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【TORAO26&GLADIATOR016】闘裸男→グラジ、連戦──神田T800周一─01─「冨樫流首相撲と神田返し」

【写真】良い形で2021年を戦い終え、2022年がすぐにスタートする神田(C)SHOJIRO KAMEIKE

5日(日)、広島市港区のBLUE LIVE HIROSHIMAで開催されたTORAO26で、神田T800周一がキシシに判定勝ちを収めた。
Text by Shojro Kameike

神田はスタンドでは首相撲やワキ差し、グラウンドになるとバックテイクやスイープなど、得意とする組みの全局面でキシシを制圧している。
そこで、試合の中で興味深かった首相撲とスイープについて訊くと、茨城から始まり地元・広島に居を移して活動している神田らしいキャリアの構築が見えてきた。


――キシシ戦の勝利、おめでとうございます。勝ち名乗りを受けた時の笑顔が印象的でした。

「ありがとうございます。笑顔……それは地元クオリティかもしれないですね(笑)。地元の広島で勝てたことの安心感というか」

――地元クオリティ、ですか。神田選手は大阪など近畿圏で試合をすることも多いですが、その際はアウェイ感などもあるのでしょうか。

「アウェイ感はありますね。まぁ、アウェイでは応援はされないけど戦うだけでいいから、気楽っちゃ気楽です(笑)。今回は地元での試合で、KOや一本で盛り上げる試合ではなかったですけど、『勝ったぞ!』っていう手応えはあったので」

――今回のキシシ戦では、組みの展開がとても興味深いものでした。スタンドでも組めば両腕を差し上げたり、あるいは首相撲からヒザを突き刺したりと。

「はい。キシシ選手はギロチンが得意なので、まず組んだらバンザイさせて、腕を首に回らせないようにしていました。あと、首相撲は冨樫流です」

――冨樫流? パラエストラ広島の冨樫健一郎代表から学んだものなのですか。

「茨城にいた頃(かつて神田は茨城に在住、T-BLOODに所属していた)は、組みではワキを差すだけっていうシンプルな技術体系だったんですよ。広島に戻ってきてからは冨樫(健一郎)さんと田中半蔵選手、この2人が首相撲を要所要所で結構使ってくるので。僕もそれをマネして少しずつ使っているという感じなんです」

――あの首相撲は、広島に戻ってきてからプラスされた技術だったのですね。

「いつも冨樫さんからは『隙間産業で勝っていかないといけない』と教わっています。首相撲ができない相手もいるから、要所要所で使うようにと。この首相撲とワキ差しの組み合わせで、上に行って下に行って――それだけでも展開が変わってきますからね」

――神田選手が首相撲を仕掛けると、キシシ選手も首相撲で応戦してきました。

「そこで組み負ける感じはしなかったので、これは良いなぁと思いました。やっぱり組んで勝てると分かったら、リスクも少ないですし」

――もうひとつ興味深かったのは、1Rで尻もちを着かされたあとのスイープです。SNSでは『神田返し』という名称を挙げられていましたが……。隅返しにも見えたのですが。

「あれが神田返しです(笑)。隅返し的であるかと……。一般的なフックスイープとは逆で、1回背中を見せて相手が追いかけて自分の体に乗ってきた時に、外側の足で返す感じです。あのやり方だと、掛けていないほうの足のブリッジも使えるので、返す時に高さが出るんですよ」

――一般的なフックスイープというのは、下になってから相手と向き合い、両足を掛けて返す形ですね。

「もちろん両足を掛けたほうが、返す強さはあると思います。僕も真っ直ぐコケたらフックスイープを使うことが多いですね。でも半身でコケたら、神田返しのほうが意表をつくこともできて、かつブリッジと反転の力で高さが出るので、結構いけるんですよ」

――どのように尻もちを着かされたかで、スイープの形を選択するわけですか。

「もともとテイクダウンされているので、そのままバックを取られてもいいとは思わないけど、失うものはないですよね。自分から1回背中を見せて、もう1回向き合って足を掛けてから返すというのは。尻もちを着かされたらフックがセットになります。もちろんヒザを触らせずにスプロールできたら一番良いんですけどね。でもヒザ裏を持たれて倒れると思ったら、そのままスイープできる形に倒れるほうが良いので。

これもよく冨樫さんに言われるんですけど、テイクダウンに対して頑張って最後に朽木のように倒れてサイドに行かれるのは嫌じゃないですか。倒されると思ったらすぐに体を丸めて、フックを作る。そういう選択肢になると思いますね」

――では、あえて神田返しの形に持ち込んでいるわけではないのですね。

「はい。テイクダウンを切ることができれば、そっちのほうが良いですからね。まず尻もちを着かされないほうが良いです。今回もスプロール、相手のテイクダウンをいなす練習をしていたんですよ。本当はそれを見せたかったんですが、相手がケージ際で2連続テイクダウンに来て。その2つめでヒザ裏を取られて、自分も尻もちを着いてしまいました。

ただ、あの形で返すことができなくても、隙間ができてワキを差せるチャンスも出てくるので。背中を見せた状態から向き合うことで、ワキを差しやすくなる。他にも、いろんなリカバリーができやすい状態なんですよ」

――なるほど。なかなか見られないスイープだと思うのですが、神田選手ご自身が練習で、この技を食らったことはありますか。

「あんまり見ないですよね。すごく使いやすいんですけど、確かに僕はやられたことがないです(笑)。嫌々逃げていたら、自分の中で形になっていったんですよ」

――嫌々逃げていた、とは?

「アハハハ、生き残るために生まれた技なんです(笑)。T-BLOODの中では僕が一番実績もないし、体も小さかったんですよ。だから、ずっと練習でやられるなかで逃げる展開は数をこなしてきました」

――上を取る、あるいは立ち上がる。それが現代MMAですからね。

「そうですね。カレッジレスリングというほどではないけど、それも冨樫さんから言われています。まず立ち上がれないと話にならないから、って」

<この項、続く

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