【RIZIN TRIGGER03】RIZIN初陣=江藤公洋戦へ、雑賀ヤン坊達也「今まで通り、相手の意識を断ち切る」
【写真】その表情、口調からも充実ぶりが伺えたヤン坊だった(C)MMAPLANET
16日(土)に東京都調布市の武蔵野の森アリーナにて開催されるRIZIN TRIGGER03に雑賀ヤン坊達也が出場し、江藤公洋と対戦する。
2020年9月に4試合連続1RKOで暫定ライト級KOPとなったヤン坊は、その時点でRIZIN参戦を熱望していた。しかし、その想いは届かずRIZINライト級戦線で戦う正規チャンピオン久米鷹介と王座統一戦を戦う。J-MMA史に残る激闘の末、久米に逆転負けを喫したヤン坊だったが、そのポテンシャルの高さを見せつけたファイトであったことは確かだ。
そして手にしたRIZINの舞台──当然、彼の目標は本戦出場だが、TRIGGERは戦いなれたケージでもあり、DEEPやONEで実績を残してきた江藤は名前を上げるのに格好の相手だ。一撃必倒と表現しても良いパンチ力と、所属するDOBUITAの長岡弘樹代表とのスパーで身に着けた組みへの対応力でRIZINライト級戦線に殴り込みをかけるヤン坊はケージ内での威風堂々とした佇まいとは対照的に、試合前に緊張で夜も眠れないという。そんな彼にRIZIN TRIGGER参戦に向けての心境を尋ねた。
──RIZIN TRIGGER03出場、念願のRIZIN参戦となりました。相当に気合が入っているかと思いますが、試合が近づくと戦い振りとは裏腹に恐怖に襲われるヤン坊選手……今はどのような心境でしょうか。
「もうドキドキしています。今日も試合のことを考えてしまって、昼寝ができなかったです(苦笑)。どうしても江藤選手のことを考えてしまって……」
──また、ですか。久米鷹介選手とあれだけの激闘を繰り広げてなお、試合前の恐怖というのは避けられないのですね。
「以前と同じ状況に陥っています……。久米選手との試合は、負けましたが自信がついた試合でした。ただ試合というモノ自体は……怖いままで。こういう風になってしまいます」
────ところで久米戦で耐えまくっていた左腕は問題なかったですか。
「今は大丈夫です。2月後半までは少し痛かったですけどね(笑)。でも靭帯も大きな問題なくて、力を入れても全く問題ないです。3月の上旬には痛みもおさまりました」
──良かったです、後遺症がないことは。そしてTRIGGERということで、引き続きケージでのファイトになります。
「ケージですけど……会見の時に、来られてなかったですよね」
──TRIGGERの会見はお邪魔させてもらっているのですが、家族が陽性になって濃厚接触で自宅隔離期間中だったんです。YouTubeで拝見したのですが、ヤン坊選手はいつも通りでしたね。変に力が入ったコメントをして、滑る人とかもいるのですが。
「アハハハハ。僕は何も変わってない。いつも通りでした。そういうことはできないですから(笑)」
──ところで暫定王者になった時からRIZIN出場を希望していましたが、叶わず。そして最初に触れたように──昨年12月に久米選手のパンクラス出場を待って統一戦。そこで敗れて、今回のTRIGGER出場となりました。
「試合が終わってから、2022年をどうしてくのかという話を坂本(靖)さんとさせてもらい、『挑戦しますか』と言ってもらえたんです。もちろん僕もしたかったですし、かなり坂本さんには動いてもらって、今回の出場が実現したと思っています」
──正直、現状のRIZINは出場選手の実績という部分では敷居が低くなっています。そのなかで「自分は違うぞ」という気持ちはありますか。
「本音をいえばナンバーシリーズに出たかったです。でも、そうではないということは現状の僕に対する評価だと思っています」
──ただ今回は首都圏下で初のTRIGGER開催。相当な顔触れか揃っていると思いますが……。
「そういう部分では強い選手が集まっているとは思いますが、僕はパンクラスで暫定王者として、久米選手とベルトを争った。そこに関して、誇りは持っています。今回、パンクラスにバックアップしてもらって出ていますし、パンクラスの強さ……パンクラスのランカーは一味違うというのは見せていかないといけないと思っています」
──では対戦相手の江藤選手について、どのような印象を持っていますか。
「固い試合をする選手です。しっかりとレスリングをして、コントロール──漬けてくる選手ですよね。隙を見せると、絞めがあります」
──ヤン坊選手のMMAキャリアは、常に組み対策と共にあったかと思われます。
「そうですね。ただ久米さんは打撃とテイクダウンが合体しています。対して江藤選手の組みは、まさに組みですよね。だから久米さんよりもプレッシャーはないと思います。僕のなかでは久米さんが基準になっているので、あの一戦に向けて準備してきたことで成長できましたし。それは試合中にも感じました。なので今回の試合もやることは余り変わらないです。
仮にテイクダウンを奪われると、コントロールの仕方は人それぞれなので、そういう細かい部分は気を付けないといけないと思っています。それと久米さんに下から起き上られて、下にされた。ああいう予想していなかった部分も、ボス(長岡弘樹DOBUITA代表。GRANDウェルター級王者)が練習で仕掛けてくれるようになりました。
今回の試合もボスのスタイルが、ハマるという感じですよね。久米さんとの試合で、組まれた時に『ボスのテイクダウンは、このクラス級なんだ』と凄く理解できました。そういう意味で、僕はトップクラスの組みを練習で受けることができて恵まれていると思います」
──ソニックスクワッドでの出稽古の方は?
