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【NEXUS38】今度はタイトル戦=荻窪祐輔戦。北野一声「負けなしの時よりも試合に対する緊張感が変わった」

【写真】ABEMA海外修行プロジェクト仲間の田上こゆるが、修斗ストロー級の頂点に立った。一声はどうなる? (C)TAKUMI NAKAMURA

3月2日(日)東京都新宿区のGENスポーツパレスで開催されるFighting NEXUS 38にて北野一声がフライ級王者・荻窪祐輔の持つタイトルに挑戦する。
Text by Takumi Nakamura

北野と荻窪は昨年11月の後楽園大会で対戦。タイトルがかかっていないワンマッチとして行われた一戦は判定で北野に軍配が上がり、ダイレクトリマッチでの選手権試合が決まった。

昨年3月には豪州のBeatdown Promotionで現UFCファイターのスチュアート・ニコルとも拳を交えた北野。この試合ではニコルに初回KO負けを喫しているが、この敗戦で北野が得たものは大きかった。ストロー級からフライ級への転向を決意し、最初のビッグチャンス=NEXUSの王座戦に挑む心境を訊いた。


――昨年11月の後楽園大会で王者の荻窪選手にノンタイトル戦で判定勝利。今回はタイトルをかけてのリマッチが決まりました。今回のオファーを受けた時の心境を聞かせてもらえますか。

「前回の試合後のマイクで(タイトル挑戦を)アピールさせてもらったんですけど、そんなすぐにやれるとは思っていなかったので、運営の方々と荻窪選手には感謝しかないです」

――勝って挑戦をアピールするというのは事前に考えていたのですか。

「やっぱりチャンピオンに1度でも勝てば挑戦する権利はあるし、それを口に出してもいいのかなと思いました。とはいえ僕もまだ無名ですし、ああいう形(ノンタイトル戦)でチャンピオンとやらせてもらった立場なので、強くは言えないなとも思いつつ控えめにアピールしました」

――なるほど。では前回の荻窪戦について、なんでノンタイトルなんだよという気持ちはなかったですか。

「そうですね。もちろんチャンピオンとやる=タイトルマッチというイメージはありましたけど、そこ関係なしにチャンピオンやらせてもらえるならやりたいという気持ちが強かったです」

――ベルトがかかっている・かかっていないよりも、チャンピオンと戦えるということにモチベーションを感じていたわけですね。

「はい。そっちのモチベーションの方が強かったです。僕も去年3月に豪州で試合(Beatdown Promotionでスチュアート・ニコルにKO負け)をして以来、久々の試合でしたし、その状況でチャンピオンと試合をやらせてもらえることへの感謝が大きかったです」

――前回の荻窪戦は試合の印象を押教えて抱けますか。

「荻窪選手は経験値があって強いと思っていました。実際に試合をやってみて、結構パンチが当たった時に感触があって、僕自身は効いていると感じた場面があったんですけど、映像で見返すと、あまり効いていないような感じで。ああいう効いていない雰囲気の作り方や見せ方が上手いなと思いました」

――北野選手が実際に戦っている感覚と第三者の目線が違う試合だったんですね。

「正面から見ていると僕の打撃が当たって、少し目が飛んで足元がフラついたように見えて、このままいける!と思うんですけど、離れたところで見ている人たちからすると、そこまでは分からないんだなって感じですね。荻窪選手もそう見せるように上手く動いていたんだと思います」

――その中でも北野選手はスクランブルの攻防でも主導権を与えず、自分のペースに持っていけたことが、試合の流れを作った一つの要因だと思うのですが、そこは北野選手も意識していたのですか。

「荻久保選手の組みが強いのは分かっていましたし、豪州でニコル選手に負けたようなやり方で試合をしたくなくて。荻窪選手はニコル選手と似たようなスタイルだと思っていたので、組みの練習はすごくやっていました。実際に荻窪選手は組みが強かったのですが、要所要所で取られたらいけない場所、この部分を取られたら倒されちゃうなとか、ここで競り負けたら危ないなというポイントポイントを考えながらやっていました」

――では試合中に慌てることはなかったですか。

「何度かは危ないと思う場面がありましたけど、慌てると相手のペースに飲み込まれる気がしたので冷静に対処しようと思っていました」

――前回の試合に勝てたことで、得ることができた自信とは?

