【SUPER RIZIN04】いざ、扇久保博正戦へ。ホセ・トーレス「最初の相手がヒロで良かったかもしれないね」
【写真】再びRIZINで戦うことに、心の底から楽しめているように見えたホセ・トーレスだ (C)MMAPLANET
27日(日)にさいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催される超RIZIN04で開幕するRIZIN WORLD GP2025フライ級トーナメント。同トーナメントに最終的に出場が決まったのが、元UFCファイターのホセ・トーレスだ。
Text by Manabu Takashima
Titan FCではプロ3戦目に暫定フライ級王座を獲得し、5戦目にはバンタム級のベルトを奪取、2階級制覇を成し遂げ、UFCへ。オクタゴンでは1勝1敗の時点で、UFCフライ級休止問題が起こりバンタム級転向でなく、リリースを選択してBRAVE CFと契約。そのBRAVEでバンタム級のベルトを巻いた。昨年の大晦日に初来日を果たし、59キロ契約マッチで神龍誠に競り勝った。フライ級T出場が確定したと思われたが、16人から8人に縮小の影響を受け選外となった。
そのトーレスが、抽選会直前に出場権を得ただけでなく初戦で扇久保博正と戦うことが決まった。初戦からファイナル級のマッチアップに挑む、トレースにフライ級GP出場までのローラーコースターのような日々と意気込みを尋ねた。
ファイターとしてのエゴに、純粋に従う姿勢を本当に尊敬している
――ショーティー、RIZINのワールドGPフライ級トーナメントの参加が決まり嬉しい限りです。ホセの出場でこのトーナメントの価値はさらに高まったと思います。
「本当に興奮しているよ。最初、GPは16人トーナメントで実施されると聞かされていた。そして、声が掛かるのが待ちきれなかった。それが8人トーナメントになって、BRAVE CFの契約下にある僕の出場はないという話になった。『なんてこった!! BRAVEと新しい契約を交わしたばかりじゃないか。もう日本で戦えないのか。そんなことはない。いつか日本で戦える日がくること願い続ける』――そんな気持ちになった。
だから暫くは試合もないからシカゴの自宅で、ドーナツを食べていたんだ。ガスステーションやコンビニで売っていて、シカゴの子供たちが朝食で食べるスーパードーナツをね(笑)」
――アハハハハ。そこまでドーナツの説明をありがとうございます。
「ハハハハ。そう、スーパードーナツを食べていたら、シンゴ(柏木信吾氏)から電話が掛かってきた。『日本のファンはホセとソヤの参戦を望んでいる。そうすると、より激しいトーナメントになる。10人参加、ベストな4試合を勝ち抜いたファイターが準決勝に進出する。もう1 人は補欠に回る。体重は落とせるかい?』ってね。
凄く興味深いし、面白い試みだ。すぐに気に入ったよ。で、とりあえず手にしていたドーナツを食べて『もうドーナツは終わりだ。体重を落とさないといけないな』と(笑)。
このオファーは凄く嬉しかったけど、前回の試合ですら2カ月半のキャンプを行った。今回は1カ月だ。本当にハードな練習をして、フライ級まで落とさないといけない。可能かどうかを確認し、参戦を決めた。で、すぐにシカゴを出てラスベガス経由でメキシコシティにやってきたんだ。
運が良いことに太ってはいたけど、めちゃくちゃ太っていたわけじゃなかった。実際、今日も練習で疲れ切っているけど、トーナメントに出られることが心の底から嬉しいんだ。
しかも、僕と戦うヒロマサ(扇久保博正)が『このトーナメントの優勝者はUFCチャンピオンにも負けないと思われるようなトーナメントにする』なんてことを言っていたじゃないか」
スピードとテイクダウン。この2つを駆使して、ヒロマサは相手を疲れさせて勝つ
――ハイ。
「あの言葉を聞いて、燃えたよ。どれだけこのトーナメントで優れたファイターが戦うのかが、伝わってくる言葉だった。とにかく僕はベストの誰かと戦いたいからね。
僕が2番を引いて、彼が3番を引いた。あの時点で僕はヒロマサと戦うことになると分かった。彼もベストと戦いと思っている。その想いをぶつけてくることが、十分に予想できたんだ。彼がファイターとしてのエゴに、純粋に従う姿勢を本当に尊敬している。
ヒロマサはトーナメント戦なのに、イの一番にもっともタフな相手と戦いたいと思って行動に移した。それは自分が世界のベストだと示したいからだ。本当にすごいヤツだよ。トーナメントに出ている多くの選手と既に戦っているヒロマサは、戦ったことがない相手と試合をすることで気合を入れているのではないかな。そういうこともあると思うんだ。
