【Breakthrough Combat02】森戸新士に挑戦、北岡悟「勝ちたいですよね。たくさん負けてきたからこそ」
【写真】プロ、そして──いつまでもノンフィクションの人(C)TAKUMI NAKAMURA
明日25日(水)に会場非公開&配信大会として開催されるBreakthrough Combat02で、北岡悟がProgress暫定ウェルター級王者の森戸新士に挑戦する。
Text by Takumi Nakamura
2013年のゲイリー・トノン戦を最後にグラップリングの試合からは距離を置いていた北岡だが、今年に入ってから9月のクインテットに続いて2試合連続でのグラップリングマッチに出場することとなった。そこにはどんな心境の変化があったのか。北岡は頑なだった自分が変わりつつあることを明かしつつ、MMAの試合と変わらない自身の勝負論を語った。
詰んでいる状態で、これからどう格闘技と付き合って生きていくかを考えるしか選択肢がなかった
――9月のQUINTET、そして今回のBreakthrough Combat02におけるProgressマッチと2連続でグラップリングの試合に出場することになりました。グラップリングの試合には否定的だった北岡選手ですが、ここに来てグラップリングの試合に出ることが驚きでした。
「そうなんですよ。もともとはクインテットの時に思ったことで、今振り返るとクインテットのオファーをもらったのがすごくいいタイミングだったんです。ちょうどロータスの金曜日のグラップリングのあとに(RIZIN)笹原(圭一)さんから連絡があって、これはやるべきだなと思いました」
――どういった心境の変化があったのですか。
「僕は11年前にADCCでゲイリー・トノンに極めれらた時に、これ(グラップリング)は俺がやることじゃないというか、これで俺は悔しがれないなと思いました。悔しがり方が中途半端になっちゃうなって。MMAの試合とは温度差があるし(試合の準備も)付け焼き刃だし、とにかく違和感がありました。これは間違いなく僕にしか分からない感覚なんですけど。
それに当時は頑なでした。僕はずっと頑なで、今ですら十二分に頑なかもしれないけど、当時は今以上に頑なで。時期的にはパンクラスを抜けてラストスパートだと思っていたら、意外とラストスパートが長いなと思っている時期で、そこからジムを作るという流れになっていったので、自分のなかでは過渡期でもありましたね」
――先ほどロータスでの練習後に笹原さんからオファーを受けたとのことでしたが、グラップリングで試合することを見据えてロータスで練習していたわけではないんですよね。
「はい。5月の試合に負けて(※倉本大悟にTKO負け)人生を模索していて、自分は誰かが言うところの詰んでいる状態で、これからどう格闘技と付き合って生きていくかを考えるしか選択肢がなかったんです。その中で自分のジムでは6月~7月くらいからグラップリング、9月の半ばからMMAの練習を再開して、ロータスでは8月からグラップリングの練習を再開して。試合の2週間前くらいにオファーをいただいたのですが、自分の次戦を模索していくなかで、自分は『あれも嫌』、『これも出来ない』という人間だということが分かったんです。
最近は柔らかくなったとはいえ、やはり自分は頑なで。そこでクインテットのオファーをもらって、これを断ったら何もやることがなくなっちゃうなと思ったし、提示された条件も良いものだったので試合を受けました。あとは団体戦で引き分けがあるというところも、ですね。僕はサブミッションディフェンスに関しては教則動画を販売させてもらうくらい自信があるので、いざとなったら引き分けには持ち込めるだろうと思っていました。唯一心配だったのは壁がないレスリングをやるというところくらいで、そこは試合まで2週間…と言ってもグラップリングの練習は4~5回だったので、本当に付け焼き刃で臨みました」
――その頑なさが柔らかくなったのはご結婚されて生活環境が変わったことも大きいですか。
「それは間違いないと思います。5月の試合前に思ったんですけど、優先順位が変わった自分がいて、その自分を信用しきれていない、みたいな。で、いまだに集中できない自分に苛立つこともあるけれど、僕はそれを受け入れて生きていくし、受け入れて勝負するし、受け入れて強さを求めていく。それが現状です。それでより強くなるために、勝つためにどうするのか。そういうことだと思います」
――実際にコンディショニングのために整体やサウナに行く回数もかなり減ったんですよね。
「9月頃に佐伯さんと話して年内はMMAの試合がないということで、それだったら嫁さんに『そんなにサウナとか行かなくてもよくない?』と言われて、行く回数を減らしたんですよ。そしたら依存しなくてなって、実際にそれでやっていけるし、いい練習が出来る。なんならやりすぎていた時期よりもいいんじゃないかと思えるところに行きついたし、実際にクインテットの試合で動いてみて手応えもありました。そのタイミングでのオファーでもあったんですよね」
勝負論はあると思いますよ。柔術側の人からすると、落ち目の北岡悟なら問題なく森戸選手が極めちゃうだろうと思っている
――ではグラップリングをやろうと決めたわけではなく、色々と今後のことを考えているなかでオファーが来て決めたわけですね。
「選択肢がない中で舞い降りてきて“ハマった”感じですよね。タイミングもそうだし、Breakthrough Combatという舞台もそうだし。Breakthrough Combatは旗揚げ戦も興味があったんで配信を見たんですよ。それこそ僕と今回対戦する森戸選手が僕にMMAで勝っている泉選手を極めているし。気になる大会としてチェックしていました」
――しかもクインテットと違って団体戦ではないですし、試合そのものもシチュエーションも違います。
「相手は勢いに乗っているし、グラップリングだけじゃなくて柔術のコンペティションにも出て海外で勝っているので強そうですよね」
