【PFL AFRICA2025#01】アフリカ女子の大志、ジュリエット・ウカ「誰だって夢を追いかける権利がある」
【写真】 ファイターとしてはパンチが強く、テイクダウンを切る術を身に着けているウカ(C)MMAPLANET
19日(土・現地時間)、南アフリカのケープタウンはグランドウェスト・アリーナでPFL AFRICA2025#01が開催される。PFL Champions Series02「Cape Town」と共に開かれるPFL AFRICA2025#01ではバンタム級とヘビー級トーナメント準々決勝と、女子ストロー級戦が1回組まれている。
text by Manabu Takashima
その女子戦がナイジェリアのジュリエット・ウカ×シーリー・ニーダーマイヤーの一戦だ。キャリア6勝0敗のウカをインタビューしナイジェリア国内のMMAシーンについて尋ねると、アフリカの女性の現状を訴える返答が続いた。
――ジュリエット、MMAPLANETでは初のナイジェリア在住・ナイジェリア人ファイターのインタビューとなります。しかも女子選手で、ナイジェリアからMMAファイターが生まれるという事実に頭が追いついていないのです。ジュリエットがコンバットスポーツを始めたきっかけは、いつ頃だったのでしょうか。
「もともとボクシング、キックボクシング、テコンドーをやっていてMMAを始めたのは2022年だったわ」
――ナイジェリアでは、普通に女子が格闘技の練習ができる環境が整っているのですか。
「正直、そういう声を挙げることすら簡単ではなかったわ。ただ格闘技というよりも、女子が自分の身を自分で守れるようにならないといけない。正直、アフリカの女性は私のような機会を手にできることはまずなくて。可能性を持った女子選手がたくさんいるけど、その可能性をなかなか伸ばせない」
――なるほどです。そんなジュリエットは、警察官でもあるそうですね。
「そうポリスオフィサーよ。警官とMMA、私のキャリアは揃って危険な仕事ね(笑)。警察官の制服を着ると、MMAを戦う自分でもなくなるの。常に自信を持って人と接しないといけなくて。スマートであり強くないといけない。とにかく自分の課された仕事に、真正面から取り組み進み続けるしかない。MMAとは違った意味で、本当にタフで。でも、MMAをやっていることで、私は他のポリスウーマンとは違う強さを手にすることもできたとも思っているわ。
それに私には運よく、自分がやりたいことができるようサポートしてくれる人達がいて。だからこそ、規律を守って強くなる努力を続けることができたというのもあるわ。そんな私が結果を残すことで『私もできる』と思う女子が出てくるはず。そのためにも私は自分で自分の背中を押し続けてきたの」
――サッカー、陸上競技を見ているとアフリカのアスリートが、どれだけ運動神経に恵まれているのかすぐに理解できます。と同時にMMAを学べる環境、そして成長できる場がナイジェリア国内には存在していたのでしょうか。
「ノー。私がMMAを始めた時は、施設も設備も何もなかったわ。私はテコンドーのジム、ボクシングのジム、色々なスタイルのジムに行って自分でミックスしてきたの。試合に出るようになって少しでも良い練習環境を求めて私のマネージャーが持つチーム、コンゴ民主共和国で練習をするようになった。そこで私たちが持っていなかった知識を得てきたの。
試合が決まっていない時は、もっと自分の強化するために違う環境で練習をしようとバリやプーケットのバンタオMMAに行ったり……バンタオには2023年の10月に1カ月ほど滞在して、何人かの日本人ファイターも見かけたわ」
――まさにナイジェリアMMA界におけるフロンティア・スピリットを持ったパイオニアですね。
「アフリカと一括りにするのではなくて、ナイジェリアという一つの国だけでも本当にポテンシャルが高くて。でも、PFL Africaのような強くなれるプラットフォームがなかった。今、PFL Africaの活動が始まったことで明確な目標を得られるようにあった選手たちは、これまで以上に練習に精を出すようになるに違いない。
もうヨーロッパや米国に行くこともなく、アフリカ内で練習をして試合に出る。強くなれる環境が整い始めた。ここで私がしっかりと結果を残すと、ナイジェリアの選手たちも大志を抱くことができるようになるはず。私はやれるし、その想いがあるから成長できると思っているわ」
――PFL Africa旗揚げ戦でシーリー・ニーダーマイヤーと戦う機会を得られたことについて、どのような想いでいますか。
