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【Shooto2025#03】ウェルター級転向初戦でカンポスと激突、岩﨑大河「フィームーとナックモエで……」

【写真】DWCSでの敗戦から半年――強敵を迎える岩﨑。いつもの大河スマイルの奥にあるものとは(C)SHOJIRO KAMEIKE

18日(日)、東京都港区のニューピアホールにて開催されるShooto2025#03で、岩﨑大河がベネズエラのアレクシス・カンポスと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

当日は昼の部=Shooro2025#03、夜の部=Shooro2025#04でいずれもメインとして予定されていた世界チャンピオンシップが中止に。その事態を受けて昼の部は岩﨑×カンポスがメインとなった。岩﨑にとっては2023年9月のキム・ウンス戦以来の修斗出場となるが、実はキム・ウンス戦も当初はコメインの予定で、メインが中止となったために岩﨑の試合がメイン扱いとなっている。

今回のインタビューは両大会のメイン中止が発表される前に行われていた。したがって自身の試合がメインとなる点については触れていない。ただ、おそらく岩﨑にとって自身の試合がメインかどうかは関係ないだろう。それはこの試合が彼にとって、再びDWCSにチャレンジするための試練であり、対戦相手のカンポスもその試練にふさわしい相手だからだ。

昨年9月、岩﨑はDWCSでGLORYミドル級トーナメント優勝者のユースリ・ベルガウイと対戦した。DWCSに欠場者が出て、代役として選ばれたとのことだったが、UFCを目指す岩﨑にとって断る理由はない。ただ、UFCが欲しいのはベルガウイ――そのことも重々承知しながら岩﨑はラスベガスで戦いに挑み、敗れた。

試合前のインタビューでは「は今回、このレベルの相手に対して自分がどれぐらい通用するのか。それが分かれば良いと考えている」と語っていた岩﨑。DWCSを経て、今回はウェルター級としての再出発となる。彼はDWCSの戦いで何を感じたか。カンポスに勝ち改めてDWCS、その先にあるUFCを目指す岩﨑に話を訊いた。


海外で自分と同じぐらいの戦績の選手と対戦した時、相手と同じレベルの試合はやってきていない

――DWCS以来の試合となるカンポス戦を控えている岩﨑選手です。今回からウェルター級に転向しますが、階級変更はいつ頃から考えていたのでしょうか。

「前回のDWCSで負けた直後から、ですね」

――ベルガウイに敗れ、フレームやフィジカルの差を感じたということですか。

「それほどフィジカル差は感じませんでした。ただ、フレームの違いは……。UFCミドル級の身長アベレージは185~190センチぐらいで、なおかつパワーが使える選手が多いですよね。対して自分は、どちらかといえばパワー系ではない。もし自分に圧倒的なフィジカルがあれば、それでも大丈夫だったと思います。でもフレームの違いを考えた時に、ウェルター級のほうが良いのかなって考えましたね」

――これは偶然なのか必然なのか、同じタイミングでDWCSに出場した内藤由良選手もミドル級からウェルター級に転向しました。それはUFCだけでなく海外で戦ってみないと分からないことなのかもしれませんが……。

「自分も内藤選手も同じだと思いますけど、海外で自分と同じぐらいの戦績の選手と対戦した時、まず相手と同じレベルの試合はやってきていないわけですよね」

――国内では層が薄くなってしまうウェルター級以上だと、尚更そう言われても仕方ない面はあります。

「日本では選手層が薄すぎる。そんななかで日本のトップが世界のトップクラスであるかといえば、そこはクエスチョンという感じで。だけど国内だけで戦っているうちは、そのことに気づきにくいと思います」

――ベルガウイ戦の試合内容については?

