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【SUPER RIZIN04】フライ級復帰、GP1回戦の相手はヒロヤ。元谷友貴「何をしとったんやろうって思います」

【写真】7月20日に行われた公開練習で、ヒロヤと並んだ元谷は厳しい表情を見せた(C)MMAPLANET

27日(日)にさいたまスーパーアリーナで開催される超RIZIN04で開幕するRIZIN World GP2025フライ級トーナメント。その1回戦で元谷友貴がヒロヤと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

今回のフライ級GPで最大のサプライズの一つが、元谷の参戦だった。3月の香川大会で井上直樹の持つRIZINバンタム級王座に挑み、敗れた元谷。再起戦の舞台として選んだフライ級で戦うのは2015年12月のフェリペ・エフライン戦以来だ。

翌年4月、アラン・ナシメント戦で計量オーバーした元谷は、そのままドクターストップで試合に臨むことができず。当時保持していたDEEPフライ級のベルトも返上し、バンタム級に転向している。前回のインタビューでは「少しずつバンタム級の体になってきた」と語っていた元谷は、なぜここでフライ級に復帰するのか。そして、その初戦となるヒロヤ戦について訊いた(※取材は7月9日に行われた)。


フライ級に向けて体重を落としてみたら、バンタム級の時と力も変わらないし、体が軽くて調子が良い

――今回、米国から帰国したのは抽選会の直前だったのですか。

「抽選会の数日前ですね。自分はいつも試合の1カ月前ぐらいに帰国して、石川の家に荷物を置いてから、練習の準備をして名古屋に向かいます」

――すると家族と会うのは、本当に年何回かで……。

「試合があると帰国して、その時に数日間いるぐらいです」

――石川にいる期間は、どのように過ごすのでしょうか。

「子供たちが遊びに行きたいという場所に連れていきます。ウチは石川にいる頃から朝から晩まで、行きたいところに連れて行っていました。今でも同じように、朝にココへ行って、夕方にはココへ――と。その時だけはオフで、リラックスできますね」

――それは良かったです。さて、今回のフライ級GPで最大のサプライズは元谷選手の出場でした。

「GPが行われると聞いて、僕のほうから『しっかりフライ級まで体重を落とすので、もし出場できるならお願いします』と伝えていたんです。ただ、出場できるかどうか分からない状態で米国に行って」

――そうだったのですか。井上戦前のインタビューでは「少しずつバンタム級の体になってきた」と言っていたので、ここでフライ級に落とすのかというのが驚きの理由でもあります。

「バンタム級の体になっていたかどうかで言えば――現時点で体重を落としてみたら実際はただ脂肪が乗っていただけで、バンタム級の体は出来上がっていなかったというか(笑)。

3月に負けて、またバンタム級でタイトルマッチまで辿り着くには2~3年かかる。僕ももう若くないし、2~3年先はどうなっているか見えないです。だったら半年で新しいチャンピオンが決まるフライ級のほうが魅力的でした。僕自身も体重は落ちるという感覚がありましたし」

――これは結果論ですが、元谷選手がYouTubeチャンネルで「体重を落とすことができている」という動画を視たあと、改めて井上戦の試合映像を視直すと確かに……。

「そうなんですよ。自分の中で、デカくなったつもりでいました。でもフライ級に向けて体重を落としてみたら、バンタム級の時と力も変わらないし、体が軽くて調子が良い。だから本当に脂肪が乗っていただけでした」

――前回フライ級で戦ったのが約10年前、その時は減量のためにドクターストップに終わりました。とすれば今回フライ級で戦うことに躊躇があって然るべきだとは思います。

「あの時に減量をミスったのも、体重の落とし方を間違えていましたよね。探り探り、いろいろ試していたものが合わなかった、という感じで」

――フライ級時代の元谷選手といえば、かなり過酷な落とし方をしている印象が強かったです。対して脂肪が乗っていただけとはいえバンタム級の体をつくることができていた。さらに今はフライ級リミットまでスッキリ落とすことができている。それは米国に行って技術的な面や練習方法だけでなく、体づくりも大きく変化したのでしょうか。

「体づくりの面はあまり分からないです。ただ、10年前と比べたら――食事やトレーニングに関する知識も増えたし、昔より落としやすくなったと思いますね」

――普段食べるものから変わりましたか。

「そうですね。クリーンなものしか食べていないです。以前フライ級で戦っていた時は、メチャクチャな減量をしていたので、その反動で結構食べていました。試合が終わったら減量からのストレス解放でバカみたいに食って。だから試合が終わると体重もかなり増えていたんですよ。でも今は、この減量だとストレスはないので」

――さらにGPが行われることも、フライ級に戻る要因になったのですね。

「そうです。GPがあって、半年で新しいチャンピオンが決まる。それなら2~3年かかって、どうなるか分からんバンタム級で戦い続けるより、半年でベルトを獲りたいと思いました。3年後なんてもう38~39歳ですから、自分でも想像できないんですよ」

――今はバンタム級にも海外から新しい選手が来ており、また潰し合いで新しいタイトル戦線が構築されていくでしょうし。

「そのあとでタイミングが合えば――というぐらいの気持ちですね。バンタム級で戦うことについては」

――タイトルマッチでの敗戦については、バンタムという階級が要因だった面はありますか。

「いや、それはないですね。あの時はあの時で、僕がバンタム級でつくれる最高のコンディションでした。ただ試合内容として、自分が攻めていれば判定でも勝つことができていたと思うんです。『相手はこう来るやろうな』と考えすぎて攻めて出ないよりも、もっとアタックすれば良かった。本当にそれだけです」

