お蔵入り厳禁!!【IRE05】掌底を叩き合った直後のコンバット柔術対談──寒河江寿泰✖杉本孝─01─
【写真】掲載の時期を逸していた対談、結果的にこのタイミングがベストという瞬間が訪れたような気がします。杉本選手、寒河江選手、長い間お待たせてしてスミマセンでした(C)MMAPLANET
長谷川賢によりPROGRESS計画が明らかになり、IRE06ではコンバット柔術の試合がABEMAで中継される。日本のグラップリング界の変革の時が、図らずとも訪れようとしている。
そんなタイミングだからこそ、8月に収録された寒河江寿泰と杉本孝の対談をお届けしたい。8月14日に開催されたIRE05 のコンバット柔術70キロ級Tの準決勝で相対した練習仲間の両者は、実際に掌を叩き合った後にコンバット柔術の課題、可能性、そして性格について話してくれた。
お蔵入り厳禁、古くて新しい──温故知新グラプリング=コンバット柔術について両者の掌底を交換した後の、意見交換に耳を傾けてほしい。
──正直な印象を述べさせていただくと、杉本選手は性格が悪い(笑)!!
杉本 なぜ、ですか!?
寒河江 そうなんですよ(笑)。
──ルールのギリギリをつく掌底が、グラウンドになる前や跳びつきガードから反則で出てしまったり(笑)。
杉本 アハハハハ。
寒河江 でも、何度も掌底を貰って出ることができなかったので、してやられた感はあります。
杉本 掌底がなければ2、3回取られていると思います。そういうエントリーがありましたけど、あのまま入られると取られていたなというのは練習を一緒にやっているので感覚的にありました。掌底があることで射程距離が変わるような形で取られずに済んだと思います。あと10分という試合時間は実力通りになることが多いと思います。5分だとジャイアントキリングが起こる可能性も増えるでしょうけど。そう考えると、掌底がないと僕はやられていたはずです。
──準決勝の直接対決に関しては、どのように試合を組み立てようと思っていましたか。
寒河江 杉本さんが練習で掌底を打つところを見たこともなかったので、柔術寄りの試合になると高を括っていました(笑)。そうしたら掌底がバンバン来たので、ちょっと面喰って試合は運びに影響が出ました。
──まだコンバット柔術のルールで戦ったことがある日本人選手は10人程度かと思われるのですが、実際に戦って技術的な部分で気付きはありましたか。
寒河江 距離をつめてパスをするとか、そういうタイトな技術が必要だと思いました。あとラバーガードとか杉本さんも狙っていたと思うし、僕もやりたかったですね。
──それこそエディ・ブラボーが、MMA用にパンチを受けないポジションとして編み出したのがラバーガードですからね。個人的に両者の対戦では見てみたかったです。
寒河江 それが今日の僕は掌底があることで、ラバーもクローズドガードも取れなかったです。壁があるからなおさらかと思いました。
杉本 力の差があればクローズドに入れて、頭を下げさせることも可能だったと思いますけど、ある程度の技術力と力が拮抗していると、それすら難しいということが分かりました。結果、MMAと同じで柔術は防御に使い、上の選手が掌底を落とすという展開が多かったと思います。それにクローズドでも、しっかりと取れないと掌底だからなんとかなったけど、グーなら終わっていた試合もあるかと思います。
──10thPlanet柔術家として、ラバーは狙っていたかと。
杉本 そこは本当に狙っていたのですが……。掌底有りだからこそ、バックを取れるのが一番ですね。
──掌底有りという部分では、下からの掌底が全般的に目立っていた。これが嫌がらせ程度で柔術らしさをスポイルしてしまう要因になったというのもあるかと思います。
杉本 僕らがMMAをやっていないからでしょうね。MMAをやっている選手の方が、下から掌底という手段はなかったかと思います。あとMMAの経験者は距離を測ったパウンド的な掌底が打てますね。
寒河江 そこを考えるとグレイシー柔術、護身としての柔術、その原点が必要になってくると思います。
杉本 一本を取らせない、殴らせない技術ですね。
──と同時に、皆が掌底の焦点を当てすぎたというか競技的には掌底のあるグラップリングというようよりも、組みのあるスラッピングという試合が多かったように感じました。
寒河江 その通りだと思います。
杉本 MMAの経験のある選手は、掌底があっても前に出ることができて、柔術の人間は下がってしまった。僕自身、パラエストラTBの廣瀬(貴行)先生から『ラバーや三角、オモプラッタは叩かれないように仕掛けることができても、他の技は殴られるつもりで振り切っていかないと』という風にアドバイスを受けていたのですが……。
寒河江 距離を潰さないと、入れないですからね。
杉本 1発、2発は叩かれても、グッと入るように戦わないといけなかったです。あと叩く方も、普段はやっていないことなので体力の消耗に繋がっていましたね。
寒河江 掌底があることで、入って来る情報が多くなって神経的にも疲れました。
杉本 打撃あることで気を付けることが増える。同時にもっと上手く掌底を使えることができれば、バックマウントだとかマウントから極めやすくなるのかとも思いました。
──28年も昔にサンパウロのベーリンギ柔術で見た練習は、掌底を入れて道着はパンツだけでやっていたのを思い出させる話ですね。原点かもしれないし、そこに最先端の技術をどうハメ込むことができるのか。とても楽しみなコンバット柔術ではあるのですが、優勝をして寒河江選手はどのように感じられましたか。
寒河江 優勝して嬉しいというのはないです。時間内に取っていないですし、オーバータイムになってのサドルと50/50は自分の得意なところなので。レスリングの練習もしてきたので、そういう勝負もしたかったです。
杉本 あとはグラップリングは極め合いなのに、立ちレスの膠着が続くのは違うかと思いました。
──1分の立ちが続くと、じゃんけんで勝った方が50/50かサドルを選ぶことができるというルールも見られました。
寒河江 実際、それで1回戦は勝ったのですが、申し訳なかったです。あの展開になって、極めないとそれは真剣勝負じゃなくなりますし。でも、ああならない試合をコンバット柔術としてする必要があったかと思います。
<この項、続く>