【Grachan×Brave Fight35】4連敗から4連勝。ロクク・ダリと戦う芳賀ビラル海「慎重に、抜かりなく」
【写真】苦しい時期を乗り越えることができたのも、冷静で客観的な自己分析があってこそ(C)SHOJIRO KAMEIKE
3月2日(日)、東京都江東区のTFTホール500で開催されるGrachan×Brave Fight35のメインで、芳賀ビラル海がロクク・ダリと対戦する。
Text by Shojiro Kameike
4連敗からの4連勝――遂にビラルのMMAが開花している。日本拳法をベースとして2022年にEXFIGHTでプロデビューしたビラルだが、プロでは苦杯を舐め続けた。しかし2023年8月よりグラチャンに戦いの場を移して以降は連勝し、ベルトに手が掛かる位置まで辿り着いた。昨年後半は負傷により試合に出場できなかったが、今回は同ライト級1位のダリと、2位のビラルによる挑戦者決定戦の意味合いも持つ試合に。そんなビラルが2023年からの変化と成長を語る。
――プロデビュー以降4連敗、そして現在は4連勝中のビラル選手です。キャリアを重ねていくなかで、連敗から連勝に切り替わるタイミングで何か大きな変化があったのでしょうか。
「一つ何か大きく変わったということではないんです。これまで負けた試合でも『試合の中で自分はどういう心境で、どういう戦い方をして――』というデータと経験を蓄積してきました。減量に関しても同様です。そうしたデータを更新していくことで、勝つことができるようになったのだと思います。今はまた勝利のデータをアップグレードしているところですね」
――なるほど。ビラル選手の試合で「何かが変わってきた」と感じたのは、昨年5月の藤村健吾戦です。同年3月の岸本篤史戦はハードファイトでしたが、藤村戦は「これをやれば自分は勝てる」という戦い方が固まったように見えました。
「両方の試合とも、個人的には計画どおりに進められたと思っています。ただ、藤村戦の時は完全に僕の好きな形になりました。プランAではなかったけど良い形にハマッてくれたので、『逃がさない。どこで極めようかな』と余裕がありました」
――4連敗の時期は、自分の中で何かを探していた時期なのか。あるいは何をすれば良いのか分からない時期だったのでしょうか。
「僕はアマチュア時代に負けたことがなく、プロの世界でも同じように行ければいいと思っていたんです。でもデビュー戦で全然ハマらず……それがすごく衝撃でした。そのために4戦目までは結構考えすぎていたところがあって。
まずプロデビューしてから、練習と試合で差が大きいと感じていました。『練習ではもっと寝技ができるし、打撃も見えている。なのに、なぜ試合では結果が出せないんだろう?』と考えていて。今は『試合でこういう状況になると、自分はこういった心境になる』と客観的に分かってきているので、対処ができている。一つのことではなく、そうした積み重ねがあります。一言でいえば、メンタルの部分が変わったのかなとは思います」
――どちらかといえば神経質なタイプですか。何かが気になって仕方なくなるとか。
「アハハハ、そうですね。それこそケージインした時に足が滑ると思ったら、次の試合は1週間前から足の角質を削ったりとか(苦笑)。見た目からは神経質だとは思われないかもしれないですけど、意外と気にしぃな部分はあります」
――たとえばカレー屋に行って出て来たお皿の隅に、カレーのルゥが少しだけ付いているのが気になったりしますか。
「それはないですね」
――あっ、失礼しました……。
「いや、それが逆なんですよ(笑)。他の人から出されたものについては、何も気にならないです。でも自分が友人とかに料理をふるまう時に、そういうのが付いていたら『やべぇ、どうしよう』と気になるかもしれなくて」
――それはMMAでいえば、アマとプロの大きな差かもしれません。プロの舞台は観客や応援団がいて、自分の試合に多くの人が関係している。その人たちの前で、自分がどんな試合を見せないといけないかを考えすぎてしまうとか。
「はい、それは大きいです。プロになってスポンサーさんや、お世話になっている方たちがいて。その人たちのために――と考えすぎていた部分はありますね。
でも試合を経験するごとに、少しずつ意識は変わってきました。あくまでも自分がやりたいMMAをやる。その『自分がやりたいMMA』に同調してくれるのであれば応援してください、という意識になってきています」
――「自分がやりたいMMA」とは?
