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【Pancrase327】鶴屋怜と対戦、秋葉太樹─02─「踏み台にされる側が勝ったら面白い。不安要素は2割」

【写真】関西グラップリング界の虎の穴=カルペディエム芦屋で組み技の向上もはかっている(C)MMAPLANET

29日(金・祝)、東京都の立川ステージガーデンにて開催されるPancrase327にて、鶴屋怜と対戦する秋葉太樹のインタビュー後編。

2013年にプロデビューし、現在31歳。これまで22戦を経験したなかで、秋葉は自らを見つめ、そして勝つ術を身に着けてきた。それだけキャリアを重ねてきたファイターにとって、これがプロ4戦目となる鶴屋怜とは――。自分のことをアンダードッグだと認識している秋葉、しかしホープに噛みつくイメージは、すでに出来上がっている。

<秋葉太樹インタビューPart.01はコチラから>


――秋葉選手のキャリアに変化が起こったのは、2018年3月の安永有希戦からかと思います。その後も荻窪祐輔、神酒龍一といったパンクラスのトップランカーを下しました。当時、ご自身の中でも何か変化があったのでしょうか。

「そういう人たちは、戦う世界が違う選手なんやろうなと考えていました。それが安永戦の前から稲垣組へ出稽古に行かせてもらって、自分の世界観も大きく変わったんです。トップファイターたちは、こんなしんどい練習してんのかって。良い意味で、自分に対するプレッシャーになりました。精神力とかも稲垣組でつけてもらって……めちゃくちゃキツかったです。知らない人たちばかりやし、怖いし(苦笑)」

――アハハハ、怖いとは(笑)。

「一般会員さんのクラスは違うと思うんですけど、プロ練は殺伐としていて。でもそれは冷たい感じじゃなく、強い指示が飛ぶんです。『そこで動け! 動かなアカンやろ!!』って。そうなると余計にしんどいけど、自分が弱いところで打ち勝つ強さを鍛えてもらっています」

――そうやって稲垣組で鍛えてもらった秋葉選手としては、先日の前田吉朗引退興行で、稲垣組メンバーが集まったのは感慨深かったのではないですか。

「当日は体調を崩して会場に行けていなくて……。でも僕が修武館に通っていた時、電車の中でずっとDREAMの試合動画を見ていました。そこに出ていた前田さんと、少しの間でも同じ時代に試合をできたのは、ホンマに嬉しかったです。前田さんって魂で戦うじゃないですか。毎試合、全力で言い訳もしない。カッコいい人です」

――なるほど。試合の話に戻ると、トップランカーとの試合の中では何か手応えを感じましたか。

「それが……意外と試合中は何も感じていないんです。戦っている自分は自分ではない、というか――」

――えっ、どういうことでしょうか。

「伝わるかどうか分からないんですけど、自分を客観的に見ている感じなんですよ。試合中に自分の動きに対して『こんな動きできるんや!』と思ったり。でも、それがダメなところやったんです。その動きができる理由が分かっていないから。それとトップ選手に勝った時も『おっ、勝ったんや』って自分の試合ではないような感覚を持ったり」

――それは、自分自身のことを冷静に見ることができているのではないですか。

「それが分からないんですよね。試合は自分ではないヤツが戦っていて、そいつに任せて僕は試合を楽しむだけ、っていう」

――自分ではない自分は、自分が思っている通りに動けているのでしょうか。

「自分が思ったとおりではなく、相手の動きに対するリアクションで動いているんです。冷静になる時もあります。組みと組みの間はコレをしよう、と考えて動き時もありますけど、基本的には無で動いている感じですね」

――そういった感覚は、昔からあったものですか。

「いえ、勝ち始めてからですね。勝っているから、その感覚でいいんやと。昔は試合前もすごく力んでいて、良い試合せなアカンって自分に言い聞かせて……。大丈夫、大丈夫と思いながら試合中は怖いな、ヤバいなって、いろんな感情が沸き上がっていました。でも勝ち始めてからは、そういう感情も無くなってきて。戦っても死ぬわけじゃないし、何も怖くはないと思ってから勝てるようになってきたんです」

――不思議な感覚ですね。

「試合が終わってから映像を見て、こんな展開があったなと思い出すことも多くて。たぶん僕は計算すると勝てないんです。とにかくその時はガムシャラにやっていて勝てた、っていう」

――すると、2017年に安永戦、荻窪戦を含めて3連続KO勝ちを収めた時は、KOしたパンチのことは覚えていたのでしょうか。

「それは全部覚えています。しっかりと形にハメこんで、最後はこのパンチで倒すと決めていて」

――それは自分に中で、よほど染み込ませていないと出ない動きなのかもしれないですね。

「ただ、動き自体は練習していないものなんですよ。でもずっとイメージしていて、当たる自信もある。水抜きしている時とか、『この動きはいけるな。これで倒せる』っていうことしか考えていないんです。安谷屋戦の時は、最初は打撃で勝負しようと思っていました。でも寝技の練習もしていたし、水抜きの時にイメージしながら『寝技でもいけるな』と思って」

――なんとも不思議な世界です……。しかし自分の中で、しっかりイメージしておくことは大切ですよね。

「それが前回の試合(2021年5月、小川徹に判定負け)は、自分の準備不足でした。せっかくベルトに挑めるチャンスやったのに、負けて遠回りすることになったなと。でもいずれベルトは獲りたいし、獲れると思っているので。遅かれ早かれ、パンクラスのフライ級のベルトは、僕のものになります」

――そのベルトに向けた再起戦、相手は鶴屋怜選手です。

「このマッチメイクでは、僕がアンダードッグだということは分かっています。でも注目を浴びている選手に、踏み台にされる側が勝ったら面白いですよね。そう思う一方で、僕と対戦するのはまだ早いんじゃないかっていう声もあって。そういう声を聞くと嬉しいです。

若くて注目を浴びている選手でも、平良(達郎)君や西川(大和)君の強さは分かるんですよ。でも鶴屋君はまだ、それほどキャリアのある選手と対戦していないから、その強さが分からない部分があって。だから楽しみでもありますよね。自分で言うのも何ですけど、彼のキャリアにとって、僕の試合が大きなヤマになるんじゃないですか」

――確かに、そうですね。

「まぁ、試合って時の運じゃないですか。僕は鶴屋君に勝つイメージも持っているし、負けるイメージも持っています。実は、いつも試合前は負けるイメージしかなくて(苦笑)。それのイメージを自分自身へのプレッシャーにして練習していくんです。今回もそういう練習をしてきたし、もう不安要素は残り2割ぐらいですね。試合当日にはその2割も無くなっていますから、最高のパフォーマンスをお見せしますよ」

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