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【UFN204】世界に立ち向かうJ-MMAファイター(02)佐藤天「ラストじゃない。まだ、ある。まだ、あるので」

【写真】インタビュー中は非常に厳しい表情が続いたこともあって、最後は笑顔のリクエストをしました(C)MMAPLANET

3月19日(土・現地時間)、英国ロンドンのO2アリーナで開催されたUFN204:UFN on ESPN+62で佐藤天はグンナー・ネルソンに完敗を喫した

1年4カ月振りのオクタゴン。この日のために全てを費やしてきた、考え得るだけの努力をしてきた。そして、敗れた。

2022年、春~世界に立ち向かうJ-MMAファイター特集~。第2弾は、UFCという最高峰に拘り、全てを自己責任で生きる佐藤天に話を訊いた。


──正直に言わせていただくと、やるせない完敗でした。どれだけの想いがあって、人生の全てを賭けようがこのようなシビアな現実に直面する。そんな試合でした。

「凄く残念で、悔しい。それが率直な想いです。ただ、もちろん諦めていないので進んでいくしかない。ちょっとしたところで、大きく結果が変わる。それを実感しています。試合が終わってからなのでタラレバになるのですが、グンナー・ネルソンにバッククラブに入られると、過去もほとんどの選手が逃れることができていないです。だから、そこまでをどうするのか……という勝負でした。

最初のコンタクトにしても、肌を直接合わせた時の感覚は悪くなかったんですよね。実は予想していた試合展開は、もっとネルソンが圧を掛けてきてケージレスリングの展開になると思っていました。それが思った以上に自分が圧を掛けることができたことで、オクタゴン中央での戦いになりました。ネルソンがどういう風にクラッチしてくるかも予想できていて、そこでカウンターを打つとかできれば良かったのですが……決して、感覚的には試合開始直後から悪くなかったんです。

そこから1度テイクダウンされてバックを取られた。戦い方をネルソンは変えてきました。フレキシブルに試合を創ってきました。リスクを最大限に減らして。自分は対照的に柔軟な対応ができなかったです。そうッスね……そういう細かいところの違いが、大きな差となって結果に表れました。それを実感させられた試合でした」

──圧力は掛けることができていた。でも、手が余りでなかった。特にテイクダウンを奪われてからは、ネルソンにテイクダウンがあるというのが念頭に来て、そこから頭で考え手数が減っていったようにも映りました。

「もちろんテイクダウンのプレッシャーもありましたが、ネルソンが凄く待っていました。試合の入り方として動きもメンタルも凄く良かったです。さっきも言った少しの違いを掴み切れなかったということがあったうえで、待たれたことで考えてしまったという部分はあります」

──あのスタンスでネルソンは、右の奥足で蹴りが届くのは戦い難かったかと。何よりテイクダウンを奪う時のパンチ。当たらなくても組めば良い打撃、当てる打撃の2つのパンチを持っていました。

「その見極めは凄く難しかったです。2Rの途中から打撃がかなり見えるようになってきました。合わせるタイミングとか計っていたのですが、その見極めだけは困難になっていきました。組む、打つ、モーションは慣れて見えてきたけど、その織り交ぜてくるのは全く同じ動作で。だから……考えるというよりも、考えさせられました。1回スイッチとかしたのですが、あんなの実際は意味がないです。でも、考えされた結果ああいうこともしていて」

──打つ手がなくなっていったような感じでしょうか。

「う~ん、それよりも何か……考えさせられることによって後手に回らされましたね」

──お互いが相手の動きを見て反応する。相手に動きを見せて反応させる。そんな神経戦のなかでネルソンが当て、組んでテイクダウンを決める。あれはMMAの技術を消化したうえで、彼がポイント空手の試合で積んできた経験。先の先、後の先、ダメージを与える競技ではないですが、心理戦のなかでどう踏み込んで当てるのかという競技をしてきたのが生きたのかと思いました。MMAとはそういう部分で、ポイント空手ですら生きるのかと。

