【Lemino Shooto03 & UFC327】齋藤奨司、シンバートル戦振り返りと「ファン目線で」平良達郎を語る
【写真】大熱戦のポイントはスイッチとケージ際の攻防だった(C)MMAPLANET
2月18日(水)、東京都文京区の後楽園ホールでLemino Shooto03が開催され、サバイバー・トーナメント準々決勝で齋藤奨司がシンバートル・バットエルデネを判定で下した。
Text by Shojiro Kameike
昨年10月に野瀬翔平をわずか80秒で絞め落としたシンバートルに対し、齋藤はテイクダウンを耐えて左ミドル、左三日月蹴りを効かせて3-0の判定勝ち。シンバートルも2Rに一度動きが落ちたものの、終盤には盛り返すという大熱戦となった。ここでは齋藤にシンバートル戦を振り返ってもらうとともに、1週間の沖縄合宿を通じて感じた平良達郎の印象、そしてジョシュア・ヴァン×平良のUFC世界フライ級タイトルマッチについて訊いた。
『あぁ、シンバートルも人間だったんだな』と思いましたね
――約1カ月前の試合となりますが、シンバートル戦の勝利おめでとうございます(※取材は3月24日に行われた)。
「ありがとうございます!」
――3R通じて大熱戦となりましたが、齋藤選手はしっかりと自分の戦いをやり切ったという印象です。
「ひとことで言うと、自信になりましたよね。強い相手だし、試合中もフィジカルの強さは感じました。その相手に対してやるべきことをやり抜いたので」
――それだけタフな相手との一戦は、試合中もめまぐるしく展開が変わっていました。シンバートルにも疲労が見えるなか、齋藤選手も途中で疲れを感じなかったですか。
「たぶんシンバートルのほうが疲れていたと思うんです。1Rがあの展開で、相手の腕が張っていることも試合中に感じていました。でもあの動きを3Rまでできるのは、マジで凄い。ただ『相手のほうが疲れている。自分のほうが有利だ』という感覚はなかったですね。自分自身はセコンドの声と相手の息遣いを聞きながら、無心でやっていました」
――試合のポイントは2Rの左ミドルと左三日月蹴りだったと思います。左ボディブローも含めて、あのボディ攻撃でシンバートルの動きが落ちました。
「左ミドルと三日月蹴りが入った時、明らかに嫌な顔をしていたので、効いていることは分かりました。『あぁ、シンバートルも人間だったんだな』と思いましたね。自分にとっては初めての国際戦で、正直言って肌を合わせるまでは『どんな感じなんだろう?』と不安もあって。
ぶっちゃけ試合前は、相手が何で来るか分からなかったんですよ。もちろんテイクダウンに来るイメージは持っていたけど、試合が始まったらブンブン振り回して、ゴリゴリに打ち合ってくることも想定していました。髙谷(裕之)さんからも試合前に『何をしてくるか分からないから、打ち合う覚悟も持っていろよ』と言われていて。でも試合になると、打撃戦で相手が引いたところもあったのは意外でした」
――シンバートルは強い圧で下がらせてからテイクダウンを狙う。あれだけ圧が強ければ、なかなか打ち合いにならないのかもしれません。しかし齋藤選手は打ち合う覚悟で来た。
「……あぁ、そういうことですね。今そう言われて、その可能性もあるなって思いました」
――これはシンバートルにとっても同じことが言えますが、やはり自国内で技術はもちろん圧、フィジカルが違う強豪外国人選手との削り合いを経験しておいたほうが良いと思っています。たとえば初めて海外で試合をする時が初の国際戦となり、そこで経験したことのない圧を感じることがないように。
「なるほど、そうですよね」
スイッチを繰り返していると、シンバートルも『どちらの足に組みつこうか』と躊躇しているように感じました
――試合内容に話を戻すと、開始早々から齋藤選手のスイッチの多さが目を引きました。
「あれは狙ってやっていました。とにかく足を止めないように。シンバートルは頭を外に出して組んで来る。かつ相手がオーソドックスの時だけでなく、サウスポーでも左足に組みに来るんですよね。だから自分もサウスポーに構えると、左ヒザや左ミドルが当たりやすいだろうと思ったんです。そのためにあえてスイッチを繰り返していると、スイッチした瞬間はシンバートルも『どちらの足に組みつこうか』と躊躇しているように感じました」
――躊躇があったためか、シンバートルもテイクダウンに入るのが一瞬遅れる。おかげで齋藤選手も背中を着かされることなく、ケージに背中を預けてディフェンスできます。背中を着かされて殴られることがなければ、採点でもコントロールとはみなされない、と。
「そうですね。藤井伸樹戦の時もそうですけど、まず背中を着かされないことが大事だと思っています。堀口恭司さんとコードウェルの再戦でも、堀口さんが尻もちを着いている時間が長かったじゃないですか。でも堀口さんが削って、コードウェルがそこからポジションを奪えない。結果は堀口さんの判定勝ちでした。
MMAの判定基準も変化してきている。コーチも今のMMAの判定で重視されているものを選手と共有しながら取り組んでいるので、その点はしっかりと考えながらやっています」
メチャクチャ力を使っているのは感じていたし、さらにテイクダウンできないというのは精神的にも疲れてしまうと思う
――齋藤選手は尻もちを着かされたあと、ケージに背中を預けながら、まずヒザを着いて立ち上がろうとする。シンバートルは立たれないように足首をすくってくるが、齋藤選手は寝かされない。この展開は試合前から想定していたのでしょうか。
