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【Pancrase355】井村塁と対戦。爆発 高城ワールド!!「技術本を読んで格闘技を習得した気になっていた」

【写真】勝村代表から独特という風に聞かされていたが、ここまでとは――(C)TAKUMI NAKAMURA

27日(日)に東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPANCRASE 355にて、髙城光弘が井村塁と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

昨年7月のオタベク・ラジャボフに一本負けして以来、約1年ぶりの復帰戦となる髙城。今大会ではRoad to UFC帰りの井村とのバンタム級トップランカー対決に挑む。

今回MMAPLANET初登場の高城からは「格闘技をやったことがないのに技術本を読んでその格闘技を習得した気になっていた」、「自分は格闘技をやっていないだけで、いざ本気でやったらすぐチャンピオンになれると思っていた」など斜め上からのエピソードが続出。髙城ワールド全開のインタビューをお届けしよう。


格闘技はヤンキーみたいな人たちがやるもんだと思っていたんですよ(笑)

――昨年7月のオタベク・ラジャボフに一本負けして以来、約1年ぶりの試合が決まりました。試合間隔が空いた理由は何だったのですか。

「自分はあまり身体が強くなくて(苦笑)、去年の冬に体調を崩して病気しちゃったんですよ。それで今年の春くらいにようやく練習を再開できて、夏に試合をしたいということを伝えていて、それで結果的に1年近く空いちゃった感じですね」

――試合や練習できないことにストレスはなかったですか。

「めっちゃありましたけど、そこはしょうがないかなと。負けたままでは終われないと思って練習してきました」

――髙城選手はMMAPLANET初登場ということで、格闘技を始めたきっかけから聞かせてください。

「格闘技を始めた理由はたくさんあるんですけど、一番はUFCを見て自分も格闘技をやろうと思ったのがきっかけですね。あとはエディ・ブラボーも好きで、当時エディがメタモリスでホイラー・グレイシーとやった時にハーフガードからガンガン攻めているのがかっこよくて、エディの教則本を本屋で買ったんですよ。ただいくら技術本を読んでも、エディの技術が理解できなくてジムに入りました」

――ジムに入る前から海外の格闘技が好きだったのですか。

「はい。自分が小学生の頃はボクシングの亀田兄弟とかが流行っていて、言い方はあれですけど……格闘技はああいうヤンキーみたいな人たちがやるもんだと思っていたんですよ(笑)。だからテレビで格闘技をやっていても全く見ていませんでした。それからしばらくして、漫画とかの影響で格闘技に興味を持つようになって、それでUFCとか海外の試合を見るようになったんです。

もう時効だから言っていいと思うんですけど、当時はUFC FIGHT PASSもなかったから違法動画を探して見たり(笑)、それでも動画が見つからない時はそれこそMMAPLANETみたいな速報サイトや観戦ブログの記事を読んでいましたね。文章で補完していた感じです」

――格闘技はやったことがないけれど格闘技ファンという立場だったのですね。スポーツ経験はあったんですか。

「最初に話したように自分は体が弱かったんで、スポーツも一切やってこなかったんですよ。しかも格闘技=野蛮みたいなイメージを持っていたんで、なおさら格闘技をやるなんて思ってもいなかったです」

――少し話を整理すると、格闘技経験がないにも関わらず、エディ・ブラボーの技術本を買って読んでいたのですか。

「そうですね。自分、もともと読書が好きなので」

――ただ技術本や教則本は実演写真が並んでいて、経験者じゃないと動きや内容をイメージしづらいですよね。

「だから逆に技術本を読んで『こういうことか!』みたいな感じで、その技術や格闘技を習得した気になっていた感じですね(笑)。一時期武術系の本にハマっていたこともあったのですが、武術系の本はそこまで事細かく技術解説しているものが少ないから、ざっくりとニュアンスを掴みやすいんです。それで技術本を読んだ時点でその武術を習得したと思っていました(笑)」

――エディ・ブラボーの技術本はかなり複雑だったのですか。

「そうなんです。エディのテクニックだけはどれだけ技術本を読んでも何をどうやっているのか分からなかったんですよ。俺は様々な武術を習得してきたはずなのに(笑)。それでこれはもう実際にやるしかないと思いましたね」

――他の選手では聞けないエピソードが満載ですね(笑)。そうはいっても実際に格闘技をやるという選択は決心がいることだったのではないですか。

「なんだろう…スポーツや運動をやったことがない、見るだけのヤツ特有の傲慢さってあるじゃないですか?」

――傲慢さ…ですか。

「俺は格闘技をやっていないだけで、いざ本気でやったらすぐ出来ちゃうよという傲慢さです(笑)」

――ハハハハハハ。

「ようはスポーツすらやったことがないから何も分かってないんですよ。逆に俺がやったらすぐ世界チャンピオンになっちゃうよと思ってジムに入りましたね(笑)」

田中選手がジムを離れていて、いつまで経っても堀口選手と憂流迦選手が来ない

――グランドスラムを選んだのはラバーガードなどエディ・ブラボーの動きを得意にしている勝村さんが代表のジムだったからですか。

「いえ、これもMMAPLANETがきっかけなんですけど、当時住んでいた家から一番近かったのがリオン武さんのジムさんだったんですよ。だから最初はリオンさんのジムに行くつもりだったんです。そしたらちょうどその時期にMMAPLANETに堀口恭司選手、佐々木憂流迦選手、田中路教選手がグランドスラムで練習している記事が載っていて。UFC参戦間近の3人が一緒に練習するなんて、めちゃくちゃすごいジムじゃん!と思って。もし俺がそこに入ったらチャンピオン間違いなしだなと思って、グランドスラムに入会しました(笑)」