「やっぱり豪州で負けたニコル選手と似たようなスタイルの選手に勝てたことは自信になりました。あとはニコル戦もそうだったんですけど、どうしてもフライ級でやるにはまだ体重が軽いんですね。だからストロー級の方がいいのかなと思いつつ、もう1回フライ級で挑戦してみようと思って荻窪選手とやらせてもらって。ギリギリですけど勝つことができたので、今後もフライ級でやる方向性で考えています」

――こうしてお話を聞いていてもニコル戦で得たもの・感じたものは大きかったようですね。

「自分の中では特にそう思っていなかったんですけど、変に冷静すぎたところがあって。試合中も練習とかスパーリングみたいな感覚だったんです。普段の試合だったらもう少し離れてやったり、組まれても急いで逃げたり、そういう感覚で試合をやるんですけど、ちょっと相手に合わせてしまったんですよね。あとはやっぱり僕の組みそのものが弱かったです」

――悪い意味で試合に対する緊張感がないまま試合をしていたのですか。

「自分はデビュー戦からずっとそうで、僕の中では練習と同じ感覚で試合をした方が最大限の力を出せるって気持ちだったんですけど、それにしても練習っぽくやりすぎましたね(苦笑)。練習は相手の強いところに付き合ったり、強化したいことをやってみたり、あえて苦手なことをやってみたりするじゃないですか。そんな感覚でちょっと組みをやってもいいかなと思ってしまって」

――本来であれば完全に組みを嫌ってスタンドで行く選択をすべきだった、と。

「なんか要所要所の勝負する場面が相手先行になっていて、テイクダウンにしても寝技にしても、自分からいくというよりも、相手がそれで来るからやるみたいになっていたのが良くなかったです。ただ上を目指すんだったら打撃だけ出来ても限界があるし、今はテイクダウンや組みも強化しています」

――とはいえニコルは北野選手に勝ってUFCに行くわけですし、そういった相手とあのタイミングで戦えたことは大きかったのではないですか。

「あの試合は無敗対決で、そこで負けたことにすごくショックだったんですけど、あの試合のおかげで成長できたと思います。だからニコルさんには感謝の方が強いです。勝つに越したことはないですが、結果が出たことに関してはしょうがないんで、そこはしっかり切り替えました。きっと負けなしの時よりも今の方が試合に対する緊張感も変わったと思います」

――今回はベルトがかかるだけでなく、ラウンドも3R制になります。前回とは違う部分も出てくると思いますが、どのような試合を見せたいですか。

「前回と同じように打撃で攻めたいですし、展開によっては組みもやりたいなと思います。一度組んでみて感覚も分かりますし、自分のなかでいけると思ったら、そこでも取りに行きたいです」

――NEXUSのベルトを獲れば色々なチャンスも増えると思います。今後の展望としてはどんなことを考えていますか。

「まずはフライ級でやるためにちゃんと体重を増やして体を作らないといけないなと思っています。あとはNEXUSのチャンピオンとして試合をしつつ、チャンスがあったら色んな舞台にも出ていきたいです。今の僕が大きいことを言うと生意気なっちゃうんで、あんまり言えないですけど……豪州で負けたので、豪州でのリベンジというか、豪州で試合をして勝ちたいです」

――Fighting NEXUSは現役チャンピオンでも他団体に送り出して、選手がやりたいことを後押ししてくれる団体じゃないですか。そういう意味ではタイトルを獲って、そこから新しい目標を見つけて、そこに向かって突き進んでいくということですね。

「はい。あと自分はもともと小学4年生の時に八景ジムでキックボクシングを始めて、当時は水垣(偉弥)さんも目の前で練習されていて、それで総合格闘技に興味を持ったんです。ただ八景ジムは閉鎖になっちゃって、その時に渡辺(喜彦)会長から八景ジムの看板を譲ってもらったんですよ。どんな形でもいいのでいつか八景ジムを復活させるというのが自分の目標の一つです」

――それでは最後の北野選手のタイトルマッチを楽しみにしている皆さんにメッセージをいただけますか。

「人間生きていたら、会社で嫌なことがあったり、人間関係で悩んだり、なんで自分はこんな状況に置かれているんだろう?と思うことがあると思うんですけど、そういう時に僕の試合を見てもらって、あんな小さいヤツが頑張っているんだから自分も頑張ってみるかと思ってもらえるような試合をしたいです」

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