「仮に点数をつけるとすれば、負けた試合なので良い点数はつけられないですね。ただ、相手がストライキングではトップレベルの選手だと考えると、自分の中で『これが通用しそうだな』『これは通用しないな』というものは何となく分かったといいますか。ある意味、自分でも自信がついた試合ではありました」

――個人的には、少なくとも惨敗ではなかったと思います。これは正直なところ、もっと厳しい内容になると予想していました。

「あぁ、なるほど。自分としてもTKO負けではありましたけど、ストライキングの面で思っていたよりも苦労しなかったです。映像を視返すと、まずジャブは当たるけどブロッキングできていた。それと自分はあまりパンチが上手くないけど、蹴りを加えた組み立てが通用するんじゃないか、と感じました。『もっと蹴っていれば展開も変わっていなのかな』と、セコンドとも話をしていて」

――確かに1Rには前蹴りで相手を吹っ飛ばしました。ただ吹っ飛ばされて警戒したのか、ベルガウイが蹴りの距離を外し始めました。

「できれば自分がもっとミドルを入れていきたかったですね。ベルガウイはカーフを蹴って、前蹴りを出させないようにしている。だから自分がカーフをカットして、もっとミドルを蹴り返せていれば展開も違ったんじゃないかな――とは試合を終えて感じました」

――ベルガウイはミドル級でもフレームは大きい選手ですが、そのベルガウイと相対することで『ウェルター級なら蹴ることができる、そして組んで戦うことができる』という実感がありましたか。

「そうですね。自分の組みは首相撲がベースで、レスラーのようなアタックして、テイクダウンして――というわけではないです。ただ、首相撲だとフレームが大きい相手は崩しにくい。首相撲の目的は投げることでも倒すことでもなく、崩して自分の攻撃を与えることが狙いなので。

首相撲で頭を下げてからのほうが蹴りを顔面に当てやすかったり、ヒジを入れてカットする。そういう試合を目指すほうが、自分としてはやりやすいですよね。となれば自分と同じぐらいのフレームのほうがやりやすいと考えて、ウェルター級に転向することにしました」

――ベルガウイ戦後には、SNSでは「年末か年明けに試合をしたい」と投稿していました。DWCS後、どのようなキャリアの展開を考えていたのでしょうか。

「今までは結構キャリアとかを気にしていましたけど、もう気にしない。団体を選んだりすることもない。自分はDWCSで負けて、確実に直接UFCと契約する可能性はゼロに近い選手になってしまったわけですよね。もう一度DWCSに出る、RTUでウェルター級があったら出るとか――そういうUFCとの契約に直結する大会に出ることも目標に、できるところから試合をしたいと思いました」

――それは国内外を問わず。

「はい。それこそ今回のような相手と試合できるのが一番良いと思っていました。自分としては負けたばかりだし、どんな相手でも戦う気持ちはいたんです。だから日本国内で、こんなに良い相手を呼んでもらえるとは思っていなくて。言い方が正しいかどうか分からないけど、『よくこんな選手を呼べたな』と――選手としては嬉しいし、ありがたいかぎりです」

カンポスにとっても自分はオイシイ相手。結果で見せるしかない

――対戦相手のカンポスは5戦無敗。ローカル・プロモーションとはいえマッチメイカーMMAとFFCの2冠王で、ファイトスタイルを考えても『これこそUFCが契約したいファイターだろう』という印象を受けます。

「そうですよね。最初に送られてきたプロフィールには『柔術やグレコのチャンピオン』と書かれていたので、グラップラーなのかと思ったら完全にストライカーでした(笑)。前に出て、テイクダウンをガンガン切って、殴って倒す。セオリーを理解した巧い、サウスポーのボクサーだと思います。右のダブルやフックボディとか、サウスポーかつ自分の体型に合ったコンビネーションを出してくる選手です」

――そのカンポスと相性は良いと思いますか。

「自分はムエタイでいうと、どちらかといえばフィームー系だと思うんですよ。相手はナックモエで。前に出てきて削って削ってフィニッシュする。ムエタイでフィームー×ナックモエだと、フィームーが負けるんですよね」

