃ、強くならなきゃ……』という気持ちばかりで。万智選手は強いだけじゃなく、本当に盛り上げようとしていて。その面では私も頑張らないといけないなって思います」

――目指すはカラオケ大会の優勝ですね。

「実はあれも羨ましいと思っていて」

――ソルト選手もカラオケ大会に出場したかったのですか。

「というより、私も東京にいたらイベントや、パンクラスの中継の解説に呼ばれやすいのかなとは思っています。でも私は北海道でMMAをやっていきたいので、地元でもっと頑張らないといけないですね。だから最近は北海道のラジオ番組に出演したりとか」

――なるほど。万智選手有利という声に対して、ソルト選手から言いたいことはありますか。

「今は万智選手だけじゃなく誰と対戦することになっても、相手は強いので仕方ないです。記者会見で万智選手が、RIZINと海外大会との選手交換みたいな話をしていたじゃないですか。私は万智選手より体格も大きいし、パワーもあります。万智選手ではなく私ならこのパワーと体格で海外の選手に勝てる、と期待してもらえるような試合をしたいですね。……すみません、質問に対する回答になっていますか(苦笑)」

――大丈夫です(笑)。

「私にとっては、2年前の北海道大会のリベンジでもあります。でも2年前とは別人のように成長しているので、期待してください。応援よろしくお願いします」

■視聴方法(予定)
6月14日(土)
午後2時~ABEMA、U-NEXT、RIZIN100CLUB、スカパー!、RIZIN LIVE

■RIZIN LANDMARK11 対戦カード

<フェザー級/5分3R>
ヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)
木村柊也(日本)

<ライト級/5分3R>
堀江圭功(日本)
西川大和(日本)

<フェザー級/5分3R>
ビクター・コレスニック(ロシア)
SASUKE(日本)

<RIZINワールドGPヘビー級T一回戦/5分3R>
アレクサンダー・ソルダトキン(ロシア)
プリンス・アウンアラー(フランス)

<バンタム級/5分3R>
中島太一(日本)
CORO(日本)

<バンタム級/5分3R>
後藤丈治(日本)
鹿志村仁之介(日本)

<52.5キロ契約/5分3R>
ソルト(日本)
万智(日本)

<バンタム級/5分3R>
マゲラム・ガサンザデ(アゼルバイジャン)
安藤達也(日本)

<フェザー級/5分3R>
イルホム・ノジモフ(ウズベキスタン)
新居すぐる(日本)

<ヘビー級/5分3R>
シナ・カリミアン(イラン)
荒東“怪獣キラー”英貴(日本)

<フェザー級/5分3R>
山本空良(日本)
鈴木博昭(日本)

<フェザー級/5分3R>
遠藤来生(日本)
ザーシバーディン(中国)

<キック 61キロ契約/3分3R>
上野奏貴(日本)
山川賢誠(日本)

<キック 64キロ契約/3分3R>
上野空大(日本)
ファーパヤップ・GRABS(タイ)

<キック 55キロ契約/3分3R>
としぞう(日本)
鵜澤悠也(日本)

<ウェルター級/5分2R>
成田佑希(日本)
能登崇(日本)

<フライ級/5分2R>
鈴木嵐士(日本)
早坂優瑠(日本)

<バンタム級/5分2R>
小林大希(日本)
森永ユキト(日本)

<キック 52.5キロ契約/3分3R>
西島恭平(日本)
林修斗(日本)

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