「ばっちりお世話になっています。安田(けん)さんに走り込みまでお世話になって。週に1度、関(鉄矢)君と森山(壱政)君とガッツリ追い込まれています(笑)。スパーリングもやっていますし、森山君はもっと脚光を浴びても不思議でない良い選手ですし、僕自身──久米さんとの試合の時と比較しても、レベルアップしていると感じています」
──なるほどぉ。期待値が上がります。ところでテイクダウンに関して、江藤選手は久米選手と比較して崩し方が豊富だという印象もありますが……。
「本当に集中力が欠かせないと思います。ただし、一つひとつをしっかりと対処すれば対応できるかと。そうやって江藤選手の気分を乗せないで、戦うことを嫌にさせていきたいです。嫌がることを仕掛けたいですね」
──ヤン坊選手はインパクトを残して、良い試合をしたいですよね。
「もちろんです」
──江藤選手は勝つために、そういう意識を捨てることができる。その強みがあるかと思います。組みが強い。でも、出てこない。そういう試合になると、おびき出して攻めないといけない。これは、なかなか厄介になるかと。そこで攻め気に逸ると、テイクダウンの餌食になりますし。
「そうなんですよ。そこは今回の課題なんです。僕自身は分からないですけど、ボスから『ヤン坊と打ち合う人間はそんなにいない。近づきたくない』って言われます。そこで待たれて、パンチに合わされてテイクダウンを狙われると面倒くさいというのはあります。でも、やるしかないです(笑)」
──久米選手からノックダウンを奪ったことで、いよいよ国内勢ではヤン坊選手の打撃への警戒心は強くなっているはずです。
「それも言われました。『久米選手から、あんな風にダウンを奪うともう入れない。あの一瞬で入れるということは、そのタイミングを計っていると組む方も思うから』と。江藤選手だって分かっていますよね(笑)。そうなると心理戦です」
──そこでレフェリーが「ファイト」を要請すると、もうどちらがミスをせずに戦えるかという勝負になりますね。
「本当に難しい相手を当ててくれたなって、感じです(笑)。でも組み、受けは自信がついてきたので……ただし、グラウンドでのコントロールは半端ないと思います。寝ちゃダメですね。まぁ組まれる前、そこが大切になってくるでしょうね」
──この試合がRIZINでのキャリアの第一歩になります。今後に関して、どのような青写真を描いていますか。
「まずはこの試合に集中しています。そこを大前提として、ここでしっかりと勝ってRIZINライト級のトップ戦線にいる選手達に加わりたいですね。そうやって名前を上げて、パンクラスでも試合をして盛り上げたい……パンクラスも盛り上げたいです。RIZINに行きっぱなしという風にはしたくないですし、それはパンクラスに伝えています。『ヤン坊が出るから』と言って、パンクラスの試合をファンが見てくれるような存在になりたいです。日本全体を盛り上げたいし、自分も有名になりたいと思っています(笑)」
──ではMMAPLANETの読者の皆さんに、改めて意気込みをお願いします。
「今まで通り、しっかりと相手の意識を断ち切る──真剣の斬り合いのような試合をしたいと思います」
──それなのに昼寝でもできない精神状態だと……(笑)。笑いごとではないのですが。
「来週になると、夜も眠れない状況になってきそうです(笑)。ただし、これまでもと違うのはマットレスを変えたんです。そうしたら寝心地が良くなったので、その効果があるんじゃないかと期待しています(笑)」
「