この星の格闘技を追いかける

【NEXUS38】久留米からワードッグ王者、そして宮澤雄大と対戦。荒木凌「空手道場でコマンドサンボを」

【写真】実は厳しい2連戦が待っている荒木(C)SHOJIRO KAMEIKE

3月2日(日)東京都新宿区のGENスポーツパレスで開催されるFighting NEXUS 38にて、荒木凌が宮澤雄大と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

昨年ワードッグのフライ級王者決定トーナメントを制してベルトを巻いた荒木は、続いて10月はグラジエイターでKO勝ちを収めて現在3連勝中だ。2025年初戦はネクサスに参戦し、同ストロー級王者の宮澤雄大と対戦することに。当日は荻窪祐輔×北野一声のフライ級タイトルマッチが行われるなか、ここで元王者を下して新たなベルト挑戦のチャンスを掴むか。


――ネクサス初参戦を控える荒木選手は、MMAPLANETも今回が初インタビューとなります。福岡県久留米市出身とのことですが、現在も久留米在住なのですか。

「はい、今も久留米に住んでいます」

――所属するロータス福岡古賀道場は柳川市にありますが、自宅から道場まではどのくらい掛かるのでしょうか。

「道場は、車で1時間かけて行っていますね」

――格闘技を始めたのも、地元の久留米市だったのですか。

「はい。最初は小学校5年から中学3年までフルコンタクト空手をやっていました。久留米市は空手道場が、まあまあ多くて。もともと父親がメチャクチャ格闘技好きで、僕も小学校に上がる頃にはPRIDEとか一緒に視ていましたね。小学校の卒業文集には将来の夢として『PRIDE王者になる。ヴァンダレイ・シウバになりたい』と書いていました(笑)」

――そのPRIDEが活動を休止した時は……。

「卒業文集には書いたものの、実際にMMAをやっていたわけではないので『あぁ、無くなったかぁ』というぐらいの気持ちでしたね」

――将来MMAを戦うことを想定して空手道場に通っていたわけではないのでしょうか。

「いや、これは珍しいと思うんですけど――その空手道場で寝技もやっていたんですよ。基本的な腕十字や三角絞めとか、あとコマンドサンボも」

――コマンドサンボも!?

「久留米市にある勇真会という空手道場で、2023年に亡くなった萩原幸之助さんが年2~3回、道場に来てコマンドサンボを教えてくれていました。自分も勇真会に通っていた頃は、技だけは教わっていましたね。技に入るためのポジショニングとかは全然でしたけど」

――そこから本格的にMMAを始めたのは、いつ頃なのですか。

「18歳の時、地下格闘技に出始めたんです。まだ地下格闘技では人間で囲んだリングが流行っていた頃ですね」

――そのような流行があったのですか……。

「九州では結構、その形が流行っていました。僕は友達に誘われて、クラブで行われていた地下格闘技に急きょ出場することになって。そこから最初の1年ぐらいはキックボクシングの試合に出ていたけど、『グローブが大きすぎて面白くない』と思ってMMAに。だけどマトモにMMAを練習し始めたのは、ここ2~3年の話です」

――地下格闘技の戦績は?

「キックも合わせると100戦は超えていると思います。18歳から24、25歳ぐらいまで(※荒木は1993年生まれ)出ていて、当時は1日2回――昼に試合して夜にも試合に出たこともありました。地下の時は滅多に負けることはなかったけど、2回負けた選手がいて。それが本田良介君です」

――貴重な九州MMAの歴史ですね。それだけ当時の九州では地下格闘技しか試合をする機会がない、あるいは機会が少なかったということですか。

「そうなんですよ。だから福岡、宮崎、鹿児島とか、いろんなところの地下格闘技に出ていましたね」

――荒木選手が出場していた地下格闘技の大会は、今も続いているのですか。

「いや、もう無いですね。僕が地下格闘技を抜けたあたりから、なくなっていきました。いろいろあって(苦笑)。あの頃出ていた選手の中には格闘技を辞めた人もいるし、プロに上がった人は――福岡県内でいえば、2~3割ぐらいじゃないですか。僕も最初は地下格闘技に出ながらプロ大会に出ていましたね。戦績サイトにも載っていない、2勝1敗の戦績があります」

――その当時、荒木選手はどのような環境で練習していたのでしょうか。

「当時は1週間で体が仕上がると思っていて。試合が決まると、試合の1週間前からランニングとミット、あとは近くの柔道場を借りてスパーリングだけやって試合に臨んでいました。今考えると、頭おかしいですね(苦笑)。

それだけ練習する場所もなかった時に『東京から古賀靖隆さんという方が福岡に帰ってきて道場を開くらしい』という話を聞きました。最初はいくつか施設を借りて運営していたなかで『今度、常設道場を出すから』と聞いて、自分も入会したんです」

――なるほど。荒木選手といえば試合では柔術的な面があり、一方で打撃戦を見せる時もある。それだけ器用なところがありつつも、何が最も得意なのか分からない面があったのは正直な感想です。