――いや、それだと……。

「アハハハ。最初はそういう心配もありましたけど、試合に向けて練習していくなかで対策はできてきました」

――なるほど(笑)。DWCSからここまでの期間に、何か変化や進化した点はありますか。

「大きく2つあります。ひとつは、グラップリング能力は上がってきているとは感じています。いわゆるグラップラーと言われる人たちに極めることもできていて。

もう一つはコーチが就くようになりました。DWCSの時にもセコンドに就いてくれていたコクエイ・マックスさんがコーチをしてくれることで――今まで自分が独学で取り入れていたことを、自分が思っているよりも、いろんな角度から技術を提供してくれるし、いろんな戦術を提供してくれる。そのあたりは変わってきたと思います」

――以前のインタビューでは「コクエイさんっていう凄い技マニアの方がいるんですよ」と聞いていました。それが今や、コクエイ教室ができているようですね。

「はい。今はチームで活動していて、それこそアーセンさんも参加しています。コクエイさんはMMAも端から端まで見ている人なので、『このMMAファイターがなぜこういう動きをしているか』というのを全てロジックで説明してくれるんです。だから僕自身もMMAに対する見方が変わりました。

特に一見やられているように見える選手について、『なぜこういう動きをしているか分かる? ここでこうするから、次の攻撃が当たるんだよ』とか。そういう指導を受けてMMAの幅も広がりましたし、スパーでも自分が思い描く動きができているようには感じます」

――DWCS再挑戦は、どれくらいのスケジュールで考えていますか。

「今年もう一度DWCSに出させてもらうのがベストだとは思います。なぜカンポスが自分と対戦するのかなって考えた時、まず彼は現在5戦5勝で――DWCSに出るためには6戦のキャリアが必要だと考えると、DWCSに出た僕は相手にとってもオイシイ相手ですよね。

僕もここで勝って、次もう1試合するとしても、今年またDWCSに出られるのがベストです。半年間でスタイルチェンジをしているところも見せつつ、DWCSに行きたいと考えています」

――そう考えると、日本でDWCS出場を目指すための国際戦が組まれるのは画期的です。

「なかなかないことですよね。その試合が修斗で組まれる、というのが嬉しいです。僕はずっと修斗で試合したかったので。ありがたいですね。

前回負けた自分が、これだけ強い相手と対戦する。なかなか厳しいんじゃないかと感じる方も多いとは思います。でも自分は結果で見せるしかないので、皆さんぜひ試合を見てください」

■視聴方法(予定)
5月18日(日)
Shooto2025#04 午後17時30分~
Shooto2025#03 午後12時30分~

■Shooto2025#04決定カード

<フェザー級/5分3R>
青井太一(日本)
石原夜叉坊(日本)

<フライ級/5分3R>
シモンスズキ(日本)
フィルダウス・フェイジエフ(ウズベキスタン)

<バンタム級/5分3R>
堀内佑馬(日本)
ライダーHIRO(日本)

<女子スーパーアトム級インフィニティリーグ/5分2R>
村上 彩(日本)
erika(日本)

<67キロ契約/5分2R>
ヨシ・イノウエ(日本)
井上翔太(日本)

<フライ級/5分2R>
梅木勇徳(日本)
大竹 塁(日本)

■Shooto2025#03対戦カード

<ウェルター級/5分3R>
岩﨑大河(日本)
アレクシス・カンポス(ベネズエラ)

<フライ級/5分3R>
中池武寛(日本)
岡田嵐士(日本)

<ストロー級インフィニティリーグ/5分2R>
黒部和沙(日本)
友利琉偉(日本)

<ストロー級インフィニティリーグ/5分2R>
旭那 拳(日本)
田口恵大(日本)

<ストロー級/5分2R>
牧ヶ谷 篤(日本)
友利幸汰(日本)

<2025年度バンタム級新人王決定T一回戦/5分2R>
瀬戸口怜久(日本)
塚本竜馬(日本)

<フライ級/5分2R>
恐山陸奥太郎(日本)
輝龍(日本)

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