【F1】ルンピニーでMMA。プレム・フェアテックスに訊く─02─「2年でタイ人選手をワールドクラスへ」
【写真】タイ人がMMAで強くなれない理由が見つからない。プレムの踏み出した一歩は、すぐにダッシュに変わるのではないだろうか(C)MMAPLANET
16日(日・現地時間)、タイはバンコクのルンピニー・スタジアムでフェアテックス・ファイト・プロモーション主催興行=F1 Rumpinee Fairtex Fight「New Era」では5試合のムエタイ戦に加え、3試合のMMAが実施される。
そんな格闘技の歴史が変わるイベントを目前に控え、フェアテックス・ファイト・プロモーションのプレム・フェアテックス代表のインタビュー後編をお送りしたい。
ムエタイ400年の歴史、MMA27年の歴史が今、変わろうとしている。
<プレム・フェアテックス・インタビューPart.01はコチラから>
──フェアテックスでは練習だけでなく、試合をそのために組んでいくということですね。
「その通りだよ。ONEでは何人かタイ人のMMAファイターが見られるけど、あのビッグステージで戦う前で経験を積む必要がある。その経験がないから、タイ人選手たちはケージで敗れている。
日本でもローカルショーがあって、そこで選手たちは経験を積んでいるじゃないか。タイ人選手は1勝0敗とかで、5勝0敗や6勝1敗の選手と戦う必要がある。そういうタイの新しい世代に経験を積む場を与えたい。タイ人は環境さえ整えば、どのようなファイトスタイルだって貪欲に学ぶ姿勢を持っている。
そしてMMAと交流することで、ムエタイも新しいビジネスを展開できるはずだ。チェンマイにベストジムがあり、プーケットにもベストジムがある。パタヤにはフェアテックスがある。ムエタイの人間がMMAに扉を開ければ、世界中から多くの選手が集まりキャンプを張り、生活の拠点を置くケースも出てくる。
タイ人ファイターにとっては、他の国と同様にONEという目指す舞台が存在する。他のプロモーションでアジア人ファイターをそこまで登用することはない。だけどONEはアジア人ファイターにとって新しい場を創った。ONEではタイで戦っているのとは別次元の条件で試合ができる。新しい夢をファイターに与えてくれたんだ。
スタンプはタイでは6000バーツ(約2万700円)で戦っていた。彼女は引退しようと考えていたんだ。ムエタイでは生活できなくて、仕事をしないといけなかった。ONEはそんな彼女にとって、ファイトで生きていける機会を与えたんだ。彼女はそのチャンスを生かした。ムエタイ、キックボクシングで成功し、MMAを3試合戦うことで1年間に100万バーツ(約350万円)を稼げるようになったんだよ(※タイの平均年収は140万円程度)。
自分が生きていくだけでなく、ファミリーを支えることができている。人生が変わった。。スタンプは人々が思い描く人生の手本を見せている──皆が「自分だって、デキる」と思うようになったことはとても大きいよ」
──スタンプに続け──と。
「そのためにも私のショーは賭けの対象ではなくて、誰もが楽しめるエンターテインメントにしたい。演出にも力を入れ、何よりもジャッジをフェアにする。試合もアクションを増やし、これまでムエタイを見ていた層とは違う人々が観られるモノにしていくつもりだよ」
──ONEなどグローバルステージにタイ人MMAファイターをステップアップさせるためのショーということですが、リングとケージのどちらを使用するのですか。
「最初はリングを使わないといけない。タイの格闘技はリングとともにある。何よりムエタイ産業を尊重しないといけないからね。1年、2年と順調にショーが発展していけばルンピニーとは違う会場でケージを使うことを考えているよ。
リングとケージは違うという意見は分かっている。ただONEもケージとリングを併用していたように、我々もその2つの舞台を並行して活用していくことは可能だと考えているんだ。
タイ人選手と同じようなキャリアの外国人選手を招聘したい。アジアはMMAの巨大市場だ。コロナパンデミックの動向次第だけど、日本にもフェアテックスはパートナーがいるから、日本人選手もルンピニーに呼びたいんだ」