「あぁ、そうですよね(笑)。もともとはテイクダウンしてから、スタミナが続いていれば極め切るという勝ち方でした。まずはスタミナ面が――ただ、スタミナがあってもパンチは大振りで。空手をやっていたから蹴りは、ある程度できたんです。だからパンチが一番苦手で。

一昨年の末ぐらいからボクシングジムにも通うようになって、苦手なところを克服してからは立っても寝ても、どちらでもいい。それとポジションを取った時も、無理に力を使わんようになりました」

――荒木選手は昨年4月、ワードッグのフライ級王者決定トーナメントを制してベルトを巻きました。この時は同年2月に開催されたRIZIN佐賀大会のオファーを断り、1月から始まるワードッグのトーナメントを選んだと聞いています。

「RIZINのオファーはオープニングマッチだったんですよ。オープニングファイトだと、勝ってもすぐ次の試合が組まれるかどうかは分からない。ワードッグのほうはベルトも懸かっていたし、しゅんすけにもリベンジしたい。先を見越してワードッグを選びました。

あの時はトーナメント準決勝で負けたら、格闘技を辞めるつもりだったんですよ。負けが込んでいて……特に2023年は1回も勝てていなかったので」

――1回も勝てなかった2023年、韓国BIFCでのKO負けは大きかったですか。

「あの試合で初めてカーフを効かされました。パウンドアウトされる前にシングルレッグで組んだ時も、足が効いていて打撃では勝負できんけん、組んだ感じやったんです。自分が下になったら、相手は体格も大きく、見えないところからパウンドが飛んできて……。いつか韓国へのリベンジはやりたいと思っています」

――先ほどスタミナに関するお話がありましたが、続くワードッグのトーナメントでは決勝で、しゅんすけ選手と5Rフルに戦いました。

「あの時は、しゅんすけの反則が2回あったじゃないですか。ぶっちゃけ、あの休憩でだいぶ戻せました。しゅんすけの反則がなかったら、スタミナがもっとったかどうか――ただ、3Rが終わったあたりから『もうやり切ってやる』と思って。しゅんすけも思っていたより疲労が見えていて」

――結果、ワードッグのフライ級王者となりました。

「4月27日のワードッグで防衛戦をやります。ネクサスの1カ月半後ですね」

――えぇっ!?

「だから今、気持ちは重いです。ネクサスで強敵と対戦したあと、ワードッグで5R戦が待っとるという(苦笑)。

去年はグラジも含めて3連勝でした。これから同じところで同じぐらいのレベルの選手と戦い、勝って調子に乗るのか。それとも、より強い相手と戦う修羅の道を行くのか――どうせなら東京で強いヤツと戦いたい。今回、その希望が実現しました。まさか初戦で、こんなに強い相手が来るとは思わなかったですけどね。これってネクサスが僕を潰しに来ているんじゃないですか(笑)」

――アハハハ。

「宮澤選手って、試合を視ても面白さはない。怖さもない。ただ、強さは感じる。きっとバケモンみたいなフィジカルを持っているんでしょうね。とにかく自分がやることを決めている。相手に合わせて――というタイプでもなく、打ってテイクダウンして殴る。対戦相手としては一番しんどいタイプですよ」

――自分がやることを決めている。だからこそ精度も高まっているように感じられる宮澤選手です。その宮澤選手と、どのように戦いますか。

「僕も今さらやることを変えることもないです。自分はスタンドで打ち合いたい。相手は寝かせたい。そこで俺は俺のやりたいことをやります」

■NEXUS38 視聴方法(予定)
3月2日(日)
午前11時00分~Fighting NEXUS公式YouTubeチャンネル

■NEXUS38 対戦カード
<フェザー級/5分2R+ExR>
梅津ガブリエル(日本)
椿馨(日本)

<フライ級/5分2R+ExR>
赤石健吾(日本)
尾川太陽(日本)

<ストロー級/5分2R+ExR>
荒田敬未(日本)
世界の山ちゃん(日本)

<バンタム級/5分2R+ExR>
平澤空翔(日本)
星川陸(日本)

<フェザー級/5分2R+ExR>
KEISUKE(日本)
梶原敬弘(日本)

<フェザー級/5分2R+ExR>
嵐士(日本)
聖(日本)

<フライ級/5分2R+ExR>
川端祐樹(日本)
大輝(日本)

<ライト級/5分2R+ExR>
小沼魁成(日本)
賢民(日本)

<NEXUSフライ級選手権試合/5分3R>
[王者] 荻窪祐輔(日本)
[挑戦者] 北野一声(日本)

<フライ級/5分2R+ExR>
宮澤雄大(日本)
荒木凌(日本)

<バンタム級/5分2R+ExR>
佐藤陽向(日本)
野村颯(日本)

<フェザー級/5分2R+ExR>
アポロ中山(日本)
秋山怜冬(日本)

<フライ級/5分2R+ExR>
藤原俊樹(日本)
冨山シン(日本)

<フライ級/5分2R+ExR>
竹内悠(日本)
MASAMUNE(日本)

<バンタム級/5分2R+ExR>
アオキング一輝(日本)
奥村健太郎(日本)

<フェザー級/5分2R+ExR>
大谷啓元(日本)
堀江耐志(日本)

PR
PR

関連記事

Movie