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【SUPER RIZIN04】MMA2戦目は芦田崇宏と対決、直樹「拳で新聞紙を破るトレーニングをやっています」

【写真】とてつもなく興味深い打撃論を持つ直樹(C)MMAPLANET

27日(日)にさいたまスーパーアリーナで開催される超RIZIN04で、直樹が芦田崇宏と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

今年5月、MMAデビュー戦で奥山貴大をKOした直樹。早くもMMA2戦目が決定し、元DEEPフェザー級王者の芦田を対戦することに。「ボクシンググローブよりMMAグローブのほうが向いている」と語る直樹が、その強烈なパンチの秘訣を語ってくれた。


プロのファイターなら、試合があると言われたらすぐリミットに落とせるような状態に

――大会の18日前、急きょMMA2戦目が発表されました。

「そうですね。結構、突然決まりましたけど……、僕は5月の試合が終わったあとも『いつでも行けます!』とは伝えていたんです」

――いつでも戦えるように調整していたのですね。

「調整どうこうは特にないです。プロのファイターなら、試合があると言われたらすぐリミットに落とせるような状態にしておかないとダメだと思うので。今回は68キロ契約のキャッチウェイトを受けました。僕が青コーナー側だし、そんなに偉そうなことも言えない。ただ普段から、2週間あればフェザー級のリミットに落とせるようにしておかないと」

――練習内容も特に変わることはないのですか。

「試合前だからどう、試合がないから云々というのは、正直考えていないですね。だから試合が決まったからって、何か特別な調整をすることもないです」

――そのスタイルはキックボクシング時代から変わらないのでしょうか。

「正直、若い時は試合の時にガッツリガッツリ追い込んで、試合がない時は緩くして――ということはありました。でも年齢を重ねるにつれて『ただガッツリ練習して疲れたら強くなる、というわけじゃない』と気づいて。

疲れるまで練習したら『やったー!!』と強くなった気持ちになるけど、そういうことじゃない。決まった試合に向けて急に10ラウンドのミットをやった、走り込みした。そんなことより普段から自分をつくっていれば、別に『明日試合だよ』と言われても、『あぁそうですか』って戦うことはできます」

――確かに直樹選手の場合、奥山戦やキック時代の試合映像を視ても、対戦相手によって細かく戦い方を変えるタイプではないように感じます。

「MMAでは対戦相手によって何か変えるほど技術がないんですけどね(笑)。まぁ別に引き出しが多いわけじゃないので、俺は俺のやりたいことをやるだけです」

――とはいえ、MMAデビュー戦は見事なKO勝ちでした。

「ありがとうございます。なかなか左ジャブであの倒し方は見ることはできないと思います。僕は人よりパワーがあるわけじゃないし、人よりスピードがあるわけでもない。自分のナックルを相手の急所に当てる。それだけで効かせる自信があるので、ボクシンググローブよりもMMAグローブのほうがやりやすいです」

拳が面で当たると新聞紙は絶対に破けない。でも点で当たると穴が開く

――……今、リモート画面越しにチラッと見えましたが、ナックルが凄いですね。

「えっ、本当ですか? 他の人と違いますか」

――人差し指と中指のナックルの盛り上がり方を見ると、本当にしっかりとナックルを当てていることが分かります。

「この2つだけが膨らんでいるんですよ。薬指と小指のナックルは何もないです。言われてみれば、確かに変な形ですよね」

――いえいえ、変な形とは言っていません(笑)。まさに点で相手を捕らえている証拠です。

「僕、独特のトレーニングをやっていて――拳で新聞紙を破るトレーニングなんですけど」

――拳で新聞紙を破るトレーニングとは?

「新聞紙を上から吊るすか、誰かに持ってもらって。ヒラヒラの状態の新聞紙にパーンと拳を当てて、破くことができるんです」

――それは凄い!

