【Fight&Life】セルジオ・ペティスとの対談後──の平本蓮「今、本当に格闘技が好きなんです」
【写真】帰国後の隔離措置期間も終え、練習を再開している平本蓮(C)MMAPLANET
23日(木)発売のFight&Life#88に堀口恭司を破ったセルジオ・ペティスと平本蓮の対談が掲載されている。
ウィスコンシン州ミルウォーキーのルーファスポーツで合流し、僅か3カ月で絶対的な信頼関係を築いた両者の対談直後、正確に書き記すとセルジオのZOOM退出後に平本のMMAが如何に変化したのかを尋ねた。
近い距離で戦えるキックボクシングでの強さをスポイルすることなく、MMAに生かす道筋をセルジオとの練習で見つけ出した平本は「キックボクサーは打撃じゃ負けないとかっていうプライドを捨てて、MMAを見ないとダメだ」と言い切った。平本のMMA IQの高さがハッキリと見て取れた──未収録、対談後記的なインタビューをお届けしたい。
──セルジオ・ペティスとの強い絆が対談で感じられた平本選手ですが、3カ月のルーファスポーツ滞在中、MMAにおける打撃に関して考え方が変わった部分はありますか。
「そうですね、MMAグローブは小さいのでブロッキングのスタイルは厳しいのかと思っていました。僕はキックの時にガードを続けて、小さく返し相手を疲れさせたうえで殴るという戦いを好んでいて。セルジオはソレと似たような感じのスパーリングをMMAでもしていました。『あっ、テイクダウンがある戦いで、これができるんだ』って素直に感じて。
それができると下がらずに戦える。これは堀口選手だけでなく、試合だろうがスパーリングだろうが下がらない相手とやるのって凄く疲れると思います。だから──なら、堀口選手の動きはこうなるだろうし、だったらこうしようという風にセルジオに伝えることができました。加えて、堀口選手はATTのなかでも、相当に強い選手に分類されると思うんです。そこに付け入る隙を見つけることができるじゃないかとも思っていたんです」
──それはどういうことでしょうか。
「あれだけトップ選手が集まっている中でそういう位置にあるからこそ、自信があり過ぎる。それが弱点になることもある。どこかで、過信することがあると予想していたんです。MMAでトップになっていない僕が、こういうことをいうのもアレなんですけど……堀口選手はその油断が試合で出てしまうタイプなんじゃないかと。
自信があるのは凄く良いことだと思うんです。でも、そこがあり過ぎて徹することができない部分が出てくる。そうすると神経が研ぎ澄まされることが試合中もなくなってくる。そういうことも話してはいました」
──なるほどぉ、そういう心理面も考えていたのですね。と同時にセルジオは貰ってもビビらなかったです。
「そこなんです。バシンと貰っても、ガツンと返す。堀口選手がこれまで国内で戦っていた相手とは、そういう面でも違ったはずです。僕も日本で練習をしていると、まず打ち合いになることはないです。すぐに組まれます。でも、打撃を見せないでテイクダウンを狙ってこられても凄く見やすいです。だから防御もしやすい。それがルーファスポーツではテイクダウンの方が得意で、打撃で上手くない選手を殴っても動じない。
パンチを被弾しても、1発ぐらいじゃビビらないです。そういう点でも自分に必要な練習がルーファスポーツには揃っていました。今からするとですけど、転向と同時に来たかったです。日本で練習してきたことが遠回りだったと感じる一方で、そう思える練習を日本でしていたからこそ、ルーファスポーツがハマった。だから遠回りじゃなかったとも思っています」
──日本での準備期間があり、ルーファスポーツでの気付きの多さがあるという感じでしょうか。ところでセルジオが下がらないで、接近戦でブロッキングを駆使して戦うことで平本選手自身がMMAを戦う上で見えてきたことはありますか。
「MMAで接近戦を戦える人の反応の速さは、もう才能というか生まれつきだと思います。対して遠い距離は練習すれば、多くの人が対応できるようになる。近い距離は本当に怖いですし、反射神経が良くても自信がないとできないです。
ルーファスポーツで気付いたことは、その速さがあればテイクダウンにも反応できる。だからMMAでも接近戦は可能で、K-1時代にあの距離が得意だった僕の技術が活かせることができるんじゃないかと思うようになり……明日が明るいというか(笑)」
──つまりテイクダウンの攻防に自信がつけば、平本選手はその距離でMMAを戦えるようになると?