「あぁ、そうですね。今からすれば、組みと打撃の見極めが難しいなら自分から組むこともできたと思います。組んだ時の感覚も悪くなかったので。ギルバート(ジルベウト・ドゥリーニョ)からも『別にパワーはない』と聞いていました。3Rに組んだ時も感触は悪くなかったです。そこでディフェンス有りきで考えてしまって出なかったというのは、絶対にあります。

上を目指している以上、ベラル・モハメッド戦と同じように悔しい負けです。凄く遠いバケモノとかでなくて、自分の持っているモノを生かして勝ってランキングを上げていっている選手に勝てていない。そこはもっと煮詰めていかないといけないです」

──それこそ佐藤選手が言われている、何か一つで局面が変わる。変えてくれという気持ちで2R、3Rと視ていて。そしてテイクダウンからバッククラブというなかで、制されて終わった。

「そういう場面で、柔軟性をつけないと……創り方も大事になってきますし。色々なところに注意を払って、頭を巡らせないといけない。そういう練習もしてきているのですが……」

──ここも結果論ですが、動きが良く圧を掛けられることができる。それでもテイクダウンは取られた。そういう時に自らケージを背負う位置を取るということは難しいのでしょうか。

「それも必要になってきますよね。ケージレスリングに突破口があるのであれば、金網の近くで戦って組みの展開に持ち込む。そういう判断もすべきだと思います」

──あの局面、逆転には打撃を当てること。だからといって、前に出ていくことが打開策になるのか。もちろん、負けているなら一か八かも必要な時もあるのでしょうが……。そこで究極の先手、あるいはカウンターの取り合いが行われている。だから無暗に打って出られない。特に相手が見て、待っているわけですし。

「そうッスね。どう手を出すか、どういう中身の攻めを繰り出せば良いのか。その中身を詰めていかないと、玉砕になります。片道の燃料で敵を目指すのは……違うというのが僕の考えです。漢を見せるとか、そういう次元の話ではないです。勝つために一つひとつ、正しい選択をしていかないといけない。

例えば僕が1回でもネルソンのダブルレッグを切れていれば、彼も消耗したはずです。そうしたら流れが変わったかもしれない。そういった面でも、創りが大切で。それができるよう積んでいかないといけないと本当に思っています。防戦一方で、判定までいって負けてしまったんですけど、動き、切れは以前よりずっと良くなっています。

僕はバックを取られているとパンクラス時代でも、UFCになってかも負けています。だから取らせないということもやってきました。そこは意識していて……、試合では機能しなかったですけど……。

でもネルソン戦がラストじゃない。まだ、ある。まだ、あるのでこの間に詰めていかないと……」

──ヘンリー・フーフトやカミ・バルジニ達、コーチ陣と試合に関して話はされましたか。

「ハイ。皆と話しました。ヘンリーは家に呼んでくれて、『間違いなく良くなっている。もう少し自信を持つことが大切で、細かいところもやっていこう』と言ってくれました。『練習中に、そんなにナイスでなくて良い。もちろんケガをさせたらダメだけど、自分の感覚を大切にするためにもっと我がままを通しても良い。少しぐらい当てても、そういうレベルで戦っているんだから、そこをしっかりとやっていこう。思っている以上に上とは近いところにいるんだ。手が届かないモノじゃない』とも。

カミやグレッグ(ジョーンズ)は『少しの部分、そこをリフィックスできなかった。そういう部分を詰めていこう』という話や『試合間隔が空いたことで、打撃の選手はちょっとした感覚が違ってくるから。その違いも分かったから、今度はちゃんとファイトキャンプをして、対戦相手の研究ができる早目のオファーで準備できるようにやっていこう』と言ってくれました。

今回は1年間、どういう相手がこようが試合を受けることができる。自分のコンディションを整え、穴を埋めるという準備をしてきました。今後はそれに加えて、しっかりと戦略を立てて試合に向かいたいです」

<この項、続く>

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