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【SUPER RIZIN04】フライ級GP1回戦でズールーと対決、伊藤裕樹「確率論でいえば一番、期待値がある」

【写真】しっかりと気持ちを切り替え、いざGPへ!(C)SHOJIRO KAMEIKE

27日(日)にさいたまスーパーアリーナで開催される超RIZIN04で開幕するRIZIN World GP2025フライ級トーナメント。その1回戦で伊藤裕樹は、南アフリカのエンカジムーロ・ズールーと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

伊藤は今年3月にトニー・ララミーを判定で下し、フライ級GP出場を確実なものとしていた――はずだった。しかしその約1カ月後、神龍誠に完敗を喫してGP出場についても微妙な状態になってしまう。周囲の評価ではない。何より、自分自身に対して納得がいかなかい。そんななか気持ちを切り替え、改めてGP出場が決定し、1回戦の抽選会で対戦相手にズールーを選んだ伊藤がトーナメントと、ギャンブラーらしからぬ確率論について語る。


準決勝進出者はファン投票で選ばれる。だから1試合目からバチバチに打ち合える選手を選ぼうと思っていた

――前回のインタビューで改めてフライ級GP出場をアピールした後、確定に至ったのはいつ頃だったのでしょうか。

「取材のあと『トーナメントあるよ』とは言われていました。ただ、出場選手が10人になることが確定したのは、扇久保博正さんが『榊原社長に呼び出されました』(※RIZINのYouTubeチャンネルで放送されている番組)に出演した日です。いきなり『トーナメント、10人になる』と聞いてビックリしましたよ」

――さらに準決勝進出者が、1回戦の勝者の中からファン投票で決まるというのは……。

「それも最初は知らなかったです(笑)。とりあえず10人になると聞いて『準決勝はどうするんだろう?』と思っていたら、ファン投票で決めると――」

――そんななかでまず1回戦のカードを決める抽選会が行われました。前回のインタビューで伊藤選手が「神龍とはGP決勝戦でリベンジしたい」と発言すると、神龍選手は「1回戦でやれよ」とツッコミを入れていましたね。

「あぁ、アイツですか(苦笑)。神龍は絶対にないですね。アハハハ。抽選会でもエンタメ枠とか言って、さすがに俺のことじゃないだろうと思ったら――口に出してみたものの、ぶつけるアテがなくて。だから僕に振ってきた時は笑いましたよ」

――一宮で伊藤選手を取材した日に、続いて名古屋市内で三宅輝砂選手を取材することになりまして。

「あぁ、三宅君ですか。はい」

――伊藤選手と練習仲間の三宅輝砂選手は「伊藤さんと神龍選手は絶対に合わないと思います」と笑っていました。

「アハハハ! もうね、神龍には極力関わってほしくないです(笑)」

――抽選会ではズールー、ホセ・トーレス、あるいは別枠という選択肢があったなか、ズールーを選んだ理由を改めて教えてください。

抽選会はビシっとドレスアップ。注目されるべき時と場所を理解している

「準決勝進出者はファン投票で選ばれる。ということは1回戦でショッパイ試合をすると、勝っても選ばれない可能性も出て来る。だから1試合目からバチバチに、自分の得意なところで打ち合える選手を選ぼうと思っていたんですよ。GP出場者の中では征矢さんとズールーがストライカーじゃないですか。その2人と対戦したら盛り上がると思いました」

――でも征矢選手は開始早々、テイクダウンに行くでしょう。

「今なら、そうしたほうが絶対に面白い! あれだけ言われたあとに最初からテイクダウンに行ったほうが、逆に盛り上がりますよ(笑)」

――ハハハハ。伊藤選手としてはズールーと征矢選手以外の選択肢はなかったのですね。

「抽選の番号次第でした。自分の番になってもう征矢さんとズールーの横が埋まっていたら、そこは運命に任せていたと思います。でも思いのほか良番を引くことができて、なおかつズールーが先に枠に入っている。しかも試合順も3番目――ちょうど中間で『これからどうなるか』って展開になっているところだから、試合も盛り上がりますよね」

――ズールーが打撃戦を避けてテイクダウンに来るとは思いませんか。

「もちろんストライカーだけど組みもできる選手なので、組みで来てもらってもいいですよ。もともと南アフリカのEFCで2階級制覇している選手で、去年の大晦日にはあれだけ堀口恭司選手を追い詰めている選手ですからね。どんなスタイルで来てもズールーに勝てば、海外の人たちも僕のことを凄い選手だと思ってくれるでしょうし。ただ、僕としては組みも想定しているけど、やっぱり打撃で戦いたいです」

――伊藤選手がララミーに勝利した試合を視ると、相手もそう簡単に打ち合ってこない可能性もあります。ズールーもEFC時代にレスリング技術も見せており、もしテイクダウンされてもハーフガードから両手を差し上げてスクランブルに持ち込むなど柔術技術も持ち合わせています。

