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【Special】月刊、青木真也のこの一番:2月─その弐─サンドハーゲン✖エドガー「本当に強い」

【写真】勝ち方がえげつなかったサンドハーゲン (C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

2021年2月の一番、第ニ弾は6日に行われたUFN184からコリー・サンドハーゲン✖フランキー・エドガー戦について語らおう。


──青木真也が選ぶ2021年2月の一番、2試合目をお願いします。

「コリー・サンドハーゲン✖フランキー・エドガーです」

──なんとなく意外な気がします。青木選手はフランキーに想い入れがあるようにも思えないですし。

「エドガーは僕的に言うと、BJに勝ったのが大きい選手です」

──2010年4月のUFC112と8月のUFC118における2連戦ですね。MMAを変えた一戦といっても過言でないと思います。

「そもそも、僕はあの2試合でBJが負けたと思っていないですし」

──ということなんですよね。あの時、『なんだ、これは戦いか』と思いました。実際、BJにインタビューした時にはフランキーのことを「あれではUltimate Fightingではなくて、Ultimate Fitnessだ」って批判していたんです。

「倒すんじゃなくて、ポイントゲームをあそこまで明確にしたのはエドガーが最初でしょうね。しかも、ジャッジがその手数とテイクダウンを取ったということで、MMAの潮目が変わった」

──ハイ。あの時、マモル選手から『あの戦いを受け入れないと、進化についていけなくなりますよ』と言われたことがあって。BJが倒せなかったのは事実で、自分のやりたいことをやらせてもらえなかったんだと思うようになったんです。

「あぁ……僕は、あの時もエドガーを認めることはなかったです。戦っていないじゃんって。でも、グレイ・メイナードとの2試合で変わりました」

──2011年1月のUFC118と10月のUFC136における2連戦で、ドローとKO勝ちでした。

「試合つまんねぇじゃんってのが、凄い試合をやって。ああいう戦いができる人間が、ポイントゲームでBJに勝った。もうこっちも文句は言えないし、自分のやっていることに言い訳でもできないなって」

──なるほどぉ。いやぁ、そうやって認めざるを得なかったわけですね。

「もうね、あの試合をやられると──ですよ。ただ凄い絶対手王者のイメージがあるけど、実はBJとメイナードの3試合だけなんですよね、防衛したのは」

──それが10年以上前で、サンドハーゲン戦の負け方を見ると……。もう、良いのではないかと思ってしまいます。

「でも、その前にはペドロ・ムニョスに勝っているし。負けたといってもホロウェイとも5Rを戦っていますしね。UFCがこういう厳しい試合をやらせるのも分かります。厳しい試合を組んでいますよ。

でも39歳か、鉄人ですね。ここまで来たら、やれるところまでやりたいのかなって思います。と同時に、今回のように木っ端みじんにやられてしまうと、スッキリするのかなっていうのもありますね」

──木っ端みじんにしたサンドハーゲンについては。

「いや、強いですよ。強い。サンドハーゲンのスタイルは、最後は蹴りに繋げるんですよね。タッチボクシング&蹴りというスタイル、あれはなかなかないですね」

──これはそんな言葉はないのかもしれないですが、コロラドMMAというか。2005年以前にキック&ムエタイと柔術を融合させたような立った構えで組まれると下になって柔術をするというドウェイン・ラドウィック、クリスチャン・アレン、アルヴィン・ロビンソン、ドナルド・セラーニの系統というか。

「日沖発っぽい感じですか」

──当時は今のセラーニや日沖選手よりテイクダウンには行かず、立って打撃、組まれると下になるという。それがコロラドのローカルプロモーションでK-1やムエタイとMMAのミックス興行だったRing of Fireという大会で育った選手に共通している部分ではありました。

「サンドハーゲンは、その系統ということなのですか」

──ハイ、クリスチャン・アレンの教え子なんです。

「へぇ、そうなんだぁ。それは面白いですね。なんか、パンチはリーチがあって手打ちっぽくて、タッチボクシングに蹴りが混ざっている。最後は蹴りで攻撃を終えるというスタイルで。何か、独特だと思ったんですけど、そういう系統があったのですね」

──もちろん、そこに蹴りが得意、パンチが得意というのはあるかと思いますが。

「それでサンドハーゲンは蹴りで。まぁ何といってもバンタム級では異常って言って良いほどデカいですね。180センチだから、ジャブも腰を入れなくて打てるし、蹴りも弾くように蹴っている」

──相手を触らせないですね。

「そうなんです。アルジャメイン・ステーリングには触られてやられましたけど、突き放す感じなんでムエタイっぽくはないです。捌いて横に立って、強振をするというのではない。ヒザもその場で打つようなヒザ蹴りで。ここにきて、トップコンテンダー争いに厄介なのが出てきたと思います。

本当に強いです。戦っている相手も強くて、マルロン・モラエスに勝つって尋常じゃないですからね」

──田中路教選手もステーリングに負ける前から、「一番強いのはサンドハーゲン」というようなことを言っていました。

「そうなんだ!! ポテンシャルがそこまである……やっぱ、そうなんだ。技もそうだし、あのサイズですよね。61キロでライト級でも長身だろうって。エドガーはライト級であれだけ出来ていて、でも体重を落とすと──ライト級ほどでなくなったのが、また興味深いですね。どの階級が自分に一番あっているのかって、また分からないモノです」

──そして今週末にはピョートル・ヤン✖アルジャメイン・ステーリングがあります。青木選手の見立ては?

「逆にどう思いますか?」

──短時間ならステーリング、3R以降になるならヤンかと思っています。

「あっ、そうなんだ。僕はステーリングが行っちゃうんじゃないかと思っています。レスリング力で倒してしまうし、ヤンがそれほどトップどころとは余り戦っていないというのを見てしまうんですよね」

──ジョゼ・アルド、ユライア・フェイバー、ジミー・リベラは十分に強いとは思うのですが、それでもサンドハーゲンとは違いますね。

「アルドも落として来た時ですしね。微妙な感じはします。ピョートル・ヤンもそうだし、アルジャメイン・ステーリングともう1度やると、サンドハーゲンは勝てる力があると思います。どっちと戦っても面白いでしょうね」

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