――先ほどからエピソードが斜め上過ぎて面白すぎますね(笑)。

「ただ俺が入会する直前に田中選手がジムを離れていて、いつまで経っても堀口選手と憂流迦選手がジムに来ないんですよ」

――堀口選手と憂流迦選手は、雑誌の企画で特別にあの時にグランドスラムに集まっただけで一緒に練習をするということはほとんどなかったと思います。

「当時はそういうことも分からないじゃないですか。だからその3人がいるからグランドスラムに入ったのに誰もいないじゃん!と思って練習していましたね(笑)。いざジムに入ってからは(伊藤)盛一郎さんに面倒を見てもらえたんでよかったでんですけどね」

――もし最初にリオン選手のジムに行っていたら全く違う格闘技人生を歩んでいたでしょうね。

「だからグランドスラムに入ったあと、勝村さんがエディ・ブラボーと親交があると聞いた時は超ラッキーだと思いました。遠回りだと思っていた道が結果的には一番の近道だったみたいな(笑)」

――ジムに入った時点でプロを目指していたのですか。

「そのつもりだったんですけど、入会する時に書くアンケートでは『プロ志望』のところじゃなくて『試合に出てみたい』のところに丸をしました。自信があったとは言え、一応僕も日本で生まれ育って本音と建前の文化は理解しているので」

――そこは建前を優先したんですね(笑)。

「ただ一つミスをしちゃって、好きな格闘家の欄にエディ・ブラボーとトニー・ファーガソンって書いちゃったんですよ。それでスタッフの間ではプロ志望でもないのにやたら格闘技に詳しいおかしいヤツが入会してきたとなっていたみたいです(笑)」

――デビューするまでのエピソードが面白すぎる高城選手ですが(笑)、プロデビューしてからのキャリアを振り返っていかがですか。

「デビュー当初は試合するたびに上手くいかないもんだなと思ってやっていましたね。(2017年の)ネオブラッド・トーナメントも決勝で負けちゃいましたし、自分では成長しているはずだと思っていても、迷いながらやっていた部分がありました。

でも最近はようやく格闘技のことが分かってきたというか、この練習を続けていれば自分のレベルを上げられるというのを少しは感じるようになりました。格闘技をやる前はUFCの試合レポートを読んだだけで『この選手はこうすべきだ』や『この試合はこうすれば勝てていた』って、すべてを分かったつもりでいたんですよ。カーロス・コンディットはテイクダウンされると持ち味が出ないからレスリングを練習しないとダメだよな、とか(笑)」

――試合も見ていないのに(笑)。

「そういう感じで格闘技を見ていたんですけど、実際に自分がやっていくうちに格闘技の奥深さが分かってきましたね」

――前回のラジャボフ戦が初の国際戦で、あの試合を経験して気付いたこともありましたか。

「あの負けで学べたものがたくさんあったなと思います。自分が試合に勝っていた時から『俺のファイトスタイル的に負けるとしたら、こういうタイプに負けるんだろうな…』と思っていたのがラジャボフのようなタイプだったんです。実際にラジャボフとやってみて、こういう相手と戦う時の自分の武器が欠けていたなと思いました。あの負けをきっかけに自分が苦手なタイプにどうアプローチすればいいかの指針を得ることが出来たと思うし、ラジャボフ戦以降、練習できない時期もありましたけど、前回負けてから取り組んできた成果を早く試合で出したいし、絶好の相手を当ててもらって燃えています」

タイトルマッチの前哨戦だと思っています。それに相応しい試合と勝ち方を見せたいですね

――対戦相手の井村選手の印象は?

「ずっとバンタム級のトップにいる選手で寝技ももちろん強いし、打撃も意外と強くて光栄な相手だと思っています。全力をぶつけたいと思います」

――井村選手は今年のRoad to UFCにも出場していて、髙城選手にとっては次のチャンスにもつながる試合だと思います。その井村選手を相手に、今後のためにもどのような戦いをしたいと考えていますか。

「自分はパンクラスでベルトを獲って世界と勝負していきたいと思っているので、井村選手みたいに背がデカく、リーチがあってフィニッシュ力もある相手を乗り越えられるところを見せたいです」

――記者会見ではこの試合に勝ってタイトルにつながる試合をしたいというアピールもありました。

「井村選手というトップランカーと試合させてもらえることになって、バンタム級はチャンピオンがいなくて空位なので、この試合は勝手にタイトルマッチの前哨戦だと思っています。それに相応しい試合と勝ち方を見せたいですね」

――今はパンクラスのベルトが直近の目標だと思いますが、格闘家としての目標も聞かせてもらえますか。

「やっぱり自分はUFCや海外の試合がきっかけで格闘技を始めたので、いずれは海外で戦える選手になりたいです」

■視聴方法(予定)
7月27日(日)
午後1時15分~ U-NEXT

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