「普通は拳が当たるとヒラヒラって泳いじゃうけど、僕は破くというか穴を開けることができるんですよね。拳が面で当たると新聞紙は絶対に破けない。でも点で当たると穴が開く。

たとえば爪楊枝で新聞紙を突くと、穴が開くじゃないですか。同じように拳でも点で当てれば、真ん中に小さく穴が開きます。試合では、この点をいかに相手のアゴに当てるか。それだけで人間って倒れちゃうので、そこまで力は必要ないというか」

――点で当てているので、そこに力が集約されている。しかも上下を固定していない紙を破るためには、まさに貫かないといけない。いやぁ、凄く武道的なお話です。王貞治さんが素振りの一つとして、天井から吊るした紙を日本刀で斬っていたシーンは有名ですね。

「それは初めて聞きました。全く一緒です。刀でもちゃんと振らないと紙に巻き込まれちゃいますよね。拳でも引っかかれば破けるけど、下のほうまでビリビリに破けてしまう。それだと全く意味はなくて。真ん中に穴が開くのが良いパンチなんです」

――はい。

「この練習だと怪我もしないですから。所属しているFIGHTER’S FLOWで、試合でKO負けしている人から『打撃を教えてください』と言われた時があって。この練習方法ならダメージも溜まらないし、当てる練習になるから良いと伝えました」

――MMAグローブでしっかりナックルを当てる練習をしていると、拳を負傷するリスクも下げることができるようですね。

「僕はナックルが当たる感触を確かめるために、サンドバッグも素手で打ちますよ」

――おぉっ!!

「種類にもよるけど、小さいサンドバッグだと僕が打ったあとは形状が変わっていますから。ナックル2つ分へこんでいて。以前僕がジムで練習した翌日に、キッズクラスに来た子供たちがサンドバッグを見て『なぜこうなっているの!?』と驚いていたらしいです。僕が打ったあとは24時間、サンドバッグの形が違うって言われました(笑)」

――それだけ残っているものなのですか……。ということは当然、人間であれば芯まで威力が届き、しかもダメージが残る。

「ミット打ちでも、多くは受けている手の真ん中の部分が痛くなるんですよ。でも僕のパンチは、アゴの位置へ拳を巻き込むようにしてナックルを当てるから、ミットでも掌底の部分に当たる。だからミットを受けた人は手首の部分が痛くなるらしいです」

――点で打つからこそ、威力が突き抜けているのでしょう。

「元ボクシング世界王者の山中慎介さんが、そういう打ち方をしていて僕も参考にしました。山中さんのトレーナーだった大和心さんが、ミットを受ける時は手首にテーピングを巻いているのを見たことがあります」

僕自身、自分のパンチがどれだけヤバイのか分かっていないんです

――なるほど……。巻き込むように当てるとは?

「拳ってギュッと強く握ると、ナックルが上に向いてしまいます。緩く巻き込むようにすると、しっかりナックルが当たる。だから先ほど教えてもらった王さんのエピソードのように、僕のパンチも刀で斬るように当てるというか。この打ち方はボクシンググローブだと、やりづらいんですよね。MMAグローブとか、グローブが小さくなればなるほどやりやすい。

たぶん他の選手とは打撃の質が違うと思いますよ。見た目はあまりスピードがないから、周りから『なぜ当たるの? なぜ相手は避けられないの?』とか言われますけどね。だけど実際に向かい合った選手は『超速い。マジで見えない』と言っています」

――それは江川卓さんのピッチングではないですか。年代的に古い話ばかりで申し訳ありませんが(苦笑)。ともかく手元で球が伸びるように感じるという。

「おぉ、藤川球児さんの投げる球もそうだったらしいですね。要は見えている人間に10割の力で打つより、見えていない人間に5割の力で打つほうが効きますから。そういうイメージでパンチを打っています。僕自身、自分のパンチがどれだけヤバイのか分かっていないんです。一発当たっただけで芦田選手はビックリすると思いますよ」

■視聴方法(予定)
7月27日(日)
午後1時00分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

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