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【SUPER RIZIN04】伊藤裕樹戦へ、ズールー「伊藤を眠らせて、フフフ。東京の街を散策したい」

【写真】こんな笑顔で、まるで歌でも歌っているようなリズムの英語で、あんな言葉を吐かれてしまうと…… (C)MMAPLANET

27日(日)、さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで超RIZIN04が開催される。国内MMA大会の最高峰で戦いの幕が切って落とされるRIZIN WORLD GP2025フライ級トーナメント。その1回戦でエンカジムーロ・ズールーが伊藤裕樹と戦う。
Text by Manabu Takashima

1日に実施されたトーナメント抽選会で1番くじを引き、3番の伊藤が対戦相手に名乗りを挙げた。一気に戦いモードに空気が変わった瞬間、ズールーは何を想ったのか。

当然、勝利を目指してGPに参加するズールー。そんな彼が10年前の1カ月半を想い、トーナメント出場選手としてはある意味、あってはならぬ言葉を口にした。

「このトーナメントで優勝してアレッシャンドリ・パントージャと戦うことができるなら、ヒロこそがその座を手にすることが相応しい男だ」――フライ級を創ってきた漢たちの想いに胸が震えた……。


堀口には勝てなかった。でもベストは尽くした

――ダウンを着ていますね。今、ケープタウンは何度ぐらいなのでしょうか。

「今日は19度かな。最低気温は10度ぐらいになるんだ。とても寒いよ」

――日本とは15度ほど違いますね。ともあれ、あと2週間強でフライ級トーナメント初戦を迎えます(※取材は10日に行われた)。今の気持ちを教えてください。

「この画面で伝わるかな? 本当に調子が良くて、力が漲っている。ワクワクしているし、こんな機会を与えてくれたことに感謝している。なんだか、気持ちとしては10年前にTUFに挑んだ時のような気分だ。様々な大陸から、優れたファイターが参加する。大きな会場でトーナメント戦が行われるという違いはあるけど、本当に最高のチャンスが巡ってきたと思っている」

――昨年の大晦日に堀口恭司選手の持つRIZINフライ級王座に挑戦して判定負け。あれから7カ月、今回も大きなチャンスが与えられたということですね。

「ホリグチには勝てなかった。でもベストは尽くした。ホリグチはずっと抑え込んできて。フフフ。退屈な試合で、勝利を手にした。まぁ彼は正しい判断をしたんだと思う。スタンドに戻ることができなかった僕が、彼の勝利に何かを言うことはできない。何より、本当に良い選手だったから。ただ、僕はバチバチの試合がしたかったんだ。フフフ。それが全てだ。

ホリグチとの試合後も、ハードトレーニングを課してきた。特にレスリングに力を入れてきたよ。同様に打撃、ストレングス&コンディショニングも必死に取り組んだ。だから、絶対にGPには出場したかったんだ。結果、イトーと準々決勝で戦うことも決まった。この調子の良さを維持して、日本で戦いたいと思っている。

そして前回は試合の次の日に南アフリカに戻らないといけなかったけど、今回は2日ほど大会後も日本に滞在したいと思っている。本当に素晴らしい時を過ごしたから、もっと日本を知りたいんだ。イトーを眠らせて、フフフ。東京の街を散策したいと思っている。イトーのことが個人的に嫌いだとか、そういうことは一切ないよ。これはビジネスなんだ。殴って失神させることが許されているビジネスだ。だから、イトーには申し訳ないけど、眠ってもらって僕は日本の日々をできるだけエンジョイしたい」

――伊藤選手と対戦が決まった抽選会ですが、ズールーは1番を引いて、第3試合の青コーナーを選びました。あのスポットを選んだのはなぜですか。

「ただの直感だよ。相手を選ぶこともできなくて、選ぶことができるのはコーナーだけだった。RIZINでの過去2試合とも青コーナーだったから、少しでも知っている状態で試合に臨もうと思って青コーナーにしたんだ。

第3試合にしたのは、まず第1試合は嫌だった。最後も避けたい。真ん中が一番戦いやすいかと思ったからだよ」

――伊藤選手が、真っ先にズールーとの試合を望んだ時にはどう思いましたか。

「ストライカーだから、僕と戦いたいのかって考えていた」

僕はヒロにもう一度パントージャと戦ってほしい

――ホセ・トーレスの横も空いていたけど、ズールーを選びましたね。

「イトーもテイクダウンから抑えられるような試合にしたくなかったのだろう。まぁ、僕からすると伊藤でなくても良かった。彼が僕を選んだに過ぎない」

――その伊藤選手の印象を教えてください。

「何試合がチェックしたけど、打撃が強い良いファイターだよ。でも、打撃に関しては僕のレベルには及ばない。だから言っているんだよ、僕は彼を眠らせると。そして、トーナメント制覇に勢いをつけるつもりだ。

