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【PFL WT2025#02】2年目のPFLはトーナメント1回戦でビショップと激突、渡辺華奈「私の中ではこれが王道」

11日(金・現地時間)にフロリダ州オークランドのユニバーサル・スタジオで開催されるPFL World Tournament 2025#02。女子フライ級トーナメント1回戦で渡辺華奈がジェナ・ビショップと対戦する。
Text Shojiro Kameike

PFLのベラトール買収に伴い、昨年はPFLの女子フライ級リーグ戦に出場した渡辺。その2戦目でリズ・カモーシェと死闘を展開したものの、敗れたために決勝トーナメント戦に進むことはできなかった。

カモーシェ戦から約10カ月を経て、渡辺は今年もPFLに挑む。とはいえ今回からPFLのフォーマットが変わり、予選リーグ戦はなく8人制のトーナメント戦に。渡辺は「トーナメントのほうが向いている」と語る。

今回のインタビューは4月1日に行われた。その後、3日(木・現地時間)に開催されたフェザー級とウェルター級のトーナメント1回戦では、これまでのPFLで見られたようなクイックシックスやファブファイブ的な試合が展開されている。そんなPFLのトーナメントを渡辺はいかに勝ち抜くのか――非常に興味深い女子フライ級1回戦だ。


トーナメントは勝ったら進むし、負けたら終わり。そのほうが分かりやすい

――約10カ月ぶりの試合を控えている渡辺選手です。PFLの形式としてはオフシーズンになりますが、本戦に出ることができなかったファイターとしては大きなブランクになってしまう。この期間はどのように過ごしていたのでしょうか。

「そうですね……。6月に勝っていたらマックスで11月までは試合があったわけですよね。その試合がなかったために、途中で負けてしまうことの重さは感じていました。ただ、自分も試合がない時期についてはプラスに捉えていたので」

――というと?

「やはり試合が詰まっていると、試合に向けての練習だけになってしまって。自分の手持ちの武器を増やす時間が減ってしまいます。こういう時期に伸ばすべきところを伸ばせるように――だから、この時期は苦ではなかったです」

――渡辺選手にとってはベラトール最後の試合からPFL初戦までの期間も1年ありました。しかし、あの時はPFLがベラトールを買収したことで渡辺選手の契約もどうなるのか……と、今回とは違うケースではありました。

「あぁ、そういえばベラトールもなくなっちゃいましたね……」

――昨年からPFLに出場し始めて以降も、ベラトールで戦いたいという気持ちはあったのですか。

「はい。ベラトールのベルトが欲しかったし、そのためにベラトールに出たいという気持ちはありました。だけど途中から『Road to Dubai』とかになっちゃって――『このままベラトールはなくなっちゃうんだろうなぁ』と薄々は感じていましたよね。PFLに買収された時もそうですけど、ベラトールの今後については選手側に何の発表もないので。私もXの投稿で、ベラトールが完全に消滅することは知りました」

――先ほどお話したベラトールがどうなるか分からなかった10カ月間と、PFLに移行してからの10カ月間は気持ちも違いましたか。

「PFLでも『来年も出られるかどうか』という不安もありましたね。予選リーグで敗退していますからね。それが去年の秋から年末ぐらいには『来年も出られるだろう』という連絡が来て、そこに照準を絞って練習していました」

――もし今年のPFLに出場できなかった場合は、どうしようと考えていましたか。

「そうなれば、どこか他の海外の大会に出ることを考えていたとは思いますけど……自分の場合は、そんなに先のことを考えないというか。決定したことに対して、その時その時で考えていくタイプなんですよ。だから、あまり先のことを考えずに、自分の格闘技の技術を上げていくことだけにフォーカスしていましたね」

――PFLから「来年も出られるだろう」という連絡があった際、他の出場メンバーも知らされるのでしょうか。

「いえ、トーナメント表が出るまでは全然分からなかったです。いろんなファイターのSNSを見ていて、『この選手が出るんだろうな』と思っていた程度でした。トーナメント表が出る前にメンバーだけ正式発表するというのはなくて」

――なるほど。そのPFLも今年は予選リーグがなく、8人制のトーナメントとなりました。

「はい。決勝まで進んだ場合の試合数は去年より少ないけど、1回負けたら終わりです。でも自分はずっと柔道でトーナメント戦に出ていたので、トーナメントのほうが向いているかなと思っています。やっぱりPFLのリーグ戦はポイントが――」

――クイックシックスやファブファイブなど、勝敗だけでなくポイントにも注意しながら戦わなければならなかったですね。

「リーグ戦も2試合しかないから同率何位の選手が多くなるし、ポイントが同じだったらフィニッシュの数が優先されるとか、ややこしくて(苦笑)。トーナメントは勝ったら進むし、負けたら終わり。そのほうが分かりやすいです」