「パンチで応戦するばかりでなく、殴って差すという動きもできるようになると思いますし。UFCとか見ていると、そういう戦いも多いですよね。ボクシングって本当に綺麗で、パンチの技術は素晴らしいです。でも打撃の最先端はMMAだと勝手に思っています。
EVOLVEでノンオー・ガイヤーンハーダオとかとスパーリングをしても、パンチをほぼほぼ貰わないでいることができたんです。基本、キックのスパーリングだったら行けるっていう感覚なんで。でも、ルーファスポーツではセルジオにカウンターのフックを貰って……『スゲェ(笑)』ってなりました。この近い距離で打てて、テイクダウンもできる。自分の目指すべきスタイルは、ここにあると思いました」
──それは素晴らしい邂逅でしたね。
「MMAは人を倒す術(すべ)……というか、ボクシングやキックボクシングより技術力がある。UFCとGLORYを見比べると、MMAファイターの方が打撃に幅がありますよね。引き出しも多い。それだけやるべきこと、対処すべきことが多くて、幅が狭いと動きが単調になってMMAでは勝てない。
キックボクサーは打撃じゃ負けないとかっていうプライドを捨てて、MMAを見ないとダメだと本気で僕は思っています。素直にセルジオの動きを見て『格好イィ』ってなりましたし、リーチの長さも僕と似ています。セルジオのように近い距離でコントロールできるMMAを戦えるよう仕上げていきたいです」
──いやぁ、その練習の成果を見せる場ですが、以前にデューク・ルーファスにセコンドについてほしいので、外国人が入国できるようになってから試合をしたいという風に話されていました。
「大晦日は無理ですよね。来年にスライドという形になったので、年が明けるとミルウォーキーに戻って、デュークたちと創っていきたいと思います。日本と米国を行き来しながら両方に拠点を持って指導してもらうということも考えたのですが、それだとバランスが崩れそうなのでミルウォーキーにしぼって試合に臨もうと思います。本気で強くなる。そこに拘りたいですし、自分が強くなれる場所で練習して試合をしていきたいです」
──対談でもセルジオが『感情、技術、全て共有して一緒に強くなっていきたい。僕が蓮に教えてもらったように、柔術、レスリング、全てを教える』と言ってくれていましたね。
「セルジオの教え方が凄く好きなんです。力の使い方を知っている人で、寝技を力任せてでやっている時とかに、絶妙のタイミングでアドバイスをくれます。力を出すタイミングを教えてくれて。これをやっているとパワーもつくと思っていたら、寝技の力がついてきたというか……。セルジオは余白を残した力の使い方ができます。
でも、それって打撃も同じなんです。当てるところ、掴むところ、そういう意識でなくて体の軸を意識する。そうすると打撃でも組み技でも、しっかりと力を無駄なく使うことができる。そういう感覚をセルジオとの練習で掴むことができました。そして僕もセルジオには、『寝技で教えてくれた力の使い方と、僕が打撃で言っている力の使い方は同じなんだ』って説明することがありました」
──まさに「感情、技術の共有」ではないですか!!
「ハイ。だから練習がはかどり、この短期間で強くなることができたと思っています。僕、キックボクシングの頃と比較しても、今の方がずっと努力できているんです。胸を張って自分はファイターだと言いきれる自信もあります。
セルジオがインタビューで『家にいる以外、ジムにいる』って言っていましたけど、僕も隔離期間を終えて練習に行く日が楽しみでならなくて。今、本当に格闘技が好きなんです」
※セルジオ✖堀口戦を実際に戦った本人とコーナーマンを務めた平本が振り返り、日々の練習で築かれた信頼関係の強さがハッキリと感じられた対談が掲載されたFight&Life#88は12月23日(木)より発売中です。