イトーはこれまで戦って来た多くのファイターがそうだったように特別な相手ではなく、僕が勝つべき一人の対戦相手に過ぎない。

それにしても、あの抽選はトーナメントをより興味深いモノにしたよね。何が起こるか分からないし、自分が戦いたい相手を選ぶことができるなんて本当に面白いよ。しかも、準決勝に進めるのかは投票で決まるって……聞いたこともない。ファンはつまらない試合を排除できるから、最高だよ。

ただトーレスは1回戦でヒロとは戦いたくなかったはずだ。フフフ。でもヒロがホセ・トーレスを選ぶのは、分かる。トップファイターを倒して、今もUFCに行けるなら行きたいと思っているんじゃないかな。

今は一回戦に集中すべきだから、本来は僕がこういうことを言うのはおかしいけど……。でも準決勝&決勝と勝ち上がってGPで優勝した時のことを考えると、『このトーナメントで優勝してアレッシャンドリ・パントージャと戦うことができるなら、ヒロこそがその座を手にすることが相応しい男だ』って思ってしまうんだよ。

ヒロはTUFでパントージャに勝っている。でもUFCはヒロと契約しなかった。ちょっとアンフェアだよ。ヒロは本当に素晴らしいヤツで。こんなこと言ったらダメなんだけど、僕はヒロにもう一度パントージャと戦ってほしい。

このトーナメントに勝ってパントージャに戦う権利があるのはヒロで。もし彼じゃないなら、僕だ。僕もパントージャと一緒に練習をして、一緒にご飯を創って食べた仲だ。パントージャに関して、何か想うところがあるってことじゃないよ。彼も本当に良いヤツだから」

――ビジネスと言いつつも、扇久保選手との友情が凄く伝わってきます。ただし、このGPで優勝するには扇久保選手と戦うこともある。それはズールーにとって、リベンジ戦にもなります。

「これはビジネスだ。それでもヒロとトーナメントで戦うなら、ファイナルでないと……という気持ちはある。そこでヒロに勝てたなら、僕は『パントージャと戦わせてほしい』と口にする。僕はこのGPで優勝して、パントージャと戦いたい。ただし、ヒロにリベンジしたいとかそういう気持ちは一切ない。パントージャと同様にヒロも、TUFのファイターズハウスで一緒に生活をしてきた仲間なんだ。一緒に飯を食って、練習も協力しあっていた。だから、ビジネスなんだよ。僕がヒロと戦うのは。僕は戦って生活をしているわけだから」

――ファイターとして当然の話で。同時にそのTUF24を毎週チェックしてきた者としては、鳥肌モノの言葉でした。「扇久保×ズールーII」があるのか。いずれにしても、まずは伊藤選手との試合です。ズールーはKOだけでなく、実は一本勝ちも多い。それでも投票があるので、伊藤選手とはスタンドでやりあうという気持ちですか。

「まぁ、MMAだからどうなるのかは分からない。でも、ファンに楽しんでもらいたいから彼を眠らせるよ。『あの南アフリカの選手、凄かったね』って、ファンに言ってもらえるような試合がしたい。打撃で戦うことが好きだし、そういう試合の方が楽しめる。MMAだからレスリングも柔術も欠かせない。それがデキないと勝てない。でも僕は生粋のストライカーだ。打撃で戦うよ

日本のファンは、もう既に僕がどういうファイターが知っているはずだ。イトーとの試合もエキサイティングで、爆発力のある試合を見せたい。そして彼を流血の海に沈める。テイクダウンからホールディングダウンするような試合でなく、フィニッシュを狙うよ」

全力で南アフリカの強さを見せる

――押忍。ところで、ズールーがRIZINで戦う1週間前にケープタウンでPFLが開催されます。母国のMMA界にとってマイルストーンとなるイベントが行なわれることをどのように思っていますか。

「PFLが南アフリカにやってくることは、あの国のMMA界にとって一大事だ。どれだけ南アフリカのMMA社会が可能性を秘めているのか明らかになるだろう。それとは別に、僕のチームメイトの1人、ジャスティン・クラークもPFL Africaのトーナメントに出るから凄く楽しみなんだ(※ヘビー級トーナメント1回戦を勝利)。アフリカの選手同士の対戦で、日本で戦う準備となる試合を経験できる。そういう試合がケープタウンで組まれること自体が信じられないよ。

ドリキュス・デュプレッシー、キャメロン・サーイマンがUFCで戦い、僕がRIZINフライ級GPで戦う。そういう影響を受けている若い人が増えるはず。南アフリカのMMAは、凄い勢いで成長していくに違いない」

――そのパワーをズールーが日本で見せることを期待しています。

「もちろん。全力で南アフリカの強さを見せる。そして僕が活躍することで、RIZINが他の南アフリカの選手にチャンスを与えてくれるようになることを願っている。母国の若い選手がRIZINのような団体で戦えるようになることは、僕にとっても何よりも嬉しいことだから。そのために27日は、いつものようにエキサイティングな試合をすることを約束するよ」


■視聴方法(予定)
7月27日(日)
午後1時00分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

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