「凄く光栄なことで、それ以上にハッピーだわ。夢が叶った。PFL Africaは、アフリカで初めてアフリカの選手を世界に送り出す大会になる。ここで戦うファイターは、互いに相手の背中を押すことになるはず。アフリカのファイターが将来、素晴らしい機会を得られることに通じているので。
大きな舞台で戦う準備が、PFL Africaでできる。大学で学ぶためには高校で学ぶ必要があるのと同じことで。PFL Africaは高校の役割を果たす。その先に進む、準備期間ね」
――アフリカでの試合で欧州や中東を経由せずに、北米に進出できるようになったことは大きいですね。
「PFL Africaで勝てば、アフリカ大陸を代表するファイターの地位を手にすることができるようになる。アフリカで挙げた実績で世界に打って出ることができるのは、本当に素晴らしいことよ」
――アフリカのMMAにとって大きな一歩となる大会ですが、ジュリエットの相手は開催地・南アフリカの選手です。現地のファンは、他の国の選手にブーイングを送る気質なのでしょうか。
「会場にいるファンはそうかもしれないわ。でも、そんなことは気にしない。SNSでは私を応援し、中継を視てくれるファンがいるから。ケープタウンのファンがどのような反応をしても、私はベストを尽くし皆に喜んでもらえる試合をするつもりだから。
何よりも私たちの試合は唯一のアフリカ女子同士の試合だし、サッカーや体操競技のような他のスポーツと同じようにMMAも女子が参入できるスポーツだと理解が進むようにベストを尽くす。そしてアフリカの全女性が、機会さえ与えれば何でもできることを世界にアピールしたい。
PFLでは女子フライ級のトーナメントは開かれているけど、ストロー級はまだ行われていないでしょ? ストロー級も陣容が揃えば始まるはず。そこはクロスフィンガー(幸運を狙うというポーズ)ね(笑)。
ナイジェリアで生まれ、ナイジェリアで育った女子でもMMAで世界を相手に戦えることを証明し、この試合の影響を受けたナイジェリアの女の子や女の人が自分がやりたいことに進む勇気を持てるよう力を与えたい。誰だって夢を追いかける権利があるのだから。ナイジェリア以外でできることは、ナイジェリアでできるようになる。そんな未来につなげたい。同時に私に続くファイターのサポートをしたいし、理解者でありたいと思っている」
――それだけの想いを持ってケージに上がるジュリエットの試合を楽しみにしています。
「ありがとう。日本のMMAファンにも私の試合を見てもらって、私たちの想いがどれだけ強いか伝われば嬉しいわ。この想いが、アフリカの女子選手たちの未来を切り開くことになるから。そして、そんな私の想いを日本のファンに伝えてくれて、ありがとう」
■視聴方法(予定)
7月19日(土)
午後11時45分~U-NEXT
■ PFL CS02対戦カード
<Bellator世界ミドル級選手権試合/5分5R>
[王者]ジョニー・エブレン(米国)
[挑戦者] カステロ・ヴァン・スティーニス(オランダ)
<女子フライ級/5分3R>
ダコタ・ディチェバ(英国)
スミコ・イナバ(米国)
<フェザー級/5分3R>
AJ・マッキーJr(米国)
アクメド・マゴメドフ(ロシア)
<ライト級/5分3R>
マカシャリブ・セニュコフ(ロシア)
泉武志(日本)
<ヘビー級/5分3R>
コーリー・アンダーソン(米国)
デニス・ゴルソフ(ロシア)
■PFL Africa2025#01
<PFL Africa2025バンタム級T準々決勝/5分3R>
ンコシ・ンデベレ(南アフリカ)
マフムード・アテフ(エジプト)
<PFL Africa2025ヘビー級T準々決勝/5分3R>
マックスウェル・ジャントゥ・ナナ(カメルーン)
ミキャエル・ゴフウエ(フランス)
<PFL Africa2025バンタム級T準々決勝/5分3R>
シャノン・ヴァン・トンダー(南アフリカ)
ブル・ゴドグウ(コンゴ民主共和国)
<PFL Africa2025ヘビー級T準々決勝/5分3R>
ジャシェル・ティシャ・アワ(カメルーン)
ジャスティン・クラーク(南アフリカ)
<PFL Africa2025バンタム級T準々決勝/5分3R>
アシアシュ・シャタンバ(南アフリカ)
カリーム・ヘニエン(カナダ)
<PFL Africa2025ヘビー級T準々決勝/5分3R>
アブドゥラ・ケイン(セネガル)
フランス・ムランボ(南アフリカ)
<PFL Africa2025バンタム級T準々決勝/5分3R>
エイブラハム・バブリー(英国)
ポリマニュエル・グナゼ(フランス)
<女子ストロー級/5分3R>
ジュリエット・ウカ(ナイジェリア)
シーリー・ニーダーマイヤー(南アフリカ)