――サッカーのように数日間で開催されるリーグ戦であればポイントの計算も楽ですが、直前の試合でポイントが動くと次に出る選手も大変でしょうね。

「そうなんですよ。『前の選手が何ラウンドでフィニッシュしているから、私はこうしないと』って考えながら、すぐ試合に出たりとか(苦笑)。私はPFLのリーグ戦には不向きなファイトスタイルだと考えていました。だから『勝ったら進む。負けたら終わり』というトーナメントのほうが向いていると思っています」

――確かにワンマッチとリーグ戦、さらにリーグ戦とトーナメント戦では、多くのファイターがファイトスタイルを変えてきていました。

「みんな変えてきましたよね。トーナメント戦になる分、みんな手堅く勝ちに来る。昨年のリーグ戦よりも面白くない試合が増える可能性もあります。そうなると女子フライ級でいえば、タイラ・サントスは強いと思います」

『人知れずキツいことやっているなぁ』と思います

――トーナメント全体の印象はいかがですか。

「出場選手、全員が強いです。UFCと比べても遜色ないぐらいのレベルで」

――昨年の女子フライ級は「ダコタ・ディチェバを優勝させたいのだろうか」と疑いたくなる雰囲気もありました。しかし今年のトーナメントは、そんな空気が全く感じられない。

「アハハハ、そうでしたね。ディチェバについては正直、あんなに強いとは思っていなくて。ただプロテクトされている選手ではなく――本人としてもそう思われるのは嫌でしょうから、すごく努力したんだと思います。まだまだ底を見せていないし、世界でもトップクラスの選手でしょうね。

ただ、今年は今年で、サントス×ジュリアナ・ヴェラスケス、私とビショップが戦う山のほうがキツいかなとは思いますけど(苦笑)。もう一つの山は、順当にいけばカモーシェ一強で。だけど皆が強いから、どの山に入っても同じではあります」

――トーナメント1回戦で対戦するビショップも、ディチェバ戦で見せ場をつくりました。そう考えると、渡辺選手にとって厳しい今年の初戦となります。

「キツいっす(苦笑)」

――しかもビショップは元柔術世界王者で「リーグ戦よりもトーナメント戦のほうが得意なのでは」とも思います。

「私もグラウンドが好きで、強みも似ているが似ていますよね。自分もしっかり打撃とレスリングを使っていきたいけど、組んでみないと分からないところはあります。柔術の世界チャンピオンですし、かなり強いと想定して練習しています」

――そのビショップの組みについては?

「トップが強いと思うので、まずテイクダウンされないこと。下からもラバーガードやハイガードで仕掛けて来るので、そこも警戒していますね」

――ビショップはリーグ戦とトーナメント戦で、戦略を変えてくると思いますか。

「大きくは変わらないんじゃないですか。去年のリーグ戦やトーナメント戦、ベラトールのワンマッチを視ても、そこまでファイトスタイルを変えているわけではないので。

去年のリーグ戦はそこまで寝技が強い相手じゃなかったので、あまり参考にはならないです。でもベラトールではイララ・ジョアニを1Rに極めていますし、手堅く勝つというより、取れる時は取るという選手だと思います。でもPFLではサントス戦ディチェバ戦で、打撃で下がらされていましたよね。逆に自分が手堅く勝ちに行こうとすると、極めに来るのかなぁとも考えたり」

――ともにベラトールで試合をしていた2023年当時、ビショップとの対戦を意識したことはありましたか。

「意識していたし、警戒もしていましたね。ビショップがジョアニと対戦する時、私もジョアニと対戦したことがあったので、ビショップの実力が測れるなと思いました。結果はジョアニを極めていて。ポジショニングと極めが強いという印象は受けました。

ベラトールの時はまだそれほど試合もしていなかったし、ランキングに入っているか入っていないか――だったと思います。でも去年PFLのリーグ戦に入ってきたということは、それだけ評価されているんでしょうね。私も『やっぱり入ってきた』と思いましたし」

――そのビショップも含めて、厳しいメンバーが揃ったトーナメントです。

「本当そうですよ(笑)。私も『人知れずキツいことやっているなぁ』と思います」

――人知れず?

「自分の階級も、日本では一般的に知られている選手は少ないでしょうし。UFCとかを視ている人であればサントスを知っていたりとか、そんな感じだと思います。だから私も『王道じゃないところを行っているなぁ』って」

――自身が王道ではないところを進んでいることに対して、渡辺選手はポジティブに考えているのか。あるいはネガティブに考えているのでしょうか。

「ポジティブに捉えています。私の中では、これが王道だと思っているので。世界のトップを目指すことが自分の中では王道ですから。

大会日程も1回戦が4月で、準決勝が6月、決勝が8月ですからね。精神的にもタフになりますよ(笑)。8月21日が決勝の日程に含まれていて、私の誕生日が8月21日なんです。だから誕生日に決勝で――カモーシェと戦いたいです」

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