この星の格闘技を追いかける

【ROMAN02】無差別級T出場、白木アマゾン大輔─01─「試合で勝っても負けても、時間は過ぎていく」

【写真】18歳の時に修斗でプロデビューしてから、もうすぐ30周年――そんなアマゾンの「今」とは(C)SHOJIRO KAMEIKE

27日(日)に東京都新宿区のGENスポーツパレスで開催されるROMAN02にて、白木アマゾン大輔がROMAN柔術ルールの無差別級トーナメントに出場。1回戦でランジェル・ロドリゲスと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

今回はアマゾン×ロドリゲス、柳井夢翔×森戸新士で1回戦が争われ、当日に決勝まで行われるワンデートーナメントだ。1980年生まれで、今年45歳になるアマゾンにとっては若い柔術家たちの中で戦うこととなる。

個人的なことを言えば、アマゾンのインタビューを行うのはちょうど10年ぶりだった。10年前といえばアマゾンは柔術界に復帰後、長女の優希ちゃんが亡くなったあと、岐阜に「CARPE DIEM HOPE」設立する直前だ。

2025年もギ、ノーギを問わず毎週のように戦っているアマゾン。レスリングのマスターズにも出場している(C)DAISUKE SHIRAKI

いまや彼は岐阜、名古屋、さらには立川と計3つの道場を構えている。その一方でアマチュア、プロ問わず試合に出場し続けているアマゾン。今回の取材は4月10日に行われたものだが、その週末にはJBJJF全日本ノーギ柔術オープントーナメントで、黒帯マスター3のヘビー級とオープンクラスを制した。さらにその翌週には、ASJJF「TOKYO INTERNATIONAL SPRING JIU JITSU CHAMPIONSHIP 2025」でも優勝した。

10年前とは出場しているカテゴリーも階級も異なる。道場運営に忙しい日々を送りながらも、戦い続ける。そんなアマゾンを訪ねると、様々な経験を経て「今を生きる」彼の姿があった。


――お久しぶりです。会場などで会って話をすることはあっても、インタビューするのは10年ぶりです。

「おぉ、そんなに経ちますか。大丈夫ですかね? 最近は柔術だけで、格闘技界のことは詳しくないんですけど……」

――その柔術の話を訊くために来ています(笑)。最近のSNSを見ていると、「以前よりも楽しく格闘技を続けている」という印象を受けました。以前は試合となると、もっとピリピリしていたように記憶しています。

「以前というのは、修斗に出ている頃ですよね。アハハハ、それはもう――18歳から修斗と並行して柔術をやっていました。修斗を引退するまでの競技生活は勝利絶対主義だったし、修斗でプロとしてやっている以上、柔術でも負けるわけにはいかない。となれば、まぁピリピリした雰囲気にもなりますよね(笑)」

――勝利至上主義の競技生活、ですか。アマゾン選手は現在も試合に出ている競技者です。それが今のように楽しく格闘技を続けられるようになったのは、いつ頃からですか。

「20代までは勝利至上主義の競技生活を送っていましたね。今年で45歳になるけど、30代以降の僕の価値観は、どこまで行っても趣味なんですよ。その価値観は抜けないです。

言ってみれば、45歳のオッサンが趣味で格闘技の試合に出ている。もちろん『負けてもいい』とは考えていないし、勝つことを考えています。ただ、負けても次の試合がありますよね。プロとしてのオファーがなくなるとか、そういうわけでないし」

――現在出場している柔術の試合がアマチュア大会である以上、申し込めば出場することはできます。

「そうなんですよ。そういう意味では趣味だと、自分の中では考えていますね」

――柔術の試合に出場するのが趣味という意識に変わったのは、出場カテゴリーがアダルトではなくなったことも大きいですか。

「それはあります。今はマスターカテゴリーで試合をしています。その自分がアダルトカテゴリーに出場して勝てるかどうか、というのは話が変わってくると思うんですよ。自分がいつまでも若い選手に勝てるとは思っていなくて。自分の老いも受け入れて、できなくなっていることも増えていますから。『今の自分に残っているものを、いかに伸ばしていくか』というところで勝負しています」

そうは言うもののアダルトカテゴリーでも優勝している(C)DAISUKE SHIRAKI

――やはり『できなくなったこと』は増えてきましたか。

「正直言うと、増えました。そこは自分自身で把握していないといけないから、分かっています。反応速度や判断力――瞬時に極める能力は落ちましたと思いますね」

――最後にマットサイドでアマゾン選手の試合を取材したのは2016年4月、大田区総合体育館で行われたIBJJFジャパニーズ・ナショナルでした。

「あぁ、ありましたね」

――この大会ではアダルトカテゴリーに出場し、フェザー級で優勝しましたが、すでに気持ちは変わっていたように思います。少なくとも柔術の試合で相手を死に至らしめることもある、あるいは自分が死んでもいいという覚悟で試合に臨むことはなくなっていました。

