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【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:12月:ローマン✖サーデュラエフ前にフェルスタッペン×ハミルトン

【写真】スティーブン・ローマンにいくつまでの序章としてお楽しみください (C) ONE

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。3人の論客から、水垣偉弥氏が選んだ2021年12月の一番は12月3日に行われ、17日に放送されたONE Winter Warriors02よりスティーブン・ローマン×ユーサップ・サーデュラエフ戦について語らおう……って、MMAファンの皆さんスミマセン!!。


──水垣さんが選ぶ12月の一番、どの試合になるでしょうか。

「12日に行われたアブダビGPのマックス・フェルスタッペン×ルイス・ハミルトンの激闘ですね(笑)」

――そこですか(笑)。水垣さんはDAZNのWednesday F1 timeに出演し中野信治さんと共演していますし、息子さんもカートに乗せている。車好きですよね。もう15年ぐらいの付き合いになりますが、中野さんとの共演は正直、MMAで残したどの実績よりも『すげぇ』ってなりましたよ。

(C)TAKEYA MIZUGAKI

「そこも踏まえて最高のシーズンでした!」

――ただ正直なところ、「俺はセナ・プロのアクシデント、どっちも現地にいたんだぞ」っていう気持ちでしたけどね。

「アハハハ。僕はその時代を観られていないのが、残念なんですよね……。観たかったっス。僕がF1を観るようになったのはフェルナンド・アロンソ×ミハエル・シューマッハーの時代からで。クラッチがあり、シフトミスとかあるF1を観ていないんですよね」

――レースが終わると、コックピットから出られなくなるぐらい疲弊するとか。あの頃のF1はえぐかったと言いつつ、それは年齢差でしょうがないことかと。

「それでも、アロンソがマイルド7のルノーをドライブしたときのエンジン音とか、格好良かったなぁって思いますしセナ足とか、モナコのシフトチェンジが何千回っていうギリギリのドライブしている時代のF1を観てきた人達には。やっぱり今のレースは物足りないですよね」

――モナコのシフトチェンジは4千回ですね(笑)。別物かもしれないけど、それこそ初期のUFCも今のUFCも面白い。レースが好きな人は、ずっと面白いかと。その一方でDRSでしかオーバーテイクできないっていうのは、なんだかなぁというのはあります。

「あれがあるからアウトから抜けるという醍醐味もあるのですが、近づくと抜けないっていうのはスリップストリームとは真逆ですし、微妙ではありますよね」

――それと安全性のためにコース外が舗装され、飛び出す車が続出し、レーススチュアードの介入が増えました。グラベルに出るとアウトというのとは違い、凄く人為的になったというか。

「マイケル・マシですね(笑)。トト・ウォルフやクリスチャン・ホーナーとのやり取りって聞いていて楽しいですけど、政治的すぎますしね」

――そりゃあ我々は日本人だし、ホンダのラストイヤーはフェルスタッペンに勝ってほしかった。世界チャンピオンになって凄く嬉しいです。でも、車も戦略もメルセデスが一番ってことは確かでしたし。

「結局、メルセデス。結局、ハミルトン。何度もアンダーカットされていましたからね、レッドブルは(笑)。最後のフルコースイエローの解除と、周回遅れの対応とか……もうマイケル・マシの匙加減じゃないかっていう風になるのも分かります。それでも1年間戦ってきて、最後の周の追い越しで世界チャンピオンが決まるなんて劇的過ぎて。ヤバかったです。

こうなると同じ車に乗っているドライバーは2人しかいないから、フェルスタッペンとハミルトンが同じチームで走らないと、どっちが本当に速いのか分からない。それがF1の世界ですよね」

――間違いなく世界の二巨頭でも、ハースやウィリアムスをドライブすると優勝できないですしね。いってみるとDRSも空力を追求しすぎた結果、追い越しが難しくなった。だから追い抜きを増やすためのレギュレーション、ルール設定で。これってMMAに通じると思うんです。高度に進化すると、分かりづらくなる。

「だからといって、ラインをずらしてブーストボード踏んでエクストラパワーを得らえるフォーミュラEとか、もうゲームの世界のようで乗れないですし。そうなると、結局のところ視聴しなくなりましたからね。

そういう意味で、お客さんのことを考えて打撃戦が好まれるMMAにおいて、テイクダウンやコントロールよりも下からの打撃でも加点となるという風に分かりやすさにスイッチしたのがONEですよね。

結果、北米MMAと変わらず分かりづらくなるという皮肉な現象もおきていますが、12月の一番はONEのスティーブン・ローマン×ユーサップ・サーデュラエフ戦をピックアップしたいと思います」

――いやぁ、話の持って行き方がうまくなりましたねぇ(笑)。

「そこは鍛えてもらいましたから(爆)」

――それにしても水垣さんがONEを語るって珍しくないですか。

「公の取材では初めてかもしれないです(笑)。実際、僕自身ONEはルールも階級も北米ユニファイドとは違うし、別物として視ているところはありました。

エディ・アルバレス、DJ、ベン・アスクレンなんかが出たときを楽しんできましたけど、水抜き禁止制度とかあって――良い悪いではなくて北米のMMAとは離れていき、自分がやってきたMMAと同じという風には見ていなかったです。同じ基準で選手の強弱も測れない状況にあるという認識はあります。

そんななかスティーブン・ローマンはバリバリのONEの主流であるチーム・ラカイ所属でありながら、PXCやBRAVE CFという北米ユニファイドで戦ってきた選手なので、注目していました。

BRAVEでバンタム級チャンピオンになり、4度も防衛できるってなかなかないことだと思うんです。そのローマンがONEで戦った試合を視て、素直に感じたのはアジア人がユーサップみたいな選手とフィジカルでゴリゴリ行ける……ダゲスタン人ファイターとアレができるのは、衝撃的でした。こういう戦いをアジア人選手ができる……韓国も強いし、中国も強い。そんなアジアという場で、鎬を削りあう今の日本の選手たちは大変だなって……」

<この項、続く>

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