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【Pancrase346】杉山しずかの超挑戦を受ける、重田ホノカ「ハートの強さで、自分は負けないです」

【写真】昨日の計量は問題なく、笑顔を見せてクリア。この笑顔の裏、色々な想いと覚悟を隠している(C)MMAPLANET

本日21日(日)、東京都の立川ステージガーデンで開催されるPancrase346で、フライ級QOP重田ホノカが杉山しずかの挑戦を受ける。
Text by Manabu Takashima

3月に大ベテラン端貴代を破り、デビューから11月で王座戴冠。トーピング検査で陽性となり、出場停止処分を受けた重田。そこも踏まえて5日の調印式及び記者会見前にインタビューを行うと──重田からオラオラはキャラで、自分の素ではなかったと涙の告白があった。


強気の言動とか、もうあのキャラに疲れちゃって……

──タイトル初防衛戦の前に、まず3月31日に王座奪取がなった試合で端貴代選手と共にエフェドリンの陽性反応が出た件について話を伺わせてもらえますか。

「ハイ」

──端選手は風邪薬、重田選手は漢方薬を服用していた。ただし試合結果は変わらずとタイトルはそのままで、重田選手は100日間のサスペンションとファイトマネーの20パーセント返却に。サスペンション明けの1週間後に防衛戦、ファイトマネーの一部返却以外は事実上のお咎めなしという形です。

「ドーピング=ステロイドという印象でした。お医者さんか漢方薬を処方されて、漢方だし大丈夫なんだと思っていました」

──自然の生薬という説明があると、そのように理解するのは重田選手に限らず多いと思います。生薬である麻黄の成分にエフェドリン、つまりは中枢神経・交感神経系に対して賦活作用がある。つまりは興奮剤の類ですよね。

「ハイ……それを分かっていなかったです」

──使用上の注意にも実は「精神興奮」という交感神経系への副作用の可能性が明示されています。田中路教選手が過去に花粉症を抑えるために漢方薬を服用して、UFCからサスペンションを食らったこともありました。でも重田選手からすると、10歳の時の話なんですよね。チームメイトとは、そのような話をすることはなかったのでしょうか。パンクラスはタイトル戦ではドーピングテストがある状況でも。

「私の方が漢方は大丈夫だと思っていたので、ジムで話すこと自体がなかったです。家族は当然、漢方薬を摂っていることを知っていたのですが、その禁止という意識がなくて……。パンクラスにも飲んでいる薬を伝えるのですが、そこには市販薬となっていたので、私は処方してもらったから書かなかったんです」

──禁止成分が入っているわけないという想いがありますしね。チーム全体で勉強になったと思います。

「今回は服用しているモノ全て、期間と場所と量まで事細かに報告しました」

──ここまで良くも悪くも天真爛漫、SNSでの活動にしても奔放だった重田選手も、色々と勉強になった。それで一件落着ということでしょうか(笑)。

「今回の件でというか……強気の言動とか、もうあのキャラに疲れちゃって……」

──キャラ?  あの言動は作っていたのですか。

「もうキャラを続けるのに疲れて、煽りVでも素がでちゃって……。涙を見せちゃったり、でも逆に楽になりました。デビューから負け知らずで、ここまでやってきた。そこ自体がイケイケの印象を与えていたし、そのキャラのままで行こうと思っていたんですけど……疲れちゃって……陰で泣いていることの方が多くなって。

今では練習でも泣いています(笑)。ボクシングの練習に行っても、泣いてばかりで。でも、それで楽になりました」

──オラオラが一転、泣き虫になって練習面に影響が出てしまっていませんか。

「もう、辞めたいって(笑)。での前から毎回、試合が決まってから練習で追い込まれると『このあとはめっちゃ休む』とか『早く辞める』とか言っていて、情緒不安定になっていました。それが(浅倉)カンナさんに、『ありのままで良いんだよ』と言ってもらえて。『泣きたかったら、泣いて良い。でも試合が決れば、やらなきゃ。それはもうしょうがないんだよ』って。じゃぁ、泣きキャラでも良いかなって」

──いうとデビューして11カ月でパンクラスの頂点に立ったわけですし、色々な変化があって然りだと思います。4戦目でチャンピオンになった。そのなかで杉山選手が挑戦者として、登場してきたことに関してはどのように思いましたか。

「やるしかないやって……。前の試合前、会見の時からやると思っていたし。パンクラス的にも、それが面白いから。『やるよね』、『そうだよね』って」

高本選手が一番強かったです

──ではMMAファイターとして杉山選手の印象は?