「アハハハ! そういう気持ちでやっていた時期はありました。その気持ちが変わったのは、単純にプレッシャーがなくなったからじゃないですかね。

修斗に出ていた頃は、プロで戦っているのだから柔術でも表彰台に昇らないといけない。そう自分にプレッシャーを課していた時代とは全然違います。極論、勝っても負けても何も変わらない――という言い方は変かもしれないけど、試合で勝っても負けても時間は過ぎていきますから」

――第一線から退いた柔術家やグラップラーに、試合に出場するうえでのスタンスを聞くと、大きく3つに分かれます。自分の強さを追い求めているか、指導者として今の技術を体感するためか。そして自分の道場をアピールするため……アマゾン選手は、いかかですか。

「考えたら自分もメチャクチャ試合に出ていますね。今のように四十代後半に差し掛かってくると、1年が過ぎるスピードがメチャクチャ速く感じるんです。それは人生全体の中で、生きている時間のパーセンテージが残り少なくなってきているから、だと思います」

――……。

「でも試合に出ることで緊張したり、試合に挑戦すること自体で、その時間の経過がやや緩くなることが分かってきて。

もう四十代後半になって、自分が動ける時間は絶対に少なくなってきているじゃないですか。少なくとも格闘技ができる時間は。だから悔いがないように、今という時間を最大限に活用するために試合をしているのかもしれないですね」

――道場主の試合の勝敗によって、会員数が変わることもないですか。

「変わらないですよ。もうそんな時代ではないです。今は僕自身が道場主ではありますけど、道場が増えて立場が変わりました。どちらかといえば総括というか、3つのジムを回る立場になって。そうなると自分がやるべき仕事も変わってきますし。

毎日指導はしていますけど、指導する時間は以前より少なりました。今は道場主というよりはマネージャー的な立場で。だから昭和の道場みたいに『先生が勝ったら――』という感じでないことは確かです」

――先生が試合に出るからといって、生徒さんが皆で応援に来るわけでもないのでしょうか。

「ない、ないです。僕が生徒さんの試合でセコンドに就くことはあっても、僕自身がセコンドに就いてもらうことはなくて。それはMMAと柔術の違いでもあるとは思うんですよ。MMAはラウンド制だから、ラウンド間にセコンドの存在は絶対に必要で。タオルを投げてくれる存在も必要じゃないですか。柔術はラウンド競技じゃないし……それ以上に『たかがこんな趣味で試合をしている自分にセコンドがいるのか』とも思いますしね。

試合結果を知っている生徒さんはいるとは思います。でも、僕が結果を出して道場のPRをするとか、そういうつもりは全然なくて。それだと何か違うような気がする。自分が戦っている姿を見て皆に何かを感じてほしいとか、そう考えていた時期がなかったわけではないです。でも今の心境って、そういうわけではないんですよ」

――道場をやっていくうえでは選手としての技術の研鑽より、指導やマネージメントの向上のほうが大きくなってくるかもしれません。そんななかで今、技術の研鑽はどのように行っていますか。

「技術の研鑽、ですか。自分が新しい技術を身につけているかどうか、それは試合も答え合わせになりますよね。できないこともある、自分に足りないこともある。その中で課題が見つかってくる――趣味だから、そこが面白いという面もあるんです」

<この項、続く>

■ROMAN02 視聴方法(予定)
4月27日(日)
午後12 時00分~Twit Casting LIVE

■ROMAN02 対戦カード
<R.O.M.A. RULES無差別級/時間無制限>
関根秀樹(日本)
ゲイ・ババカール(セネガル)

<ROMAN COMBATライト級/15分1R>
日沖発(日本)
アレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラ(ブラジル)

<ROMAN COMBATウェルター級/15分1R>
大浦マイケ(ブラジル)
ウィル・チョープ(米国)

<ROMAN COMBATフェザー級/15分1R>
松本大輔(日本)
門脇英基(日本)

<ROMAN COMBATフェザー級/15分1R>
大村友也(日本)
清水俊一(日本)

<ROMAN COMBAT94キロ契約/15分1R>
中山賢一(日本)
瓜田幸造(日本)

<ROMAN COMBATバンタム級/10分1R>
江崎壽(日本)
江木伸成(日本)

<ROMAN COMBAT75キロ契約/10分1R>
押木英慶(日本)
高橋孝徳(日本)

<ROMAN COMBAT95キロ契約/10分1R>
中里謙太(日本)
田馬場貴裕(日本T)

<ROMAN COMBAT95キロ契約/10分1R>
テイラー・ラング(カナダ)
関澤寿和(日本)

<ROMAN柔術無差別級T1回戦/7分1R>
ランジェル・ロドリゲス(ブラジル)
白木アマゾン大輔(日本)

<ROMAN柔術無差別級T1回戦/7分1R>
森戸新士(日本)
柳井夢翔(日本)

<ROMAN柔術フェザー級/7分1R>
大脇征吾(日本)
鍵山士門(日本)

PR
PR

関連記事

Movie