――そう聞くと、躍動感のある動きで、自分からガンガン動いていたフライ級時代が思い起こされます。特に2013年あたり……清水清隆戦、今成正和戦、前田吉朗戦、そして和田竜光選手にリベンジしてDEEPフライ級のベルトを再び巻いた頃とか。

「あの時はそれこそヨーイドンで、何も考えずに動いていましたね。当時は試合が始まった瞬間から全速力で行くという感じで。若さという面では良かったと思います(笑)」

――あれからキャリアを重ねて、技術も戦略も上積みしてきた。そんななか、再びフライ級に落とすことで自分自身に対する期待も大きいですか。

「楽しみですね。体重を落としてみて分かったのは、『本当に重りを背負って戦っていたんだなぁ』と。何をしとったんやろうって思いますよ」

戦績って過去のものだから現在には関係ない。格闘技はその時、対戦相手に勝てばそれで良い

――フライ級GPは当初、元谷選手を含む8人でトーナメントが行われると発表されていました。それが急きょ10人が出場し、準決勝進出者は1回戦の勝者からファン投票で選ばれることになっています。

「僕は別に、10人で良いじゃんって思いました。それも征矢貴選手とホセ・トーレス選手が入ってくれるなら、余計に優勝しがいがあるというか。

公開練習では寒天マンを相手に笑顔を見せていた元谷だったが……(C)MMAPLANET

ファン投票については――まず誰が投票するのかが分かっていないんですよ(笑)。ただ、もともとショッパイ試合をして勝とうなんて思っていませんから。フィニッシュしてもファン投票で落とされるなら、『自分は人気ないんだな』というだけの話で。戦うからにはフィニッシュして勝ち上がりたいです。

だから対戦相手がどう、というわけでもなくて。抽選会でもアリベク・ガジャマトフ選手とヒロヤ選手のどちらを選ぶか、という状況になったじゃないですか。でもガジャマトフ選手って正直、どんな選手か分からないんですよ。そんな分からない相手とよく分からない試合になっても――だからヒロヤ選手を選びました」

――YouTubeチャンネルで元谷選手が「ガジャマトフから逃げた、という声もあった」と言っていて驚きました。そう考える人もいるのか、と。

「言う人は言いますよ。『強いヤツから逃げた』とか……。でも1回戦を勝ち上がることを考えたら、情報が多いヒロヤ選手のほうが研究しがいもあるし、研究できたほうが勝率も上がりますよね。それよりまず抽選会は選びづらいんですよ。『主催者で決めてくれ!』と思っていました。アハハハ」

――ヒロヤ選手の場合、人気だけではなく最近の伸びは大きいです。決して楽ではない。ある意味、楽ではないけど勝ったら一番オイシイ相手ではあります。

「そうですね。抽選会の時は自分もそこまで考えていなかったけど、あとあと考えたら選択は間違っていなかったと思います。

自分もヒロヤ選手のことを低くは見ていないんですよね。負け越してはいるけど、僕の中で負け越しとかは関係ないと思っていて。別に負け続けていても、急に伸びて来る選手もいますし。

戦績って過去のものじゃないですか。だから現在には関係なくて。格闘技はその時、対戦相手に勝てばそれで良いんですから」

――ヒロヤ選手にとっても、元谷選手に勝てば今までのキャリアをひっくり返すことができる。元谷選手こそ、それだけの実績と価値を持っているファイターです。ではヒロヤ選手について、ファイターとしての印象を教えてください。

「1試合1試合、成長している。米国にも行っていて、格闘技に懸けていることは分かりますよね。若さもありますし――若い選手って、1年1年の成長が読めないんですよ」

――最近はテイクダウンから抑え込みまで小技を利かせるようになっています。

「ボコボコにしますよ」と言ったヒロヤに対して元谷は「おう、やってみぃや」と凄みを見せた(C)MMAPLANET

「ヒロヤ選手の中で、何かが繋がったのでしょうね。負けていても、その中で何か繋がって来る瞬間ってあるんですよ。前回の試合から2~3カ月で、別人のように変わることはないと思います。でも少しずつ穴がなくなっている。短期間で繋がることもあるので、確実に強くなっているでしょう。特に最後の試合で勝っている、というのはファイターにとって一番大きいんですよ」

――対して、元谷選手は前回の敗戦から4カ月の間、何が変わりましたか。

「先ほど言ったとおり、前回は自分から出ていかなったのが敗因でした。あれからずっと意識しているのは、まず自分から試合をつくっていくこと。米国でも、自分からペースを取ることを意識して練習してきました」

――ちなみにATTでは、パントージャのUFC世界フライ級王座防衛で盛り上がっていますか。

「あの時はもう僕が帰国していて、現地の状況は分からないです。でもパントージャとは普段から一緒に練習していて、分が気になったことをパントージャに聞いたりしますね。彼のファイトキャンプでもスパーリングの相手を頼まれたり」

――パントージャに何を聞き、どんなこと言われたのでしょうか。

「テクニック的なことですね。僕は気になったことがあれば、すぐに聞くんですよ。スパーが終わったらすぐ『今のどうやったん?』と聞いて、『あぁ、こういうことね』って。それで試合を視ても『こういうことか』って分かりますし。でも内容は秘密です、フフフ」

――なるほど。その内容は、次の試合で見られるか楽しみにしています。

「GPはまず1回戦でしっかり勝ち、もちろん優勝するつもりです。もう不完全燃焼で終わりたくないので、持っているものは全部出し切りたい。調子も良いので、皆さん楽しみにしていてください」

■視聴方法(予定)
7月27日(日)
午後1時00分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

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