──おお、素晴らしいです。
「楽天を通して、フェアテックスのファイトギアも日本で購入できるようになった。フィリピンでもフェアテックスの需要は高まっているし、韓国もそうなりつつある」
──日本でも既にフェアテックスの道具は広まっていると思いますが、ファイトショップでなく楽天で購入できるのは大きいですね。
「そうなんだよ。そういう需要があると、日本人選手をタイに呼ぶ追い風になる」
──そのMMAルールはONE方式を踏襲するということでしょうか。ルールやクラスなどは。
「そうだね。ただ体重や計量に関しては、タイ人ファイターはハイドレーションに不慣れだから、これまでの慣例に則してやっていく。半年ぐらい様子を見て、ONEが選手の健康を守るために実施した計量方法を採り入れることができればと思う。
フェアテックスとONEは10年間に及ぶ協力関係がある。チャトリとの関係もあるし、選手をONEにステップアップさせたいのは当然のことだよね。ただし、ONEだけでなく米国でUFCやBellatorで戦えるようにしたい。とはいえ、最初のステップはフェアテックスのショーからONEに選手を送り出すことだよ」
──いやぁ、本当に歴史が変わりますね。仮にルンピニー・スタジアムMMAチャンピオンなんて誕生すると、鳥肌モノです。
「もちろんベルトは創るし、ランキングも作成していくことになるよ。ルンピニーにおけるMMAの歴史を創っていくんだ」
──WOW!! 月に2回、ルンピニーでMMAが組まれるなら、その日が訪れるのも遠くないですね。
「若い世代はMMAで戦うことにより興味を持っているからね。MMAには世界的なステージが存在している。収入面でも、人生を変えることができるチャンスがMMAにはある。そしてルンピニーとフェアテックスの協力関係は、この想いを後押しできる」
──スタンプ・フェアテックス、ローマ・ルックンブミー、アム・ザ・ロケットは世界を舞台に戦える選手たちです。一方でムエタイがこれだけ強いタイから、そのような選手は誕生していません。デイダムロン・ソーアミュアイシルチョークに続く選手は現れていないです。
「2年だ。2年間、時間を与えてほしい。立ち技の基礎のあるファイターが、MMAの練習をして、試合をしていけば世界で戦えるようになる。ヨッカイカーを見てほしい。彼は4年間、柔術の練習をしてきた。日本のファンは色々と思うところもあるだろうけど、タツミツ・ワダと互角の試合をした。とにかくタイ人選手のグラウンドのスキルをあげること。それが最も大切なことだよ。2年後、もっと多くのタイ人ファイターが国際的な舞台で戦っているだろう──それが私の願いだよ。
80キロや90キロは難しいけど、タイの軽量級MMAファイターや女子選手は世界のトップになるポテンシャルを持っている。それは絶対だ」
──いやぁ非常に楽しみですが、韓国、フィリピン、中国に次ぎタイ人選手まで強くなると本当に日本人MMAファイターにはアジアで勝つこと自体が、非常に困難になってきますね……。
「私からすれば、そうなることを楽しみにしている。そのためのルンピニーでのMMAマッチだし、ここで試合があることで選手たちがシリアスに組み技を学び、ディフェンスの大切さを知ることになるに違いない。
スタンプがレスリング、テイクダウンディフェンスの重要性を既に見せ、そこが成長したことでどれだけMMAが戦えるようになったかを示している。寝技に対応でき、立ち上がることができるようになれば、タイ人ファイターは無敵だ。そして1月16日に──日本だけでなく、他の国に追いつくための第一歩が踏み出されようとしているんだよ」
■視聴方法(予定)
1月16日(日)
午後8時00分~Fairtex Facebook
■対戦カード
<50キロ契約/5分3R>
ジェイダ・キャトリー(豪州)
アピデー・フェアテックス(タイ)
<バンタム級/5分3R>
ピーター・ダニソー(タイ)
ザンニャル・ハッサニ(イラン)
<ライト級/5分3R>
クイティン・トーマス(米国)
エリス・コップ(ドイツ)