【LFA】エド・ソアレスに訊く、#01人材発掘大会の在り方「ご当地ファイターの手売りに依存していない」
【写真】エド・ソアレスの話は海の向こうの話ではあるが、目的を同じとして手段を考えると違った形で実現できると信じる (C) MMAPLANET
現在THE 1 TV及びTHE 1 TV公式YouTubeチャンネルで2月21日にLFA202に出場した上久保周哉を特集した動画「UFCに続く、茨の道。LFAへの挑戦──上久保周哉─」が公開されている。
text by Manabu Takashima
上久保✕マテウス・サントスは当然としてショーン・オマリーやアレックス・ポアタン、ブランドン・ロイヴァルらの試合映像も使われた同動画内で、MMAPLANETが行ったエド・ソアレスLFA代表のインタビューも使用されている。
ここではカットされた部分も含め、完全版を文字でお伝えしたい。ブラジル人両親の下、米国で生まれ育ちクラブやファッションブランドの経営者から、MMA界に転向。ブラックハウス・マネージメントの首脳として活動しながら、RFAを経てLFAというフィーダーショーからメジャーへ選手を送り出すことに情熱を燃やすMMA Loverから、LFAの今と日本にはないカジノでの興行の実態などを訊いた。
分かっていたようで、全く分かっていなかった北米MMAの底力を垣間見ることができたエド・ソアレスの数々の言葉だった。
LFAは他のプロモーションと別物だと思ってもらって構わない
──エドがマネージメント・サイドから、プロモーション・サイドに移ったのはRFA、Resurrection Fighting Allianceからだと記憶しています。RFAはレズレクションという名が示す通りUFCをリリースされたファイターの再生の場という意味合いが強かったです。
「私がRFAの社長になったのは第4回大会からだった。RFAの背景にはResurrection──再生という意味があった。年を重ねたファイターだけでなく、UFCを切られたファイターのキャリアを再生するという。素晴らしい理念だった。と同時に若いファイターの発掘というコンセプトも持っていた。RFAはAXS TVで中継されており、AXS TVは他にLFC(Legacy Fighting Championship)を中継していた。多くの人が『RFAはLFAより強い』、『LFAはRFAより良い』と言い合っていたんだ。
私は競争好きな人間だ(笑)。LFCの社長、ミック・メイナードと話したときに『多くの人がLFCの方がRFAより良い。RFAの方がLFCより強いと言っている状況は、好ましくないか?』と話した。そしてAXS TVに『RFAとLFCの対抗戦をAXS TVのベルトを賭けてやろうじゃないか。中継局内でベストのプロモーションを決めるんだ』と持ち掛けたんだ。このアイデアを皆が気に入ってくれて、実現させた。
最初の3試合はRFA✕LFCの対抗戦が組まれ、RFAが2勝1敗だった。そしてRFAのタイトル戦、LFCのタイトル戦を1試合ずつ組み、メインでは現UFC世界フライ級王者でRFA王者だったアレッシャンドリ・パントージャが、LFCフライ級王者ダマッシオ・ペイジを三角絞めで下した。素晴らしい試合だったよ。
結果RFAは3勝1敗で勝ったけど、それ以上にRFAとLFAは一緒にイベントを開いてとても良い時間を過ごせた。そして人々にRFAとLFAのどちらが良いかなどと言われることがなくなるようにパートナーとして、1つの大会を開こうとミックと話し合うようになった。才能ある選手を見出すために、他を寄せ付けない大会を開こうと。ミックも気に入ってくれて、2017年1月13日にLegacy Fighting Allianceの第1回大会を開いたんだ。
一つ確かな過去とは、Legacyっていう名前はResurrectionより良いってことだよ(笑)」
──アハハハハ。
「そしてRFAからはAllianceを頂戴して、LFAをスタートさせたんだ。ミックはハードワーカーで、LFCもまた素晴らしい大会だった。ただしRFAにもLFCにも補わないといけない点があった。二つのプロモーションが一つになることで解決され、強固な人材発掘イベントを開くことができるようになることは分かっていたよ。
ところが2016年9月、LFAの旗揚げを公表した直後にミックはUFCからマッチメイカー職の要請を受けた。こんな素晴らしい機会はないから、私はミックに『このチャンスを逃してはいけない。こっちは問題ないから』と話したよ」
──いきなりパートナーを失うわけですが。
