【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:12月:ローマン✖サーデュラエフ─02─からのアンドラジ
【写真】柏木信吾氏のジェレミー・ケネディと同様に、水垣氏からスティーブン・ローマンも日本人選手の指標という言葉が聞かれた (C) ONE
過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。3人の論客から、水垣偉弥氏が選んだ2021年12月の一番は12月3日に行われ、17日に放送されたONE Winter Warriors02よりスティーブン・ローマン×ユーサップ・サーデュラエフ戦についてさらに語らおう。
<月刊、水垣偉弥のこの一番:12月:ローマン✖サーデュラエルPart.01はコチラから>
──ゴリゴリ行けるというのは?
「粗いじゃないですか。決して上手くはない。KOしたパンチにしてもテイクダウン狙いや蹴りが鋭いので、他に意識が行っていたからこそ当たる……MMAだから当たるパンチをしっかりと決めました。
ただし、粗い。ローマンは粗いの一言ですね。どういう攻めが有効だったか、それは体の強さでサーデュラエフにプレッシャーを掛けることができるということでした。ロシア人、ダゲスタン人のサーデュラエフにソレができるというのは、衝撃的でした」
──アジア人といってもフィリピンの山の民ですし、我々のようなモンゴロイドではないですよね。
「まぁアジア人で一括りにするのは、強引ですよね(笑)。
でも、そのフィリピン人を日本人選手は越えていかないといけない。日本人選手でサーデュラエフに勝っているのは、岡嵜康悦選手ぐらいですよね。それも随分と昔だし(2014年7月)。計量方法が違うのも、上手く活用できるようにしないといけないですね」
──その計量方法と体重リミットが北米と違うONEバンタム級戦線では王者ビビアーノ・フェルナンデスに、ジョン・リネケルが挑むことが決定しています。日本でトップを張ったビビアーノ、UFCファイターだったリネケルにローマンが挑むという構図で見ると、水垣さんはローマンの今後をどのように占いますか。
「単純に比較はできないですけど、サーデュラエフのパンチも被弾していますし、パンチを受けることに関しては課題があります。リネケルが一番良い時であれば、今のローマンでは厳しいです。ただリネケルもあの時と比べると落ちている。今がピークではないと思います。
そこを加味すると、ローマンにもチャンスはあると思いますが……。とにかく粗いのでパンチはもらうでしょうね。サーデュラエフを圧すことはできましたが、それができなくなるとパンチを被弾するようになるかと。ただし、BRAVEでアレだけ勝っているので、まだ見せていない部分がある可能性もありますけど。
ローマンは蹴りは割と早い、テイクダウンも取れる。ただし、少し遠い。今のままだとリネケルに勝つのは厳しいですね。対して日本人選手には強いと思います。相性的にも。あのフィジカルでゴリゴリ来られると、厳しいという日本人選手は少なくないでしょうね。
もちろん、日本人選手にも色々なタイプがあるのですが、そういうフィジカルで来られると苦手な選手には滅法強いはずです。ONEに出ている日本人選手にとっては、鬼門のファイターになります」
──まだ粗いということを踏まえると、フィジカルがあって粗くない選手がいるのが世界ですから、そこを目指すならローマンを越えていく必要があると。
「その通りですね。スティーブン・ローマンのような選手は、世界を目指す選手には良い指標になると思います。ONEのスタイルではなくMMAをやっていますし、力があって粗い。決して上手くないパンチを当てることができる選手ですし、考え過ぎちゃう日本人選手にとっては苦手なファイターだと思います。
ただ、ONEのバンタム級でいうとローマンよりもファブリシオ・アンドラジの方が怖いでしょうね」
──おっ、アンドラジですか!! 既にマーク・アベラルド、佐藤将光選手、そしてリー・カイウェンに勝っています。
ローマンがサーデュラエフ戦のようにゴリゴリやろうとしても、入らせない。強引になるとヒザもあります。ここでもキーになるのが、ローマンのテイクダウンです。打撃とテイクダウンを混ぜることで、どれだけ圧力を掛けることができるか。
つまりローマンのゴリゴリは、テイクダウンと打撃がミックスされているということで、そこが彼の強味です。テイクダウンがあるから右オーバーハンドが当たる。テイクダウンを警戒させることで、あのパンチが生きてきますよね」