「杉山選手は基本的にMMAが綺麗にできるタイプの選手ですよね。左のノーモーションのパンチ……サウスポーもオーソもデキる。でもサウスポーの方が多くて、ノーモーションとワンテンポ遅らせてのフック。近距離でのハイキック、離れ際のハイキックも上手いです。

ただテイクダウンに関しては、レスラーのような綺麗な入り方はできないです。自分の方が身長も低いし、入りにくいかと思います。そんな感じですけど、前回の試合は久しぶりの試合だったからか固かった。でも次の試合では感覚を取り戻しているかもしれないし、フィジカルも組んで見ないと分からない。だから、杉山選手云々でなくて自分のやりたいことをやろうって思っています」

──そんな杉山選手に対して、重田選手のストロングポイントはどこだと考えていますか。

「杉山選手の方が経験があって、スタンドでもある程度できます。ただ折れない心は自分の方が持っていると思います。ハートの強さが自分の武器です。私は気持ちで戦うタイプなので。試合を見てもらうと分かってもらえると思うんですけど、フィニッシュへの技がたくさんあるわけじゃないんです(涙声に)。けど……」

──えっ、ここって泣くところなのですか……(汗)。競り合った時には負けない強さは持っている。そこが杉山選手との試合で武器になると。

「競り合いになるとハートの強さで、自分は負けないです」

──気持ちの勝負になる前に、技術の勝負ではどのように考えていますか。

「ハッキリ言って、技術的には自分の強味が何か分かっていないです。ただ杉山選手は似たタイプだと思っています。立ちも寝技もどっちもやる──みたいな。でもスクランブルは負けないですね。体の動かし方とか、一瞬の判断からの動きは自分の方が長けていると思います。だからスクランブルに持ち込んで、競り勝ってバックに回るというのは、自分のなかで組み立てています」

──ところで過去4戦の対戦相手、誰が一番手強かったですか。

「デビュー戦で戦った高本(千代)選手です。どうしてですか?」

──この3年ほど、日本の女子MMAレベルは急速に上がったように感じています。それはこの間にデビューした選手達は明確にMMAを戦う目標があり、基礎を身に着けてデビューしている。結果、自力があって数年にさかのぼるキャリアの差を埋めることができているからだと考えています。

「あぁ……。高本選手が一番強かったです。高本選手こそ、下手をするとそこら辺の少しキャリアのある人に全然勝っちゃうんじゃないかと思います。最後にパンチを貰ってカットし、縫っていますし。あれが2Rだと、私はTKO負けしていました。

ただ世代とかは気にしていないです。世代交代を強く意識することもないし。選手一人ひとりのことは尊敬していて、当てられた選手に勝つことに集中しています」

──そんななか、今後に関してですが。国内の女子フライ級は相当に層が薄いです。キャリアップを狙うとなると、海外も視野に入れないといけないかと思うのですが、その辺りはどのように考えていますか。

「自分が憧れているのは、RIZINのベルトです。RIZINがきっかけMMAを始めましたし。ただ盛り上がっているのは49キロで。同時にフライ級は適正階級ではないので今回の試合が終わったら、階級を下げて強い選手と……戦って……いきたいです」

──なぜ、そこで涙が……。

「泣いてないです(笑)。今は泣いてないです」

──ではストロー級、スーパーアトム級に落としていくと。

「ハイ。今回が最後のフライ級なので、しっかりと勝ちたいです」

──そして、RIZINに殴りこむと。

「先のことは今回の試合が終わってから、考えます」

■視聴方法(予定)
7月21日(日)
午後1時45分~U-NEXT

■Pancrase346計量結果

<フライ級KOP選手権試合/5分5R>
[王者] 伊藤盛一郎:56.65キロ
[挑戦者] ムハンマド・サロハイディノフ:56.55キロ

<フライ級QOP選手権試合/5分5R>
[王者] 重田ホノカ:55.95キロ
[挑戦者] 杉山しずか:56.45キロ

<ライト級/5分3R>
平信一:70.55キロ
鈴木悠斗:70.7キロ

<フライ級/5分3R>
濱田巧:56.95キロ
ラファエル・リベイロ:57.05キロ

<バンタム級/5分3R>
高城光弘:61.3キロ
オタベク・ラジャボフ:61.65キロ

<フェザー級/5分3R>
三宅輝砂:66.2キロ
石田陸也:65.9キロ

<ライト級/5分3R>
松岡嵩志:70.55キロ
丸山数馬:70.15キロ

<ストロー級/5分3R>
寺岡拓永:52.0キロ
高島俊哉:52.55キロ

<58.55キロ契約級/5分3R>
前田浩平:58.55キロ
増田大河:58.20キロ

<ネオブラッドT バンタム級準決勝/5分3R>
山口怜臣:61.6キロ
宮城成歩滝:61.55キロ

<ネオブラッドT バンタム級準決勝/5分3R>
白井誠司:61.3キロ
荒田大輝:61.25キロ

<フェザー級/5分3R>
沢木純也:66.2キロ
小島健史:65.8キロ

<フライ級/5分3R>
田中亮祐:56.7キロ
鳴海秀哉:56.75キロ

<フライ級/5分3R>
名久井悠成:56.5キロ
萩島answerタクミ:56.8キロ

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