「シンバートルは壁の展開が得意なことは分かっていたので、壁の展開をつくりたくなかったです。だけどあれだけ壁の時間が長くなってしまったのは、シンバートルの巧さですよね。もっと壁から離れたかったけど、シンバートルがなかなか――そうはさせてくれませんでした」
――シンバートルもケージ際から離さないように、無限ループに突入していました。立たれては転がし、の連続で。
「実はそれって絶妙な駆け引きだったんです。僕がケツを上げると、足をすくいに来ていたじゃないですか。あそこで僕が立とうとしすぎると、尻もちを着かされてしまう。だからヒザを着いて……そのためにあの展開が長引いてしまったところはありますね。
ただ、おかげでシンバートルも疲れたと思います。前腕がパンパンになるような戦い方だったじゃないですか。メチャクチャ力を使っているのは感じていたし、さらにテイクダウンできないというのは精神的にも疲れてしまうと思うので。その点は大きかったです」
――対する齋藤選手としては、力を使うというよりも集中力の勝負ですか。
「壁際の展開は徹底的に練習しているので、それほど力を使うわけではなかったです。でも受けの展開ではある。そこで集中力が途切れたらテイクダウンを取られてしまうし、自分の疲労感も大きかったと思いますね」
――2Rもシンバートルは同じ戦法で来ました。
「同じ戦法で来るとは思っていました。シンバートルも簡単に寝かせることができると考えていたでしょうし、他にプランがあったとも思えないです。勢いがあってフィニッシュしまくっている選手だから、それを貫き通す――それはシンバートルも勝負に来ているということであって」
――なるほど。2Rから齋藤選手の左ミドルと左三日月が入り始めたのは、シンバートルの動きが落ちたのか、あるいは動きを読むことができたのでしょうか。
「1Rも狙っていましたけど、押し込まれる展開が多かったので出せなかったですね。それと先ほど言ったとおり、試合中は特に何も感じていなかったんですよ。本当に無で――純粋に試合を楽しんでいました。
3Rも相手が疲れているからって自分は変わらず、最終ラウンドだから出し切る。するとシンバートルも盛り返してきて――疲れてはいるけど、押し込んで来る力は死んでいない。むしろ生きていて」
――そういった部分も含めて、試合が楽しかった?
「はい。別に心理戦とかも考えていなかったです。相手が疲れているから勝負だと考えている時に相手が盛り返してきたら、自分のほうが精神的に疲れてしまうじゃないですか。そういう心理戦がなかったからこそ、3R戦い切ることができたんだと思います」
――残り30秒の攻防など、特に楽しかったのではないですか。
「楽しかったですね! 3R通じて楽しかったですけど」
――シンバートルも残り30秒で気持ちが上がったのではないかと思える打ち合いでした。
「試合前から『腹を括ってきているな』という覚悟は感じていました。UFCを目指している選手がモンゴルから日本に来て、絶対に勝つ。その気持ちは試合が終わるまで感じましたね。そういう選手に勝ったことで『自分がやってきたことは間違っていなかったんだな』とは思いました」
――自身の試合以外でサバイバー・トーナメント全体については、どのような印象を持っていますか。
「向こうの山がグラップラー寄りで、こっちの山はシンバートルを除けばストライカー寄りかなって思いました。でも逆サイドのことは何も考えていないです。誰が上がってくるか分からないし、まずは目の前の試合に集中したいですね。中島選手とワイズ、上がってきたほうとの試合に」
1Rが肝ですよね。インファイトが一番強い相手だから、インファイトを捌くことができたら負けないと思います
――今回はもう一つ、UFC世界フライ級王座に挑戦する平良達郎選手についてもお聞きします。昨年10月、沖縄で平良選手の合宿に参加した時に向かい合った印象を教えてください。
「まず骨格が大きいとは感じました。フライ級の体格ではないな、と」
――するとスパーリングでも掛けてくる圧力も違いますか。
「違いますね。背も高いし、手足も長いけど、かといって細いわけではない。体幹の部分もしっかり厚い。だから圧力は感じました」
――ここ1~2年で、平良選手の打撃も大きく変化してきたかと思います。
「ノーモーションで見えづらいですよ。ジャブもそうですし、ストレート系のパンチは特に伸びてきますね。すごくボクシングの練習にも取り組んでいるみたいですし、ボクシング単体のスキルにしても巧かったし強かったです。……メチャクチャ難しいですね(苦笑)」
――難しい、というと?
「ボクシングだけじゃなく、全部強いですよ。気持ちも、技術も。でも僕は世界最高峰で戦っている平良選手について評価する立場にないと思っています。沖縄には1週間しかいなかったし、そこまで多くを語るのはおこがましくて」
――では、いちファンとしてヴァン×平良の一戦の予想をお願いします。
「それはもう――平良選手がベルトを巻きます!
あくまでファン目線ですけど(笑)、やっぱり1Rが肝じゃないですか。長引けば長引くほど平良選手が有利になると思うので、最初にヴァンがどう出て来るか。そこでヴァンが得意のインファイトでガチャガチャ出て来ると、怖いところではありますよね。平良選手も初めて戦う相手だから、距離感も試合をして初めて分かるものですし。
ただ、そこで平良選手がテイクダウンを奪えば、そのままかなり有利に試合を進めることができる。だから1Rが肝ですよね。インファイトが一番強い相手だから、インファイトを捌くことができたら負けないと思います」




