「そうなるとスクランブルからトップを取って、スタンドへリセットしますね。GPは組みの選手が多いから、全体を見据えて自分も組みの対処の練習をしているんですよ。だからズールーが組みで来ても、それを切って打撃でやろうと思っています。

相手に付き合わず、立って離れてから自分の得意なところで戦う。手足が長いからバックも取らせたくないですし。ボディトライアングルとか、リストコントロールも巧いと思うので。しっかりとしたポジションは取らせないようにしないといけない。RIZINはフットスタンプやサッカーボールキック、グラウンドヒザもあるので。そのルールを生かして強い蹴りとかも出していきたいですね」

基本的にギャンブルは運任せでやっていたけど、やっぱり最後に勝つのは……

――伊藤選手のほうからテイクダウンに行くことはありませんか。

「それが……YouTubeチャンネルで『7月7日というパチンコで勝ちやすい日に負けたら、グローブタッチからテイクダウンに行きます』と宣言していて。結果、15万円ぐらい負けてしまいました」

――えぇっ!?

「まさか負けるとは思っていなかったです(苦笑)。宣言したかぎり最初からテイクダウンに行こうかと思いましたけど、ズールーのスクランブルの話を聞いたので止めます。アハハハ」

――その場合、ジワリジワリと詰めていくのか。あるいは来た攻撃に対してパンチを合わせていくのでしょうか。

「やっぱり自分から攻めていきたいですね。ズールーはリーチも長いし蹴りのバリエーションも多いじゃないですか。中途半端な距離におると相手のペースになってしまうので、距離を潰して自分の打撃を当てる。組んできたら、しっかりと剥がして」

――中途半端な距離にいる時のアッパーも怖いです。真っ直ぐが当たったらアッパーを持ってくる。堀口戦は右アッパーでフラつかせていますが、EFCでは飛び込みながら左アッパーも打っていました。

「リーチがあるから当たるんですね。嫌だなぁ(苦笑)。アッパーもあるし、ヒジも巧いですよね。近い距離で自分が行けると思っても相手が狙っているかもしれないし――まず距離はうまく外したいです」

――一方で敗戦もあるズールーです。昨年の大晦日の堀口戦もそうですし、TUFの扇久保戦を見ても、やはり負ける時は組まれる時が多い。そのため、伊藤選手のテイクダウンを楽しみにしています(笑)。

「アハハハ、やるかもしれないです」

――というのもテイクダウンを煽っているわけではなく、やはり勝つためにテイクダウンを狙わざるを得ない状況も出て来るとは思います。

「まぁ、そうですね。勝たないとファン投票にも進めないですから。ただ、テイクダウン一つとっても違うと思うんです。守りに入るためのテイクダウンなのか、フィニッシュに繋げるためのテイクダウンなのか。そこでファン投票の評価も変わってきますよね」

――確かに。

「僕はストライカーなので、打撃を当てるためにテイクダウンを混ぜることは練習しています。それこそが勝つために必要なことであって。打撃戦を嫌がって組みに行くと、逆に潰されてポジションを取られてしまうことが多くなる。そうなるぐらいなら、打撃戦を選びます」

――あくまでも、勝つために。

「はい」

――重要なのはズールーが、ファン投票のために盛り上げることを考えながら勝てる相手ではないことです。本来は勝利するだけで評価されて然るべきファイターであって。

勝つだけでも評価されて然るべき相手――だが、今回の1回戦は全てそう言えるカードが揃ったか

「そこはぜひ分かってほしいですね(笑)。ただ、格闘技を知らない人でも盛り上がるのは、やっぱりバチーンと倒した時と、ガムシャラに勝ちに行く姿じゃないかと思うんです。僕はどんなに泥臭い試合になっても勝ちに行って、最後に倒す。そういう試合をしたいです」

――なるほど。そういえばフライ級GPの優勝賞金は2000万円です。

「今までギャンブルで負けた分を取り返すことができますね」

――2000万円を得ても、また全てパチンコで溶かしてしまうのでは……。

「いやいや、まずは家族旅行に行きたいです(笑)。ギャンブルって―確率論じゃないですか。パチンコは400分の1を当てて、ようやく数万円を得ることができる。競馬も10頭いるなかで一番を当てると数万円。もっと大きい金額になることもありますけどね。

でもフライ級GPは、10人の中で一番になったら2000万円ですよね。確率論でいえば一番、期待値があるんですよ。だから一番モチベーション上がっていますね。アハハハ」

――そうなるとギャンブルをやらずに、コツコツやっていくのが一番ではないですか。

「はい。基本的にギャンブルは運任せでやっていたけど――もちろん運も必要ですよ。でもやっぱり最後に勝つのは、コツコツやっているヤツなんです」

■視聴方法(予定)
7月27日(日)
午後1時00分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

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