「そうだね。ただ、この時は2つのカンパニーでLFAを行っていくという予定だったんだ。メイナード夫人がミックをサポートするという形で、LFAのプロモート業を続けていた。けれども、ミックは多忙を極めた。夫人も4人の子供の子育てと家庭を守ることで手一杯の状況だった。結果、2018年の5月にミックから会社を買い取り、彼はUFCでの業務に専念しLFAは一つの会社となった。
ミックはキャッシュを手にして、UFCに専念できる。我々も自分がやりたいことに邁進できる。両者にとって理のある結論を見出すことができたんだよ」
──LFAは他のフィーダーショーと違い、一都市や一部の地域でなく全米で大会が行われています。
「LFAは他のプロモーションと別物だと思ってもらって構わない。ただカリフォルニア州からニューヨーク州だけでなく、海外大会も行っている。UFC以外で、LFAほどのイベント開催数を誇るプロモーションは存在しない。我々は年に25度のショーを開いている。6度のブラジル大会と19大会は米国で行っている。
LFAはとてつもない成功を人材育成大会として収めているという自負はあるよ。スタッフの数は決して多くはない。だからこそ家族のような一体感を持って、全米のいたるところだけでなくブラジルも含めて行き来している。そこも他のプロモーションとの違いだ。リングアナのマイク・ケンドールは計量の日はグローブチェックの係りをして、競技運営を支えている。実況のロン・クロックはこの道のベテランで、彼に任せておけば中継は間違いない。家族揃って、プライドを持って仕事に邁進している。可能な限り、LFAが成長できるようにね」
──LFAはRFA時代よりも、人材育成によりフォーカスするようになりました。
「ファイターのキャリア再生よりも、多くの新しい人材を発掘してUFCに行く前に大舞台で戦うための段階を踏ませる方が意義深いと感じたんだ。高校の体育館で500人のファンの前で戦った3週間後にUFCから声が掛かり、マジソン・スクエア・ガーデンのような大会場で1万5000人のファンの前で試合をする。カメラに相対したことがなく、インタビューでどう受け答えをして良いかも知らないから、彼らは大きなショックを受ける。
私はマネージメント業を最初に経験しているから、新しい人材を見つけ出し、次の舞台へ向かわせるためのプロセスを理解している。そして若い選手のステップアップのサポートが成功に通じる仕事に対し、誇りを持っている。才能ある選手を発掘し、彼らの準備を整えて大きな舞台に送り出すことが楽しくてしょうがないんだ。オクタゴンの中だけでなく、メディアの対応やイベントスケジュールの過ごし方などオクタゴンの外でも上の舞台で戦う準備をLFAで経験してもらいたい。LFAではUFCより小さな規模、少ない予算ながらUFCの流れを理解できて、UFCで戦う準備ができるよう心掛けているんだよ。
実はコメンテーターにしても、同じなんだ。ギルバート・メレンデス、アラン・ショウバーン、カブ・スワンソン、マイケル・キエーサ、ラシャド・エヴァンスという多彩な人材が揃っているけど、ローラ・サンコを見てほしい。彼女はコメンテーターとして最初の一歩をLFAから踏み出している。そしてUFCから声が掛かったんだ。物凄くハッピーだったよ。ローラの成功は、我々LFA全体にとっての成功だから」
UFCも分かっている。LFAで場数を踏んで勝っている選手は、次のレベルでやっていける力があると
──ところでLFA活動開始時から、これだけUFCにファイターを送り出す自信はありましたか。
「イエス。実際のところ、最初にUFCに送り出したLFAファイターはシンシア・カルヴィーロだった。彼女はLFA第1回大会に出場し、UFCにステップアップした。UFC、当時はBellatorもあったけど、彼らはLFAが公平な試合を組んでいることを理解していた。我々は全米規模で国際大会を開いているから、ご当地ファイターの手売りに依存していない。多くの団体がチケットの売り上げを重視する結果、チケットの手売りが多いファイターの勝利をプロモーターが願うようになる。彼らはチケットが売れるホームタウン・ヒーローが必要なんだ。そういう状況だと、チケットが売れ続けるようにイージーファイトを組むようになる。
そんなことはLFAはしない。ファイターの力量を測る場だ。UFCも分かっている。LFAで場数を踏んで勝っている選手は、次のレベルでやっていける力があると。我々はイージーファイトを組まないからだ。LFAにとって必要なのは、優れたファイターが競い合って次のレベルで戦えると証明することだ」
──チケット販売力は、資金源として重要だと思います。ご当地ファイターを必要としなくても、チケットが売れるということでしょうか。あるいは他の収入源があって、イベントを運営できているということですか。