――この試合のために練習・調整面で変えるものはありますか。
「特別変える予定はないです。それこそクインテットの前は付け焼き刃で壁を背負わないようにやっていましたけど、今回はそれを気にしなくてもいいし、むしろ(ケージを使うことは)やってもいいので。ただ相手の出方が読めなくて、すぐ寝る・座る可能性もあるだろうし、僕が相手だからテイクダウンを狙ってくることもあるだろうし。(相手については)そんな感じですね」
――個人的にはグラップリングで戦う北岡選手が想像がつかないというか。いい意味でどうなるのかを見てみたいところがあります。
「なるほど。クインテットの試合は種明かししますけど、途中からは両者失格を狙ったというか、そうなったら引き分けと一緒じゃんと思いつつ、やっていました」
――北岡選手はMMAファイターとして試合を続けていて、そのキャリアがあるからこそ、グラップリングでも出来ること・やれることが多いと思っているのですが、そこはいかがでしょうか。
「相手が強いと思うからやってみてどうなのかって。この数年間は答え合わせは試合と言っていて、間違いではないけど結果が出ずに不正解が多かったわけです。でも今回に関しては、はっきり言うと正解を出せる自信があります。信じては裏切られての繰り返しだから疑心暗鬼ではあるし、いたずらに何かを信じないようにしていますけどね」
――そういった言葉を聞くと、やはり見る側からすると楽しみです。
「勝負論はあると思いますよ。柔術側の人からすると、落ち目の北岡悟なら問題なく森戸選手が極めちゃうだろうと思っているかもしれないですし」
――どうしてもMMAファイターがグラップリングの試合をする場合、勝負論がずれがちになってしまうじゃないですか。
「エキシビションマッチになっちゃいますよね。それこそトノンに負けて、グラップリングの試合はやめておこうと思ったのは、そこなんですよ。(グラップリングは)自分が考える勝負からボヤけるから。当時はそれが嫌だと思ったんじゃないですかね」
――試合ではあるけれどMMAファイターの側に「グラップリングだから負けてもしょうがない」が少なからず出てしまう。
「それはしょうがないことだと思います。ただクインテットの話をすると、僕は控室で絶対に引き分けてやろうと思って出番を待っていたんです。でもせっかくチーム戦で勝負事なんだから、チームで勝つことが出来たらベターだなと思って、他のメンバーに『今日はチームで勝ちましょう!』と声をかけて握手したんです。矢地くん以外はほぼ面識なかったのですが、僕が年長者だし、ここは一言言っておいた方がいいなと思って。そしたらそこから一気にチームの雰囲気がよくなったんですよね」
――チーム全体が勝ちに行くモードになって、空気がピリッとしたのですか。
「そんな感じです。先鋒の横山(武司)選手が『僕、あのキルギス人(ジュマナザロフ・ラトベック)から一本取れると思います』と言ってくれて。『それだったら平田(直樹)選手を引き分けで止めてくれたら、あとは僕らが全員引き分けに持ち込めば勝てる。もし新居(すぐる)選手が内芝(正人)選手から一本取れるようなら取ってください』とチームとしての戦術を練ったんです。
そしたら本当にその通りになったんですけど(笑)、あの瞬間でチームが勝つために一丸となって、僕自身も試合後に気持ち良かったんです。当たり前だけど、勝負ごとは勝つのが一番なんだなって。まさにそういうことですよ」
――やはり勝負事は勝たないと気持ちよくないですか。
「勝ちたいですよね。たくさん負けてきたからこそ、なおさら思います」
――来年以降、MMAの試合についてはどうお考えですか。
「(北岡の試合は)もういいよ、見たくないよと思う人が何パーセント、まだ見たいと思っている人が何パーセントという話かもしれないけど、試合を組んでくれるプロモーターがいて、自分がやりたいと思うならやりますし、そうやって周りが見たくなるようなものにしなきゃダメですよね。
それはもちろん厳しいことではあります。クインテットの前にも思いましたが、動いてみてもう見ていられないと思われるようなものだったら、やっちゃダメだし……近藤(有己)さん。近藤さんが去年12月に試合をした時、相手の攻め方もあったと思いますが、テイクダウンされて全く動けなかったんです。トータルで考えると71.5キロまで体重を落としたら動けないことが分かったんですけど、試合後に近藤さんにこの動けなさだったら試合は用意できない旨を伝えました。
で、その言葉は自分にも刺さったんです。(試合は)勝負事でもあるけれど見世物でもあるから。それで言うと去年11月の泉戦はすごく納得がいってないし、それだったら今年5月の倉本戦の方がいいと思うし、それでああいう試合をした部分もあります。結局どちらも負けたのでどちらも不正解なんですけど。ただ僕はみんなが思っている以上に“踏まえて”やっていますよって感じです」
――試合が決まった時にSNSで「人前に出る機会を与えられた」と投稿していましたが、人前に出る選手である以上、それ相応のものを見せないといけない、と。
「それを言ったら、もしかしたらクインテットを見た人で僕がやったことが分からない人は分からないだろうし、多くの人に分かるようにしなきゃマスを捉えられないということも分かってはいますけど。人前に出る限り、それを捨てきるつもりはないですけど……そんなところでしょうか」
――先ほどの試合に対してもそうですし、人前に出る選手としてもそうです。
MMAの試合ではないですが、北岡選手にとってBreakthrough Combatが勝負の場だということが分かりました。
「ありがとうございます。そうですね、そういうことです」
■視聴方法(予定)
12月25日(水)
午後6時30分~ THE 1 TV YouTubeチャンネル
■Breakthrough Combat02計量結果
<Progress68キロ契約/5分2R>※当日計量
須藤拓真:──キロ
中島太一:──キロ