僕としては、彼とは決勝で戦いたかった。言い訳に聞こえるかもしれないけど、オファーがあったのが体重を落とすには、本当にギリギリのタイミングだったからね。それにしても、本当に強いファイターだ。RIZINバンタム級トーナメントで優勝する前にはTUFで戦っていた。フライ級でもベルトを巻いている。素晴らしいプレゼントだったよ。トーナメント1日目に一番いかした相手と戦うことになるなんて(笑)。
しっかりと体重を落として、ベストの体調でトーナメント初戦を迎えていないといけない。本当にタフで、厳しい試合になるだろうからね。それにしても、対戦相手を自分で決める抽選会は本当に楽しいコンテストだったよ。結果、僕らの試合は最高のショーになると確信できた。他の1回戦がどうなろうが、僕とヒロマサの試合がベストファイトになる」
――これだけトーナメント初戦に燃えているホセですが、前回の敗北について尋ねないといけないです。個人的には初回は落としても2Rと3Rはホセのラウンドだったと思いました。
「あの時は、もう最悪の心境になっていた。RIZINトーナメントに出られないという状況で、ジアス・アレンガイポフと戦った。1Rを落とすのは、僕にとってはもう普通のことだ(笑)。ダメなことも分かっているけど、スロースターターなんだ。でも2Rと3Rは、1度しかテイクダウンをされていないし、コントロールもされなかった。何度もテイクダウンを切って僕は蹴りやパンチで、ラウンドを取っていたはずだ。試合が終わってファンも僕の勝利を信じていたし、チームも勝利を確信していた。
29-28というアナウンスを聞いて『そうだな』って言う気でいると、判定負けだった。僕のキャリアで、勝ったと思った試合を落としたのは2度目のことだ。ジャッジはレスリングばかりに目をやっていたんだろうね。でも、テイクダウンされたのは3度だけ。うち2度は初回で、次は2Rの序盤だった」
――2Rに関してはコントロールされていないです。
「そうだよ。20秒後にテイクダウンをされたけど、そこから40秒間はケージを背負って立っていた。残りの4分は打撃で攻め続けていたはずなんだけどね。あの試合で負けたことで、ムハマド・モカエフ戦という楽しみでならなかった試合がなくなった……。
RIZINフライ級GPに出られない。ジャッジ以外は僕が勝っていたと思っていた試合で、おかしな判定によってタイトルを取れなかった。そしてモカエフ戦も消えた。GPとモカエフ戦、UFCを除くと最高のフライ級の試合機会を失くしてしまったんだよ。しかも、あの試合のウィン・ボーナスでメキシコに住む母親に家を買ってあげようと思っていたけど、それもできなくなった。もう、ドーナツを食べまくるしかないだろう(笑)」
――アハハハ。そして、一本の電話があったと。ところで今回、メキシコシティをファイトキャンプ地としたのは?
「これまでもインタビューを受けた時はフロリダ、ニューメキシコ、テキサス、ウィシコンシンと別々の場所だったと思う。今はメキシコだ。僕は色々な場所で、さまざまなコーチのアドバイスに耳を傾けるのが好きなんだ。メキシコで凄く人気のあるUFCファイターのレイジーボーイ、ロナルド・ロドリゲスのコーチから一緒に練習しないかって誘われていたんだ。メキシコシティにはUFC PIもできて、凄く充実したトレーニングが可能だと聞いていたので、もともと興味があったしね。
それに僕にはメキシコカンの血が流れている。母はシティから2時間ほど離れた所に住んでいて、ファミリーの多くがこの国にいる。滞在費を含めて、キャンプで掛かるお金が凄く安く済むのも大きい。まるで自分がミリオンネアーになったように感じるよ(笑)。何より自分のルーツや、その国の文化についてゆっくりだけど学ぶことができるのも大きいし、高地トレーニングにもなるからね。レイジーボーイのチームのサポートもあり、メキシコシティで初めてのトレーニングキャンプだけど凄く良い練習ができている」
――では練習はUFC PIで行っているということですか。
「いくつかのジムを回っているけど、もちろんPIでも練習している。僕はもうUFCファイターじゃないけど、レイジーボーイと一緒にUFC PIメキシコを使わせてもらっているからストレングスコンディショニング・トレーニングに減量、体調面のアドバイスも受けている。PIではドミニク・クルーズやエリック・デルフィエロとも時々だけど一緒に練習をすることもあって、他のコーチからも有益なアドバイスを貰っている」
――ドミニクとショーティー、凄まじい顔合わせです。
「ほんとエンジョイしながら、しっかりと調整ができている。実際、UFCで試合をした時は19日前、それと20日前のオファーだった。その期間に30ポンド近く体重を落とす必要があった。13、14キロを落としたんだ。あの頃と比べると周囲のサポートもあるし、期待されているのも感じるから凄く充実している」
――つまりエレンガイポフ戦以上のパフォーマンスを期待できるということですね。