「もちろんだ。コンテンツライツ・ビジネスがビジネスの堅調さを築いている。当然スポンサー収入もあるし、チケットセールスも我々の収入源になっている」
──カジノでの興行と合体した興行の仕方というのは、日本にはないので凄く興味があります。カジノがLFAを誘致しているということですよね。
「カジノとは何種類ものディールが存在している。そのなかで主流なのは4 Wallディールと、サイトフィー・ディールだ」
──フォーウォール・ディストリビューションとは映画界にあるやり方ですよね。映画館を会場として使用し、興行会社がチケットセールス等の収入を得るという。ただ、不勉強でスミマセン。サイトフィー・ディールというのは分からないです。
「カジノとイベントの4 Wallディールは、映画界とはまた形態が違うよ。カジノは会場とそのスタッフの人件費、照明、LEDスクリーンなどの機材費を持つ。そして40部屋を3泊、提供してくれる。それ以上はLFAが支払う。スタッフとファイターのミールのある一定額までカジノが持つ。エアポートからホテルまでの移動もそうだ。
LFAはTV製作費、ファイトマネーとコーナーマンを含めた移動費を支払う。保険、アスレチックコミッションへの認可料、当然スタッフの賃金や経費は我々が持つ」
──収入としては、チケットの何パーセントかをカジノは手にするということですか。そうなるとフォーウォール・ディールとはまるで違ってきますが。
「いや、チケットの売り上げは全てLFAのモノだ。明日の大会(LFA202)は2025年になって4度目のイベントだけど、チケット売り切れも、4大会目になるんだよ(笑)。そこに加えてコンテンツライツ、スポンサーもLFAの収入になる」
──カジノにインセンティブはない? ではカジノにはどのような利があるのですか。
「LFAを週末に開くことで、2000人から3500人がカジノやホテルでお金を落とす。食事も酒もホテル内で取るのが大半だ。そしてLFAの場合はUFC Fight Passなどのメディアを通して、カジノの名前を200カ国以上に広めることになるんだ。
サイトフィー・ディールは4 Wall Dealに加え、✕万ドルから✕万ドルをLFAに支払う。そしてチケット代がカジノに入るというモノだよ」
──いやぁ、その価値をカジノ側が認めるのは相当なビジネスでないと……やはり高校の体育館やシティホールでのイベントとは違うということですね。将来的に日本でIRが認められても、MMAイベントが開かれることになるのか……自信は持てないです。対照的に、このディールを結べるということは全米のカジノが、LFAの価値を認めているということですよね。
「LFAのブランド力が上がっていることが理解できる良い例がある。ファイターにはチケットコミッションという制度があって、彼らは手売りしたチケット売り上げの20パーセントを得ることができるんだ。
私は当然のようにLFAの経営状況の全てに目を通しているが、過去3年はチケット売り上げは右肩上がりなのに対し、チケットコミッションの額は下がり続けている。つまり、ファンはLFAの試合を観戦するためにチケットを購入していることになる。誰か特定の選手の試合を見るために、選手からチケットを買うケースが少なくなっているんだ。MMAプロモーションとして、このような状態でビジネスができるようになること。それこそが私の目標だった。
次のビックスターは誰か。そういう目的でLFAの試合を見に来るファンが増えてほしかった。それによってチケット売り上げが増え、成長し続けることができるからだ。今年は最初の4大会、全てソールドアウトしている。凄く誇りに感じているよ」
LFAはUFCと競い合う未来など望んでいない。UFC以上のことができる組織などない
──そのような基盤があるから、常にUFCに選手たちを送り出せるショーを開くことができるのですね。
「今、UFCで戦う選手達の凡そ40パーセントがLFAで試合経験がある(※RFAとLFC時代を含み)。35パーセントから40パーセントのUFCファイターが、LFAから駆けあがっていった。チャンピオンにししても、4人に1人がLFA出身だ(※同様にRFAとLFCを含む)。
さっきも話したようにUFCは分かっている。LFAがどのような試合を組んでいるか。力が均衡した選手同士の力量が測られる試合だ。アンフェアなマッチアップはない。多くのLFAの試合は、UFCレベルにある。彼らがLFAで戦っているのは、UFCと契約が成っていないからに過ぎない」
──全米とブラジルで、グローバルな大会を開く。さらにLFAを発展させて、最高のフィーダーショーでなくUFCと競合するイベントにしていくという野望は?
