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【ONE Heavy Hitter】トロイ・ウォーセン戦へ、上久保周哉「北米MMAを組み伏せて攻略したい」

【写真】上久保の独特の感性は、J-MMA界にあってとても貴重だ (C)TSP

1月14日(金・現地時間)にシンガポールはカランのシンガポールインドアスタジアムで開催されるONE Heavy Hitterに上久保周哉が出場し、トロイ・ウォーセンと対戦する。

昨年4月にミッチェル・チャマールと対戦し、RNCワールドで一本勝ちしたにも関わらず試合機会が巡ってこない現状をSNSで訴えたこともあった上久保には、少しで早く、少しでも多く試合をしたい理由があった。

独特の感性の持ち主の大切な人を想う気持ち、そんなセンチメンタルな感情を容赦なく叩き壊しに来る北米基準ファイターとの対戦を彼はどのように捉えているのか。

ABEMAのTHE WONDER取材班とともに上久保の心境を尋ねた。


――なかなか試合が組まれない状態が続きましたが、7カ月ぶりにONEで試合が決まりました。試合が約2週間後に迫ってきたなか(※取材は12月28日に行われた)、現在の心境はいかがですか。

「このコロナ禍において試合が簡単にできないということは理解していました。ただ今回というか、ここで試合がしたかったのは本当に試合を見せたい人がいて。自分の年齢的にもベストなパフォーマンスをいつまで続けることができるのかも分からないですし、そういうなかで自分は第一に、家族に試合を見せたいという気持ちでいました。時間的にも制約があるなかで、ある意味焦りを感じていて、とにかく早く試合がしたかったです」

――家族というのは?

「奥さん、兄弟もそうですし、何よりも親に見てほしかった。親の年齢的にもそうですし、母親は体調が良くなくて、いつまで自分の試合を見せることができるのかという気持ちでいます。本来は現地で観戦してほしいのですが、日本大会でない限りは遠出することは体に負担を掛けすぎるので、直接ではなくても試合を視てほしくて。これが何試合できるか……ということがあったので」

――……。

「入院とかする症状ではないのですが、持病があって……。自分が柔道を辞めると言ったときも、MMAを始めるとき、MMAをできるところまでやり続けるという決断をした時も反対せず、応援をしてくれました。言ってみれば、一番長くサポートをしてくれた人なので、そこに対する思いはあります。今回、試合が決まって母も喜んでくれていたので良かったです」

――そのような想いを抱いてケージインするわけですが、対戦相手のトロイ・ウォーセンは4月に戦う予定でした。しかしスティーブン・ローマンが欠場し代役でジョン・リネケルと対戦して、KO負け。現在2連敗中です。同じ相手なのですが、敗北を重ねたことで4月の時点とモチベーションに違いはないですか。

「トロイ・ウォーセンに対する思い入れというものはないです(笑)。僕はジョン・リネケルでもないですし。バシバシ殴るわけでもないので。リネケル戦のウォーセンもストライカーに準備していたわけじゃなかったでしょうし。あの試合でウォーセンを評価することはできないです」

――とはいえウォーセンの価値はリネケル戦での敗北で落ちたことは確かで、勝って手にできる見返りは減った感はいなめないです。

「まぁ、ONEとか周りの評価はあまり興味がないというか、そこでのリターンを考えてもしょうがないです。それよりも自分がトロイ・ウォーセンという選手と戦って得ることができる経験が大きいと思います。レスリングでの実績……強いレスラーであるということ、そこにきちんとしたグラップリングとストライキングが混ざっているちゃんとしたMMAファイターのトロイ・ウォーセンのような選手と戦う経験が必要なので。

ウォーセンはMMAに必要な要素のレーダーチャートで目立って悪いところがない。そういう選手と戦う必要が自分にはあります」

――つまりONEに多い、秀でた部分と穴が極端な選手でなく、北米流のウェルラウンディット・ファイターとの試合が必要だと。

「ハイ。そうなんです」

――上久保選手は「選択肢が多い選手が有利。なので組み技での選択肢を多く持てる」ように努力していると言われていますが、前回の試合から7カ月を経て選択肢が増えましたか。

「増やしてきたつもりです。と同時に苦手な攻防とも向き合ってきましたし、引き出しは増えてきたと思います」

――ONEで戦いつつ、北米志向でもある上久保選手ですが、グラウンドで頭部や顔面へのヒザ蹴りが認められているONEルールは戦いやすくはないでしょうか。

「顔や頭でなければ、グラウンドでもヒザ蹴りは使えますから。自分は顔を蹴ることができるからヒザを打っているというよりも組んでいるなかで空いている部分……腕を使って抑えていたら、足が空いているから足で蹴る。手が空いていたら手を使うというぐらいの意識でしか、グラウンドでのヒザやパウンドを使っていないです。

頭に当てることができないのであれば、他の部分を攻撃すれば良いかなって感じです。無駄……というか空いている、フリーになっている手足をいかに無駄にしないかが肝です。だからグラウンドでの顔面へのヒザ蹴りが禁じられることで、途端にやり辛さを感じることはないと思います」

――なるほどぉ。辻褄が合っていますね。ONEでの勝ち方も、北米ルールに適当できると。

「ONEルールで試合をしてきた経験は、そのまんま他の舞台に行っても生きるし、仮にONEで戦い続けても生きる戦いかたです」

――ではONEでの評価を気にしないというなかで、ウォーセン戦はキャリアップにどのような意味合いのある試合だと捉えていますか。

「一つの試合です。ONEに来た当初は、自分がタイトルに絡めるようになるとか思ってもいなかったですし、すぐに負けるだろうってぐらいで。自分がどれだけ通用するのかも分かっていなかった。だから、そういう風に尋ねてもらえるようになっただけでも良いことかと」

――ONEでの試合前ですが、MMAファイターとしてのこの試合で勝つことで、どのような評価を得ることができるのかは気になります。

「いや、勝つ気でやっていますよ。勝つことしか考えていないですし、勝てばなんだって良いです。そのためにはどんな手を使っても勝ちたい。とにかく勝ちたいです」

――どんな手ではなく、理想的な試合展開は?

「組み技の部分、組む前のアプローチでも考えてきたことを出したいです。米国……北米MMAを組み伏せて攻略したいです」

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