【RIZIN OTOKOMATSURI】神龍戦とフライ級GPについて、伊藤裕樹「やって良かったと思います。ただ……」
【写真】悔しい敗戦から、すでに再始動している伊藤(C)SHOJIRO KAMEIKE
4日(日)に東京都文京区の東京ドームで開催されたRIZIN男祭りにて、伊藤裕樹が神龍誠に判定負けを喫した。
Text by Shojiro Kameike
今年3月末に高松大会でトニー・ララミーを下したあと、わずか1カ月のスパンで神龍戦に挑んだ伊藤。しかし試合内容と結果は厳しいものに……。ララミーに勝利したことで、7月からスタートするフライ級GPも出場確定かと思われていた。この敗戦でGP出場はどうなるのか。神龍戦後の会見で言葉も少なかった伊藤に、試合を振り返ってもらうとともに、フライ級GP出場について尋ねた。
ブレイクが速い傾向にある。それが結局、ブレイク待ちになってしまった
――RIZIN男祭りから12日が経ちました(※取材は5月16日に行われた)。当日は試合後の会見で伊藤選手の落ち込みようが凄く、記者陣も質問しづらい雰囲気がありました。今日は笑顔を見せてくれていますが……、やはり敗戦直後は何も喋ることができなかったですか。
「そうですね。まさか自分が負けるとは思っていなかったので……。何もできん悔しさで頭が真っ白になって、何も喋れんかったです」
――試合中は?
「試合中はセコンドの声も聞こえていました。でも判定を聞いた瞬間、『今後のプランとかどうしよう?』とか思ったら、何も考えられなくなって」
――あれだけ神龍選手の組みで、自身の攻め手が潰されることは予想の範囲内でしたか。
「やっぱり神龍は組みが巧かったけど、自分の作戦ミスもありました。相手が組んでくることは分かっていたし、その対処は練習していたんですよ。RIZINは最近フィニッシュを狙わないとブレイクが速い傾向にある。膠着すれば一度スタンドに戻す。だから自分が下になってもクローズドガードで、相手を抱えるようにすればブレイクが掛かるかなと思って。
それが結局、ブレイク待ちになってしまったんですよね。相手にとって良い形で時間を使わせるような試合になりました」
――試合やレフェリーによって、ブレイクのタイミングにバラつきがあることは確かです。
「他の試合を見とっても、すぐにブレイクが掛かる時もあれば、『ここでブレイクが掛からんの?』という時もあって。だから『僕はツキがなかった』とは思います」
――どの段階で「今日はブレイクにならない」と感じましたか。
「2Rめぐらいから、ですね。相手がフィニッシュには繋がらんけどコツコツとパンチを打ってきていて、そこで『まだブレイクは来んのかぁ』という感じでした」
――ブレイクが掛からないと実感した時点で、自身から展開を変えていくことはできなかったでしょうか。
「切り替えて逃げようかと思ったら、アイツもうまいこと肩固めを狙ってきたり……そこでコントロールされてしまいましたね。ボディトライアングルとか、おたつロックが巧かったです」
――ボディトライアングル、おたつロックで固められても反転まではできる。しかしトップを奪ったり、立ち上がるまでには至りませんでした。
「その一歩先がアイツは得意なので、うまいことコントロールされていました」
――59キロという契約体重は、試合に影響しなかったですか。RIZINフライ級のリミットより2キロほど重いです。
「体重は問題なかったけど、僕のほうが一気に落としていたことは……もっとちゃんとコンディションを整えたほうが、万全の状態でできるとは思います。それとララミー戦と神龍戦では、対策も180度違う。ララミー戦から1カ月で、神龍戦に向けての練習ができる時間も少なかった。でも言い訳になってしまうのが嫌で――記者会見で質問してくださった方、あの時は答えられなくてスミマセン(苦笑)」
――結果論になりますが、やはりララミー戦から1カ月後に神龍選手と戦うというのは、冒険し過ぎかとは思ってしまいます。
「はい。周りからも『やらんで良くない?』とは言われました。でも男祭り、東京ドームでお客さんを盛り上げるためなら――行っちゃうよ、という感じで。東京ドームで神龍戦、そうじゃなかったら試合しなかったです。東京ドームの男祭りに出られるのは限られた選手だけであって。そこで盛り上げんかったら、何のためにファイターをやっているのかなって思いました。特に男祭りを盛り上げて、フライ級GPに注目してもらいたかったんです」
――しかし、神龍選手に敗れた。その時点でGP出場はないと思いましたか。
「自分がやりたかったことを何も出せんかったので、その試合内容があってGPに出ても『どうなの?』と言われると思います。自分としては男祭りで勝ってGPに出る、ということしか考えていませんでした。負けることを想像していなかった。試合直後は喪失感が凄くて……GP出場に関しては、自分からは何とも言えないです」
アイツとは一生分かり合えない。GPに出て、決勝戦で神龍をブッ潰したい
――正直なところ、最初にこのマッチメイクを聞いた時、東京ドームでフライ級GPの1回戦を実施するのかと思いました。征矢貴×ジョン・ドッドソンにしても。
「確かに。征矢さんもドッドソンも、GPに選ばれてもおかしくない選手ですもんね。ヒロヤと篠塚辰樹さんも話題性があったし」
――というのも1カ月のスパンでララミー戦と神龍戦が続けば、たとえ神龍選手に勝ったとしてもダメージや疲労が残ると思います。その状態で、7月開催が噂されるフライ級GP1回戦に万全の状態で臨むことができるのか。プロモーターとしても賭けではあったのでしょう。
「結果的にダメージはないけど、疲労というのは……ファイターが万全の状態で試合に臨めることなんて少ないですからね。7月なら、今からまた自分をつくり直していくことはできます。GPに出られるなら、うまいこと調整しながら、集中して練習していくしかないです」
――改めて、今回の神龍戦は自身のキャリアにとって、どのような試合だったと思いますか。
「捉え方によっては、ララミーのような海外の強豪選手に勝って『ここまでできるんだ』と自信がついた。一方で神龍戦では改善点や課題も見えました。それらを今後の練習に反映させることができれば――伸ばすべき部分は分かっています。だから結果としては、神龍戦もやって良かったと思います。ただ……」
――ただ……、何でしょうか。
「試合後って、『この選手と戦って良かったな』と思う瞬間があるじゃないですか。『ありがとう』という気持ちが出てきたりとか。でも神龍に対しては、そんな気持ちが1ミリも沸いてこないんですよ」
――えっ!?
「アイツとは一生分かり合えないと思います。何かいろいろズレているんですよ。リスペクトしようと思っても、できない。試合が終わって時間が経つにつれて『やっぱりコイツはムカつく。やり返さないと気がすまん』という気持ちが大きくなってきました」
――試合が終わってもノーサイドとはならないですか。
「ならないです。ここで『対戦してくれて、ありがとう。今度YouTubeコラボしよう』とか言っていたら、それこそ寒いじゃないですか。そもそも無理。こうなったらGPに出て、決勝戦で神龍をブッ潰したいですね。そのためにもGP前に、アイツの強さを体感できて良かった。
RIZINのスタッフさんからは『インタビューでGPは出ないとか言い続けると、本当に出場できなくなるよ』と言われました。今はまだ選考中だと思います。もう『出ない』とか言わないのでフライ級GP、よろしくお願いします!」
■RIZIN WS KORE視聴方法(予定)
5月31日(日)
午後2時~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!