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【ECI06】エメラルドシティ招待。32人T出場の高橋Sub雄己に立ち塞がるOver Time制度に改めて着目!!

【写真】米国でも高橋の足関節が通用することはFinishers Kombat04で証明された。ワンマッチでなくトーナメントの勝ち抜き方という角度から、OTの難しさに着目(C)MMAPLANET

29日(土・現地時間)、ニューヨーク州シセロで開催されるEmerald City Invitational06のバンタム級トーナメントに、日本の高橋Submission雄己が出場する。
Text by Isamu Horiuchi

一昨年から活動を開始し、各階級の有力選手を集めて16人トーナメントを開催してきた本大会だが、今回は倍の32人のバンタム級選手を招聘、優勝するには5試合勝利しなくてはならないという厳しいものだ。


国内のグラップリング文化創出と市場拡大という大いなる野望を胸に、大会運営、指導、教則映像リリース、番組作り等様々な活動を行う高橋は、選手としても精力的に海外進出を実行している。

昨年6月には英国で行なわれたプログラップリング大会Polaris 20で判定勝利したのに続き、今年の2月26日にフィラデルフィアで行われたFinishers Kombat04でラミロ・ヒメネスから内ヒールで21秒勝利。この実績が評価されて本大会への出場権を得た。

試合時間は初戦から準決勝までは6分で、決勝のみ10分間。留意したいのはいわゆるEBI(エディ・ブラボー・インビテーショナル)形式のルールが採用されていることだ。つまり本戦はポイント一切なし、決着は一本のみの「サブミッションオンリー」システム。そこで決着がつかない場合には独自のオーバータイム(OT)戦が行われる。北米の各大会で採用されることが多いこのOTのルールについて、改めて詳しく見てみよう。

OTに突入すると、選手は攻撃側(先攻)と防御側(後攻)に分かれる。今大会では、その選択権は本戦でレフェリーが優勢と判断した側に与えられる(コイントスで決められる場合もある)。

バックポジション(C)DAVE MANDEL

そして攻撃(先攻)側が「バックポジション(※シートベルトポジション=両足フックを入れて、襷掛け)」。

もしくは「スパイダーウェブポジション(攻撃側が上から腕十字を狙い、守る側がグリップを組んだ状態」を選択し、レフェリーの合図とともに攻防が開始。

スパイダーウェブ(C)DAVE MANDEL

攻撃側がタップを奪うか防御側がエスケープを果たした場合。

あるいは2分が経過したら攻守交代となる。今度は後攻側がポジションを選択して攻撃に回る番だ。

最初に先攻側が一本を奪った場合は、後攻側はそれよりも短い時間で一本を取り返す必要がある。それができれば勝利、できなければ敗北だ。

先攻側が一本を奪えなかった時は、後攻側が自分の攻撃時に一本を奪えば勝利。(先攻側に続いて)後攻側も一本を奪えなかった場合は、試合は第2ターンに突入し、再び先攻側が攻撃体勢を選択して攻防が開始される。

もしターンが3回繰り返され、どちらも一度も一本を奪えなかった場合は、全3ターンでそれぞれがエスケープに要した時間を加算して、合計時間が短かった選手が勝利を宣告される。

当然ながらOTで勝つためのスキルは、通常のグラップリング戦のそれとはかなり異なったものとなる。極端な話、OTだけならパスガードやスイープの技量は一切必要なく、爆発的なエスケープや強烈な極め、ポジションのキープ力がものを言う。足関節やギロチンの攻防にいくら秀でていても勝てず、必要なのはもっぱらバックチョークと腕十字周りにおける攻守の技量だ。

OT戦をどれだけ経験、研究しているかも大きい。どういう場面でどちらのポジションを選択すべきか。いくらか選択の余地があるスタート時の手の位置は、どれが自分に一番適しているか。

素早い極めやエスケープを果たすため、あるいはポジションを長くキープするために、スタートの瞬間に自分の打つべき最善手はなにか。それらを知るのに、実戦による試行錯誤に勝る手段はないだろう。

このようなEBIルールでは、本戦(今大会は決勝10分以外は6分間)を防御に徹してやり過ごし、OTに勝負を賭けるという戦略も可能だ。実際、今大会よりさらに本戦タイムが5分と短いSubmission Undergroundでは2分を経過した辺りから、防御に徹するグラップラーも見られた。

結果、EBIやSUBにおいてグラップリングの総合力で明らかに優っていると思われる選手が、OTに持ち込まれて敗れることも珍しくない。

例えば昨年11月にロスで行われたSOS(サブミッション・オンリー・シリーズ)のミドル級トーナメント出場した岩本健汰は、決勝で自分より遥かに体格で勝る相手と対戦し、本戦はマウントを奪うなど圧倒するも極めきれずOTに持ち込まれてしまう。

ここでコイントスで先攻となった相手にチョークを極められてしまった岩本は、次に逆転を期してスパイダーウェブを選択するも逃げられて敗れた。

高橋の最大の武器は、言わずと知れた足関節技。昨年8月には最先端の足関節技術の発展を独自の視点から整理した教則DVD 「LEG LOCK 4.0」をリリースしており、この分野では日本屈指の知識と技術を誇る。無数のエントリーを持ち、上下どのポジションからでも一瞬で形に入るその卓越したスキルは、まさにサブミッションオンリールールに適していると言える。

が、それはあくまで6分間(決勝のみ10分)の本戦内の話。試合がOTに持ち込まれてしまうと、IREのように50/50とサドルからスタートでない以上、フットロッカーとしては厳しい状況に追い込まれる。

加えて他の多くの出場者と異なり、この形式の試合経験がない点も不利に働くだろう。できればどの試合も本戦内で相手を極めてしまいたいところだ。

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
4月30日(日・日本時間)
午前6時00分~Flo Grappling

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