【FAIRTEX】歴史が変わる。2022年1月16日、ルンピニーでMMA。プレム・フェアテックスに訊く─01─
【写真】ルンピニーでMMA、そんな日が訪れることになるとは…… (C)FAIRTEX
2022年1月16日、格闘技の歴史が変わる。フェアテックス・プロモーションによって、サナーム・ムアイ・ウェイティー・ルンピニー──ルンピニー・スタジアムでMMAの試合が組まれることが明らかとなっている。
ムエタイの殿堂でMMAマッチ。オールドスクールの格闘技ファンにとって、これは一大事だ。言ってみると両国国技館の土俵の上でMMAが行われるようなものだ。なぜ、ルンピニーでMMAの試合を行うことにしたのか──フェアテックスのプレム・フェアテックス会場にリモートインタビューを試みた。
ムエタイ400年の歴史が今、変わろうとしている。
──プレムさん、2022年1月16日にルンピニーでムエタイ及びMMAの興行をフェアテックス・プロモーションが行うと発表しました。ルンピニーでMMAの試合を組む、これは歴史が変わることを意味します。
「歴史が変わる。そういってもらえると嬉しいよ(笑)。本当に大きな変化だと思う」
──なぜ、その大きな変化に打って出たのでしょうか。タイ王国陸軍所有のルンピニーは、陸軍が賭け事に関わることで考慮し、競馬と同様にムエタイを軍の所有の施設では行わない方針が発表されたこととも関係していますか。
「その通りだよ。まず陸軍からルンピニーの新しいマネージャーの管轄となったルンピニーでは、コロナ禍でイベントを再開するうえで新しい試みをしようとしているということなんだ。もともとルンピニーはバンコクの中心部であるパトゥムラン区のラーマ4世通りにあった。
それがバーンケーン区という中心部からほど遠い北部に移設されたことは知っているよね?」
──ハイ。ONEがイベントを行うインパクトアリーナと同様にドンムアン空港に近く、中心部からは渋滞もあり相当に遠いイメージがあります。
「そう。そのバンコク中心から離れたルンピニーでは、以前のような活況を取り戻すことができないままでいたんだ。ルンピニーの活動は移転以来、つねに下降していた」
──そうだったのですか。私はムエタイに疎いので、ルンピニーのムエタイ熱が下がるなど想像もしていなかったです。
「とにかく遠い、周辺の環境もバンコク中心部とは違う。そのような状況で、まず新しいマネージャーはルンピニーのイメージアップのために、会場内での賭け事を禁じた」
──!
「ルンピニーに行ったことは?」
──バンコクにあったルンピニーにはファンとして、そして記者として訪れたことがありますが、新しいルンピニーはなかったです。
「なら、あの観客が手を挙げて賭けのやり取りをしているのは覚えているよね」
──もちろんです。もう30年も昔に立ち技世界最強のムエタイを初めて観戦し、試合中はわきにわいている観客が、試合が終了するともうお金の計算と次の賭けに集中して、勝者に全く拍手を送らない現実に大ショックを受けました。
「アハハハハ」
──これでは競馬の馬だと思ったんです。いや、日本では競走馬はもっと尊敬されていると。もちろん、現在はムエタイもショーアップされイベントとして行われることもあるでしょうし、ONEの会場ではあの手を挙げて合図を送るという観客は一切いなかったです。でも、それはONEだからだと思っていました。
「あの行為、手を挙げてというやり取りを会場内では禁じた。ただ携帯やオンラインでの賭けは続いている。立ち上がって、観客席でやりとりするということを禁じたんだよ。
そして2つ目の変革は、裁定方法を変えた。ムエタイでは試合をリードした選手が、最終回は流して戦わない。あの走って距離を取り、戦わないことを許さなくなったんだ」
──何と!! それこそムエタイだと思っていたので、ある意味ショックです。
「5R、ずっとアクションが必要なんだよ。ジャッジの裁定もラウンドごとだ。新しい世代に対して、ムエタイは賭け事ではなくてスポーツエンターテイメント性で訴えていくようになったんだよ」
──なるほどぉ……頭が古いのかもしれないですが、もう自分たちが思うムエタイではなくなってしまうのですね。タイではムエタイも形を変えようとしている。門外漢なので、ムエタイの変化に関して全く知らなかったです。
「そして半年前、ルンピニーからフェアテックスにルンピニーに戻って新しい試みにトライするつもりはないかと私に連絡があった。私の父はルンピニーで20年に渡り、ムエタイのプロモートをしていたけど、賭け事も含めて色々なことに疲れて10年ほど前に身を引いていたんだ。
フェアテックス・プロモーションではルンピニーからの相談を受けて、新しい試みをすることにした」
──それがMMAとの混合イベントということですか!!
「そうだね。ムエタイに関しても5Rマッチは組まない。全て3分✖3Rだ。私は5Rは好まない。グローブもMMAグローブにする。そしてMMAも組む。男子だけじゃない、女子の試合も組むことになる」
──フェアテックスでは、そのような試みを以前に行ったことは?
「ないよ。来年の1月16日が初めてのショーになる。そして月に2回、このフォーマットでショーをルンピニーで開く」
──何か新しいことを始める時に、反対意見が出るのが世の常です。そしてこれだけの大変革です。プレムさんの始めようとしているムエタイ&MMAショーに対し、ネガティブな反応はなかったでしょうか。
「もちろん……もちろんあったよ。だからこそ、そういう人たちの頭のなかを新しくする必要はあった。そのために大前提といて、私のショーはベースにムエタイがあることを説いた。と同時に世界中の人々にMMAにおいて、どれだけムエタイが重要か訴えたいのかを説明した。
MMAではレスリングと柔術というベストなグラウンドゲームの技術が見られるのに、スタンドの打撃になると世界最高のムエタイが見られない。ムエタイ抜きでMMAは発展してきたんだ。我々はグラウンドゲームのトレーニングをムエタイファイターに課し、タイ人がMMAでチャンピオンになれるようにしたいんだ」
<この項、続く>