「ないよ(笑)。LFAはUFCと競い合う未来など望んでいない。UFC以上のことができる組織などない。そこに将来有望な選手を送り出す。それが我々の役割だ。LFAは世界一の人材発掘MMAプロモーションだ。この言葉に、誰も文句はいえないだろう。
ただ、より良いモノにしていきたい。LFAを大きくしたいか? それはしたいよ。コンテンツ・ライツフィーやスポンサーシップ、チケットセールスも増やしたい。それをファイターに回したい。より多くの額をファイターに支払いたい。LFAを大きくしたいが、このビジネスモデルを変えたいとは思わない。好きなことをやっている。規模が拡大しても、自分の好きなことは変わらない。凄く楽しんでいるからね。
UFC以上のMMAプロモーションは存在しない。そのUFCのパートナーとして、世界中から最高の選手をUFCにステップアップさせるアシストをしたいんだ。
LFAのビジネスを大きくステップアップさせてくれたのはAXS TVから中継がUFC Fight Passに代わったことだ。AXS TVは良いチャンネルだった。ただ2019年9月にAXS TVは買収され、新しい事業主は契約を守ろうとしなかった。LFAの中継をAXS TVではもうできなくなると覚悟した時に、ロレンゾ・フォティータとダナ・ホワイトの2人と話し合いの場を設けた。彼らはすぐにUFC Fight PassでLFAの中継ができるようフォーをしてくれたよ。
2019年9月にAXS TVでの中継が終わると、11月にはUFC Fight Passでの配信が始まった。200カ国以上にライブ中継できるんだ。これ以上のステップアップはなかった。だから我々は2020年にコロナパンデミックが起こっても、活動停止期間は3カ月で済んだ。より多くのUFCと契約をしてないハングリーなファイターたちが、試合機会を求めてLFAで戦うようになった。あの時期にイベントを持続できたことが、LFAの価値を絶対化させることになった。凄く困難な時期に、後退するのではなくて前進することができたんだ。UFC、UFC Fight Pasとの関係が築けたのは素晴らしいことだ。彼らには物凄く感謝している。
いつも言っているんだけどね。UFC Fight Passに関しては、一つだけ悔いがある。それは、もっと早くから関係を築いておくべきだったということだよ(笑)。それだけは後悔している。UFC Fight Passでのライブ中継をもっと以前からやっていたら、LFAの成長のスピードは違っていただろう。と同時に今の関係に満足している。このまま変わりなく、成長していきたい」
LFAのやるべきことは変わらない。私は業界の大物になんてなりたいとも思っていない。ありのままでいたいだけ
──現状に大満足ということでしょうか。
「正直にいうと、LFAの在り方を考えればUFC以外にも2つ、3つのビッグショーに選手を送り出したい。UFCだけでなく、他の団体にもステップアップさせたいんだ。でも現状ではUFC以外にこのビジネスを上手くオペレートできているプロモーションは存在しない。あの素晴らしく見えたBellatorですら、活動てきなくなったぐらいだからね。
PFLは……どうなるのか。ここは注視しないといけない。PFLには成功を収めてほしい。でも彼らはまだ成功したわけではない。ビッグショーの成功を望んでいる。そうだ、LFAの才能あるファイターをRIZINにも送り出したいと思っている。そのためにもLFAのやるべきことは変わらない。私は業界の大物になんてなりたいとも思っていない。ありのままでいたいだけなんだ」
──エド、羨ましくなる生き方です。ところでLFAの将来的な展望を話していただけないでしょうか。
「LFAが活動を始めたのは2017年だ。8年間で、202大会を行ってきたことを誇りに思う。MMAの歴史のなかで、8年と少しの活動期間で202度もイベントを開いたプロモーションは存在しない。これからも、これまでと同じように努力し、今年中にヨーロッパに進出する。それが今年の目標だ。年間30大会、16~18大会は米国で。5か6大会はブラジル。ヨーロッパで5、6大会を開くことができれば。そして、2、3回はアジアで開催できるかもしれない。
計30大会、それがLFAにとってパーフェクトワールドだよ。近い将来、世界中で合計30度のイベントを行うことは可能だと思っている。ワールドワイドにLFAを展開し、世界規模で最高の人材発掘の場にしたい。可能ならもっと日本人選手、アジアの選手に出場してもらいたい。UFCと契約していないベストファイターが、LFAで戦っている。これからも、そうあり続ける。
同時に私はいつだって日本人選手がLFAで戦うことは素晴らしいと思っている。日本はMMAの歴史を創ってきた。いつの日か、LFAを日本で開催したい。それが私の目標で、パートナーのスヴェン・ビーン(LFA社長)もそうだ。スヴェンの夢は、日本でLFAを開くことなんだ」
──今日はありがとうございました。では最後に、その日本のファンにメッセージをお願いできますか。
「LFAを応援してくれる全ての日本のファンに感謝している。今大会でシューヤ・カミクボが戦う。コヨミ・マツシマもビザが取れ次第、すぐに試合を組む。日本のベストファイターにLFAで戦い続けてもらうので、母国のファイターを応援してほしい。そして、LFAを見続けてほしい。世界中から選手を発掘し、最高のショーを皆に見てもらうよう努力するので。いつも応援ありがとう」