「その通りだよ(笑)」
――それは楽しみでです。あの試合自体、バンタム級の時よりも体にキレがあったように見えました。2Rの途中から徹底的にテイクダウン狙いを切って、しかも打撃戦にもちこむためにコントロールしていた。15分中、最初の6分を強烈なレスリング&コントロールで攻められながらスタミナを切らさなかったです。
「ありがとう。今回のヒロマサとの試合に向けて、一つポジティブなことはエレンガイポフ対策が、ヒロマサ対策に通じていることだ。あの試合のための練習が、ヒロマサとの試合にも生きる。ヒロマサには素早い打撃もあるけど、テイクダウンからグラウンドコントロールという点は同じスタイルだ。
スピードとテイクダウン。この2点には最大の注意を払う必要がある。この2つを駆使して、ヒロマサは相手を疲れさせて勝つ。マコト・シンリュウ戦もそうだった。でも、あのやり方は僕には通じない。そこからコントロールし続けて、フィニッシュする部分で彼には穴があるんだ。と同時に、僕もスロースターターを返上したい。ジャッジに勝負の行方を委ねすぎないように戦う。それには初回を取ることが重要になってくるからね。
初回はいかに自分のやりたいことをぶつけることができるのか。そうすると、2Rと3Rをどう戦うべきかが見えてくる。いずれにしても、僕がやるべきことは常にプレッシャーをかけること。その圧に対して、ヒロマサがどのように対応してくるのか。彼の戦い方次第では、エキサイティングな試合にならない。でも、そんなことをしていると彼は僕に勝てないよ。
実際、ヒロマサはそこも理解しているはずだ。彼がナオキ・イノウエと戦った試合はエキサイティングでスリリングだった。結果は判定になったけど、あの試合こそハイレベルなファイター同士のぶつかり合いだよ。ああいう試合をファンに見て欲しいと思っている」
――扇久保選手をインタビューした時に、「ホセ・トーレスはコントロールで勝てる相手じゃない」と言っていました。
「なるほどね。ヒロマサは本当に優れたファイターで、スマートだね。ここまでRIZINでトップとして戦い続けてきてなお、他のファイターの長所に目をやることができる。そして、ファンが何を求めているのかも分かっているのだろう。ファンの希望に、ベリー・ベリー・ハイレベルのファイターが応えようとする。ヒロマサは僕をホールディングダウンはしないし、僕も初回からハイペースで動く。そうしないと勝てないからだ。きっとファンが喜ぶ最高のファイトになるよ」
RIZINフライ級チャンピオンとBRAVE CFフライ級チャンピオンで実現させたい
――そのようななか、先ほどホセも触れていましたが、このトーナメントは5人の勝者のうち1人が投票結果次第で補欠戦に回る可能性があります。
「凄く面白い試みだ。プロモーションが『良い試合をしろ』と言っても、なかなかファイターは自分の意思を曲げることはない。ただし勝ってもトーナメントから外される状況なら皆、必死になってアグレッシブな試合をするだろう。そしてファンはエキサイティングな試合を見ることができる。だからRIZINも僕を必要としたんだ。確実にファンにエキサイティングな試合を提供できるからね。そうやって考えると、最初の相手がヒロで良かったかもしれないね。
イージーファイトだと、ファンの評価が低くなる可能性がある。一番手強い相手と、タフな試合をして勝った方がファンも喜んでくれるにはずだ」
――急遽参戦が決まった時の期待度が、より強くなる言葉の数々ありがとうございます。ホセ・トーレスのGP参戦がより楽しみになりました。
「僕のゴールはまずはヒロマサに勝つこと。そして準決勝、決勝を勝ち抜いてGPウィナーになる。つまりRIZINフライ級チャンピオンになるということだよ。ベルトを巻けば防衛戦も戦う。そして……やはりモカエフと戦いたい。彼は練習仲間でブラザーのような存在だけどね。モカエフはUFCに戻りたいんだ。なら、人々が納得する強い選手と戦わないと。僕であったり、ヒロマサのような。
それにRIZINとBellatorがやっていたようなチャンピオン×チャンピオンのクロスプロモーション対決をRIZINフライ級チャンピオンとBRAVE CFフライ級チャンピオンで実現させたいんだよ。それこそファンが見たい試合になるから」
――ショーティー、今日は練習後の疲れた時にインタビューを受けてもらってありがとうございました。では、最後に日本のファンにメッセージをお願いしますか。
「日本の皆には、ベスト×ベストの戦いを楽しんでほしい。皆の期待に応える試合、いやそれ以上のファイトを見てもらえるようベストを尽くすよ」
■視聴方法(予定)
7月27日(日)
午後1時00分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!