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【PROGRESS】長谷川賢のJ-MMA強化策=「既存のMMA大会で組まれるグラップリングに資金提供」

【写真】長谷川賢が動き始めた──過去に例のない試み、そして挑戦とは (C)MMAPLANET

過日、長谷川賢から『MMAPLANETで取り上げて欲しいことがあります』という連絡を受けた。早速、どのようなことかを尋ね──PROGRESSという活動を彼が行うことを訊いた。

既存のMMAプロモーションと協力し、非当事者の第三組織として組み技マッチを提供する。それがMMAの強化、プロモーションのサポートとなる。そんな長谷川の活動がMMA、柔術、グラップリングのプログレス(進歩)を念頭におき2022年より始まる。


──長谷川選手からMMAPLANETを通してMMAファンや関係者に伝えたいことがあるという申し出を受け、インタビューをさせていただくことになりました。どのようなことを伝えたいということなのでしょうか。

「ハイ。自分は今、MMAファイターとしての活動と共にTHE 1(ザ・ワン) TVという選手の密着動画を配信するサイトの運営もしており、1年近く経過しました」

──ハイ。そして現状は修斗やDEEP、VTJなどでMVPを認定したり、大会のスポンサードを行ってきましたね。

「ようやく関係者、ファンの皆さんにも認知されつつあるのかという想いもありますし、MMAをやってきた人間として、もっと業界が発展し、選手にとっても良い環境を創るサポートをしていきたいと思っています。結果、日本人選手の強さにつながればと思っているなかで今回、MMA強化のグラップリング=『PROGRESS(プログレス)』を立ち上げることになりました」

──プログレス……進歩という意味になるかと思うのですが、それはグラップリング大会ということですか。

「そこも考えていますが……大会だけでなく、プログレスで既存の大会にグラップリング・マッチを提供したいというのが第一にあります」

──提供というのは?

「出場選手のファイトマネーをこちらで用意させてもらい、オーニングマッチでも構わないですし、MMAの試合の合間でも少なくても3試合ほど、『プログレス』提供のグラップリング戦を組んでいただき、選手のファイトマネーはこちらが用意するという提案をいくつかのMMAプロモーションにさせていただいています。

そうですね……まず、なぜプログレスを立ち上げようと思ったかを説明させてもらった方が、この話は理解してもらいやすいかと思います。

日本のMMAは海外と距離を置かれる一方です。試合結果だけでなく、海外に練習に行った時から感じていたことなのですが、このままでは追いつけなくなるという事例はいくつもありました。そのなかでも選手として、米国の壁レスリングの技術レベル、普及の差が絶対的にMMAでの強さに比例していると思うんです。そして、この差はどんどん広がっていく。そういう危機感を持っています」

──ハイ。

「そこでプログレス・ルールとして自分たちが普及させていきたい、MMAで強くなれるためのグラップリングルールを考えました」

──どのようなルールでしょうか。

「平たく言えば、打撃のないMMAです。テイクダウン、スクランブル、トランジッション、サブミッションがノーギ柔術でもサブオンリー・グラップリングでもない、現状のMMAを考慮したポイント制のグラップリング競技して行っていく。

米国で行われているフォークスタイル・レスリングを採り入れ、ブラジリアン柔術を加味しつつ、MMAで有利なポジションがポイントとなる。それによってMMA選手のレベルアップがはかれるのではないかと。まずルールの概要を見ていただけますか」

──ハイ。

■プログレス・フォークスタイル・グラップリング主なルール

【試合タイム】
5分2R。将来的にタイトルマッチは5分3R

【決着方法】
①一本:グラウンド、スタンドでの関節技、絞め技 
②時間切れ=ポイント

【ポイント】
・テイクダウン=2P
・リバーサル(グラウンドでの上下の位置関係が入れ替わる攻防)=2P
 (レスリング流のあらゆるリバーサル。柔術流のあらゆるスイープ。バックを取られていて、前方に落とし上を取った場合。バックグラブを許しており、胸を合わせてトップを取った場合、テッポウ、マウントブリッジも含む)

・スクランブル(グラウンドで上下にあった位置関係が、スタンドに戻りリスタートされる攻防)=1P
 (テイクダウンされた選手、引き込みをした選手がスクランブルで立ち上がり、正対して離れる)

・バックグラブ(両足フック、四の字フック)=2P
 
・相手が引き込んだ場合=2P

──まさに打撃のないMMAですね。

「MMAで有効なサブミッションは全て認められ、北米MMAで有効な投げも全て認められます。ただし、グラウンドになると両手でのサブミッションを仕掛ける際の腕ノクラッチは禁止。それにより殴れる抑えという部分を強化できればと考えています。このルールのグラップリングが浸透すれば、MMAが強くなる。その想いで始めることなので試合場はリングやマットでなく、ケージだけになる。そこは拘っていくつもりです。

言ってみると、このルールに則した練習を各ジムでしていただくだけで、MMAの強化につながる。そういうモノになると考えています」

──このルールの大会開催を視野に入れつつ、既存のMMAプロモーションで費用はプログレスが持つということで試合を提供していくと?