「具体的に『どういう戦いがしたい』『どういう見せ方をしたい』ということではないんですけど……。僕がMMAを戦っていて楽しいのは『この相手に勝つには、どういうプランを立てたらいいか』と考え、一つの答えを発見することです。たとえば藤村戦は上からネルソンで圧力を掛け続けていたじゃないですか」
――はい。MMAのグラウンドでは珍しいパターンだったと思います。
「それも技術的に『ネルソンでいえば角度を変えるだけで力を使わなくても極まる。こっちの方向だと、こんなに力を使っても極まらない』という発見があり、一つひとつの技が正確なものになっていく。すると自分のレベルがどんどん上がっていく。その感覚がすごく楽しくて。
練習としての経験値は上がってきました。次は試合の経験値もどんどん上がっていけばMMAファイターとして、トータルのレベルが上がっていく。それが今は楽しみです」
――現在、練習場所は所属しているマスタージャパンのみですか。
「基本はマスタージャパンと、週5で中村K太郎さんのユナイテッドジム東京に勤務しているので、そちらで練習会に参加させてもらうこともあります。あと今は行けていないのですが、横須賀のDOBUITAさんで雑賀ヤン坊達也さんと練習させてもらっていました」
――横須賀に!? 都内から行くとなると、少し遠いですよね。
「その時は草訳駿介選手との試合が決まっていて、高身長の雑賀選手と練習したかったんです。長身の選手がどういう組みや打撃をされたら嫌なのか。それを知るために、しばらく雑賀選手がいるDOBUITAに通わせていただきました」
――草訳選手とは昨年9月に対戦が決定していましたが、ビラル選手の負傷で中止となりました。昨年12月のヘリオスで小谷直之選手をKOした草訳選手が対戦をアピールしてきた時は……。
「実は草訳選手からアピールされる前に、ダリ君から『俺がチャンピオンになるから3月は空けておいてよ』と言われていたんですよ。その言葉で完全にスイッチが入って、あまり草訳選手のことは考えていなかったです(苦笑)」
――そのダリ選手はベルトを巻くことができませんでした。
「それでも次の相手はダリ君だとしか考えていなかったです。失礼だったら申し訳ないけど草訳選手は前回、植田豊選手に負けているじゃないですか。小谷選手との試合も良い内容でしたけど、まだ僕の中で熱が戻ってきてはいません。ただ、経験を積んでくれば怖い選手になると思うので。いずれ――」
――草訳選手は今回、岸本選手と対戦します。試合の予想はいかがですか。
「う~ん、どうでしょうね? 草訳選手が勝つような気はしていますけど」
――ダリ選手とビラル選手の試合はライト級ランキング1位と2位の激突です。これがベルトへの挑戦者決定戦となるかもしれません。
「そうですね。僕としてはなるべく間を空けずに、早くチャンピオンと試合をさせてもらいたいです。そのためにも今回、しっかり勝ちたいですね。そんなに気持ちが大きいほうではないので、次のダリ戦を落とさないよう慎重に頑張ります」
――ダリ戦はどのような試合になるでしょうか。
「ファイターとしては『打撃に寄っているな』という印象で、どういう時に大振りになるかもチェックしていますよ。いずれにせよ抜かりなく戦いたいです。
ダリ君とはお互いにアフリカをルーツとしていて――僕がガーナと日本のハーフで、ダリ君はコンゴですよね。実は日頃から交流もあったりします。グラチャンのライト級で戦っていくうえでは、いつか試合すると思っていました。同じアフリカをルーツに持つ先輩を打倒して、自分の価値を向上させたいです。よろしくお願いします!」
■Grachan×Brave Fight35 視聴方法(予定)
3月2日(日)
午前13時15分~GRACHAN放送局、GRACHAN公式YouTubeメンバーシップ
■Grachan×Brave Fight35 対戦カード
<ライト級/5分2R+ExR>
ロクク・ダリ(コンゴ)
芳賀ビラル海(日本)
<ライト級/5分2R+ExR>
草訳駿介(日本)
岸本篤史(日本)
<ライト級/5分2R+ExR>
藤村健悟(日本)
高橋正寿(日本)
<バンタム級/5分2R+ExR>
萩原一貴(日本)
石坂空志(日本)
<60キロ契約/5分2R+ExR>
金森琢也(日本)
松本将希(日本)
<フライ級/5分2R+ExR>
後藤浩希(日本)
テム(モンゴル)
<ライト級/5分2R+ExR>
アリアン・ナカハラ(カナダ)
望月貴史(日本)
<フライ級/5分2R+ExR>
長野将大(日本)
水谷健人(日本)
<59キロ契約/5分2R+ExR>
高橋風我(日本)
武田勇輝(日本)