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【TORAO28】日本拳法→MMA。宝珠山桃花と対戦、古賀愛蘭─01─「ずっと顔はキレイなままに」

【写真】21歳、MMA戦績は2勝2敗の古賀。4月のパク・シウ戦の敗北は致し方ない。しかし、ポテンシャルが高いのは明らかだ(C)SHOJIRO KAMEIKE

12月4日(日)、山口県周南市の新南陽ふれあいセンターで開催されるTORAO28で、古賀愛蘭が宝珠山桃花と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

これまでDEEP JEWELSやRIZINにも参戦経験のある古賀は、大阪で中村優作らと練習を共にしていた。その古賀は今年6月に広島県福山市のBURSTへ移籍し、佐々木信治&藤井惠夫妻の指導を受けている。一方、TORAOは今大会から藤井惠をプロデューサーに迎え、「藤井惠Produce」として女子公式戦をスタート。古賀にとっては宝珠山戦が、BURST移籍第1戦、そして藤井惠Produceのプロ修斗公式戦初出場と、初モノづくしの試合に。そんな古賀に、幼少期から培ってきた日本拳法の経歴とMMAを始めた経緯を訊いた。


――古賀選手は福岡県飯塚市出身で、MMAを始める前は5歳から日本拳法をやっていたそうですね。

「最初は長谷川穂積さん(ボクシング元世界3階級制覇王者)の試合を見て、ボクシングをしたかったんです。でもボクシングジムは遠くて、近くにあった日本拳法の町道場に入りました。小学校、中学校の頃は町道場で練習していて、高校からは部活になっています」

――ボクシングと日本拳法……入門した当時は日本拳法について、どのようなものかご存じでしたか。

「知り合いの人がやっていて名前を知っているぐらいで、日本拳法については知りませんでした(苦笑)」

――まずボクシングを始めたいと思った時は、プロになることを目指していたのでしょうか。

「いえ、その時は考えていなくて。日本拳法をやっていくうちに、プロのMMAファイターになりたいなと思うようになりました」

――日本拳法といえば直接打撃制で、投げも寝技も認められている競技です。小学生の頃はルール上、それがどこまで行えるのですか。

「子供は、胴は当てて良いんですけど、顔面は寸止めです。顔面は突きも蹴りも寸止めで、綺麗に寸止めができたらポイントが入ります。投げ技は高校生からですね。初めて日本拳法の試合に出たのは、小学1年生か2年生の頃でした。何の大会かは覚えていないんですけど、その時に準優勝していて。中2と中3の時に全国3位。高2で全国2位、高3の時に全国で優勝しました」

――日本拳法の女子の競技人口というのは……。

「子供の頃は、周りに日本拳法をやっている女の子はいなかったです。学校では珍しがられていて。でも高校は部活だったので、女子は全学年合わせて十何人いました。全国では、かなり多いですし」

――それほどの競技人口であれば、日本の女子MMA関係者は日本拳法をチェックしておかないといけないですね。そのようななかで、プロのMMAファイターになりたいと思った理由は何だったのですか。

「日本拳法って階級がないんです。だから体重別の大会とかもなく、体が大きな人も小さな人も一緒に試合をするんですよね。誰とでも試合をするというか……。だから、自分に適性の階級で戦ってみたいと思いました。適正の階級で、どこまで行けるのかなって」

――まず階級制の格闘競技に興味を抱いたわけですね。

「はい。日本拳法には投げも関節技もあるじゃないですか。それで日本拳法に近いのはMMAだと思いました」

――では誰か憧れのMMAファイターがいたり、何かの試合を見てMMAを志したというわけではないのですか。

「それは特になかったです。初めてMMAを見たのも覚えていなくて――」

――……驚きです。今の若い選手にとっては――特に女子でも、それだけMMAが浸透してきているということなのですね。グレイシーに憧れた、というわけでもなく。

「そうですね(苦笑)。誰かに憧れたというのはなくて、格闘技のプロになりたかったんです。そこで日本拳法をやっていたMMAファイターさんのところへ行ったほうが良いのかな、と思って。それで中村優作さんのことを教えてもらいました」

――結果、高校を卒業して単身大阪へ。プロのファイターになることに、周囲の方は反対しませんでしたか。

「お母さんは反対していました(笑)」

――日本拳法がOKでMMAは反対というのは……。

「日本拳法は顔に防具を着けていますけど、プロのMMAはヘッドギア無しじゃないですか。やっぱり女の子だから顔に傷をつけてほしくなかったみたいで。でも日本拳法で実績を残したら認めてくれるかなと思って、まず日本拳法を頑張ろうと思いました。そうしたらお母さんも、MMAやってOKかなっていう感じになって」

――そこから中村優作選手と一緒に練習するようになるまでは、特にMMAで必要なグラップリングをやったことはなかったのですか。

「やったことがなくて、最初は難しくて仕方なかったです。日本拳法の投げや寝技の動きとも違いますし。日本拳法ではシングルレッグやダブルレッグもOKなんですけど、やる人がいなくて。だから最初にテイクダウンの練習をした時は、何これ、っていう感じでした。ステーンって転がされまくって(笑)」

――一方で、古賀選手の打撃に対する反応は目を見張るものがあります。今年4月のパク・シウ戦でも、敗れたとはいえ相手のパンチはほぼ全て見切っていませんでしたか。

「えぇ、そうですか。自分では分からないです(苦笑)。でも、そう見えていたとしたら、やっぱり日本拳法をやっていたおかげだと思います。子供の頃から、顔面は寸止めでも綺麗な形で入ったらポイントになってしまうので、ずっと正面から突きをもらわないように意識していました。おかげで、プロになってからも今まで試合でクリーンヒットは食らったことがないと思います。お母さんの希望どおり、ずっと顔はキレイなままにしています(笑)」

<この項、続く

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