「ハイ。MMAの試合間隔が空いてしまった選手に、プログレスで提供した組み技に出てもらうこともできます。本来ならMMAの方が良いかもしれないですが、自分たちがMMAマッチを提供することは既存のMMAプロモーションと共に発展したいという方針に反することですし、グラップリングの第三者組織としてMMAプロモーションから独立した存在であり、非当事者として付き合っていきたいという考えです。

ファイトマネーに関しても、プロが組み技マッチに出るということを念頭において支払っていくつもりでいます」

──非当事者&第三者組織として関係していく理由はどこにあるのでしょうか。

「まだグラップリングが根付いてない、その一言につきます。日本でグラップリングの独立した大会を主催してもマネタイズを確立できない。そこは確実にあります。よって既存のMMAプロモーションに提供ということで、カード編成も話し合わせていただき、選手を選出していこうかと。

プログレスに出場する選手目当てでも、チケットを買ってもらえるとプロモーションの収支面でも貢献できるのではないかと。柔術の選手が出場することで、プロモ―ションが新たなファン層を取り込むことになり、裾野を広げることになると思います。

加えて『MMAだとAという大会には出られないけど、グラップリングなら大丈夫、出たいです』という選手もいるかもしれないですし、言い方は悪いですけど治外法権的なマッチメイクができればと。そこを軸に置き、プログレス・ルールだけでなく、コンバット柔術とノーポイント&サブオンリーマッチも実施していく予定です。

これはさきほども言ったようにグラップリングのイベントが、まだ成り立たない中でMMAプロモーションが用意してくれた場で、柔術家やグラップラーにプロとして戦ってもらう機会を提供したいという想いからです。プロとして柔術家やグラップルの選手にも出場をお願いしていきます。

プログレス・ルールはADCCを目指す選手にも絶対的に有効ですし、スクランブルを身につけたい柔術家の人たちにもトライしてほしいです。またサブオンリーに出ることで、MMAファイターも現在進行形のフットロックを試合で体験でき、MMAに生かせると思いますし。

コンバット柔術はMMAファイターと柔術家、グラップラーの接点となるルールです。この分野は異種格闘技的な面白さがあり、もっと発展させることができるのではないかと考えています。2つのノーポイントのグラップリングは、ケージという空間で戦うことで、広いマットでグラップリングをしないグラップリングという状況を排して、より積極的な試合にならないかという考えもあります」

──新しいルールと長谷川選手が門外漢の組み技ルール2種を実施していくわけですね。

「ハイ、何もかも未知数です。なので競技として全体を俯瞰してみていただく立場に礒野(元)さんについていただけないかと考えています。プログレス・ルールの試行や詳細に関しては既に植松(直哉)さんにお会いし、ルール面だかでなく首都圏、関西、名古屋でのレフェリーや副審についてアドバイスを頂き、協力をしてもらえるようになりました。

コンバット柔術とサブオンリーに関しても、自分たちとしてもこの分野の発展に役立てないかと高橋Submission雄己選手とミーティングを行い、意見交換を続けています。

Martial Worldの梅田久也氏と手を守るための装備の話し合いも

また実際にケージでグラップリングの練習をしている選手は分かると思うのですが、本当に手に甲が痛いです。

だからMMAグローブを使う人もいるかもしないですが、ケージから手を守るサポーターをプログレス用に開発できないかと、マーシャルワールドさんとも相談させていただいています」

──なるほど、ファンデーション創りが進んでいるわけですね。

「あくまでも水面下でしたが、この記事が掲載されることで公言していけるかと(笑)」

──ハハハハ。では独自の大会に関しては、どのようなプランがあるのですか。

「ここはまた着手できていませんが、プロの試合を3つのルールで組む前にアマチュアのトーナメントを開けないかと思っています。ただし煮詰めるべきことが多く残っているので、あまり現状では話せる状況にないのが現実です」

──分かりました。では既存MMAプロモーションに提供していくという部分ですか。具体的な話はあるのでしょうか。

「ハイ。まず1月23日に大阪で開かれるGLADIATORから、試合の提供をスタートさせられるようになっています。既に櫻井(雄一郎)代表とも話をし、現状として対戦カードの相談に入っている段階です。

あとは4月のHEATですね。志村(民雄)代表とも話しています。首都圏以外、地方の大きな都市で継続的に大会を開いている両プロモーションに協力させていただくことで、選手のサポートになれれば、と」

──なるほど。良い方向に進むことを願っています。

「ありがとうございます。こういうとアレなのですが、1年間活動をしてきて……ただスポンサードを行うよりも、より選手のためになる。そういうコトをして、新たな関係を築いていきたいという想いも強くなりました。

ここでテイクダウンを1つ取れれば、ここで抑え込むことができていれば……そういう試合で、日本人選手が海外勢に負ける。逆にテイクダウン1つで負けた。抑え込まれて負けた試合もあります。そこを覆すことができる未来を手にしたい。

その一歩としてプログレスという活動を始めるので、今決まっているGLADIATORやHEAT以外に、プログレスに興味を持っていただけるMMAプロモーションの関係者の方がいれば、自分に連絡をしてほしいです。そこをMMAPLANETで発信していただければと」

──了解しました。必ず明記させていただきます。今日はありがとうございました。最後にプログレスに関して、何か強調しておきたいことはありますか。

「自分はMMAファイターですが、グラップリングや柔術が強くなることが日本のMMAの強化に欠かせないと思っています。柔術家、グラップラーの人にも参戦してもらって、MMAファイターと鎬を削りあって欲しいです」

<プログレス関連の連絡はコチラへ>

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