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【UFC259】ケニー戦前のドミニク・クルーズ─01─「成長するスピードは僕らの時代とは比較にならない」

【写真】どうやらスマホを手に持って、Zoomインタビューに答えてくれていたようなドミニクだ(C)Zuffa/UFC

6日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されるUFC259「Blachowicz vs Adesanya」。

メインのUFC世界ライトヘビー級選手権試合=王者 ヤン・ブラボヴィッチにUFCC世界ミドル級王者イスラエル・アデサニャが挑む一戦を筆頭に、UFC世界女子フェザー級選手権試合=王者アマンダ・ヌネス✖挑戦者ミーガン・アンダーソン、UFC世界バンタム級選手権試合=王者ピョートル・ヤン✖挑戦者アルジャメイン・ステーリングと3試合の世界戦を含む、15試合が組まれている同大会。

そのプレリミメインに元UFC世界バンタム級王者ドミニク・くるーズが出場し、LFA二階級王者からUFCに転じて5勝1敗のケイシー・ケニーと対戦する。35歳になったMMAに革命を起こした元王者、ガラスのヒザを持つ──世界をリードしてきたドミニクに、今回の試合と勝つ説業について話を訊いた。


──ドミニク・クルーズは唯一の無二の存在です。ただし、ここ10年は常に体調が不安要素であり続けました。

「過去2試合、僕は敗れている。そしてフィジカル・コンディションの面でいえば……決して良い状態ではなかった。コディー・ガーブラントと戦った時は肩を負傷しており、足の調子も良くなかった。あの年は3度の世界戦を戦い、少し厳しい1年だったからね。

言い訳でなく、体調面を尋ねられたから答えるんだけど、自分の肩のような気がしなかった。それにコディーは素晴らしい戦いをやってのけたしね。

ヘンリー・セフードと戦った時は3年半試合をしていない状態で、ショートノーティスの試合を受けた。そんなつもりはなかったけど、タイトル戦を戦ってみないかという要求にイエスと答えた。しかも、Covid19の感染拡大という普通ではない状況下でね。

あの試合から、僕はノンストップでトレーニングをしてきた。そして、全くケガがないんだ。試合前としては、本当に素晴らしい状態にある。ホント、こんなに良い体調でファイトできることが、とてつもなく嬉しいんだ。

ずっと体を気遣ってきた。今回は精神的にもケガのことを気にすることなく、戦いに集中できる状態で自分を試す戦いに臨むことができる。心身ともに素晴らしい状態で戦うことができてワクワクいているんだよ」

──フランキー・エドガーと並びステップやサークリング、相手を混乱させるスタイルでMMAに革命を起こしたドミニクですが、ここ数年のMMAの進化は凄まじいものがあります。WECからUFCで王座防衛戦を戦っていたころと比較し、今のMMAは何が一番違っていると考えていますか。

「技術的云々ではなく、今はMMAを戦う準備をするための設備、環境が以前とは全く違うということが一番に挙げられると思う。ジムの数も違うし、検索率市場になっている。つまりファイターになりたいと思う人間の数だけ、ファイターが生まれているんだ。

僕らがMMAを始め、WECで戦うようになった頃でさえMMAが許されていない地域はいくらでもあった。でも、今や世界中でどこに住んでいようが子供たちはMMAを目にすることができ、ネガティブな意見なんて耳に入ることがない。

そして凄く若いうちからMMAの一つの要素となるレスリング、柔道、柔術、キックボクシング、ムエタイを始めるだけでなく、全てをミックスしたMMAを学ぶことができる。

以前はMMAで戦うための準備する場所も限られ、対戦相手対策をするならトレーニング・パートナーを懸命に探す必要があった。

そんな練習仲間も生活するための仕事を持っていて、仕事を終えてからトレーニングするのが普通だった。でも、今は皆が練習だけしているんだよ。皆がいつでもジムに通えて、必要な練習はなんだってできる。

そして彼らはすぐに僕やフランキー・エドガー、デメトリウス・ジョンソン、チャック・リデル、ティト・オーティス、ランディ・クートゥアーが試行錯誤の上で身につけて、成果を残すことができた成功例を学ぶことが可能だ。そりゃあ成長するスピードは僕らの時代とは比較にならないだろう」

──ドミニク達がトライ&エラーで創り上げた強くなるための方程式を最初から学ぶことができるわけですね。それにファイトを視ると、ドミニク・クルーズのような素晴らしい解説者がMMAとは何たるものかをしっかりと説明してくれます。

「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ」

──アナリストという仕事をしているとドミニク自身も、どの階級のどのような選手の試合もチェックすることになります。今も自分の試合しか興味のない選手もいますし、自分の階級の試合しか見ない選手も多いかと思います。アナリストという仕事が、現役ファイターとしてのドミニク自身のアドバンテージになっていると感じることはありますか。

「時には違うこともあるけど、色々な面で役に立っているよ。色々な選手の試合を見て、ミスも見ることもある。そこで見たことに対して、考え過ぎて固まってしまうことも実際にはあるけど、アナリストの仕事で学んだことを、自分の試合に直結させるんじゃなくて、試合の準備期間なんかにゆっくりと試みてみるんだ。そうすることで、解説をすることで得た知識を自分の戦いに生かすことができる──こともある。

でもね、試合になればそんなことは考えず、自分の膨らんだ知識ではなく、自分ができる戦いをするんだ。頭でなく、体で戦うことが大切になってくる。アナリストとファイターと両立させるためには、スイッチのオン・オフは大切なカギを握ることになると思うよ」

──なるほどぉ。自分も以前は解説をしていたことがあるのですが、視聴者の耳障りをよくするために、一緒に解説している人と意見が違っても反論せず、そこを聞き入れて次の話題にいくということは少なくなかったです。それがドミニクはダニエル・コーミエーと一緒に中継するときなど、2人が自分の意見を曲げずに言い合いのようなやり取りが見られることがあり、凄く新鮮なんです。でも、空気を読む日本の中継ではこれはないなって(笑)。

「凄く楽しんでいるよ(笑)。DCはこのスポーツで最高のチャンピオンだ。それに解説者としての発言は、ただ自分のことをアピールするのではなくて、ファイターたちのことを分かってもらうために話すという責任がついて回る。だから、映像を見たり、本当に色々と勉強をして中継に向き合っているよ。

そして自分の意見には自信を持っている。自らも経験もそうだし、研究してきたモノに対する自分の考えを信じているからね。でもDCとは言い合っているわけじゃないんだ。時々、違う意見を述べ合っているだけで。ダニエル・コーミエーを言い負かそうなんて気は一切ないよ(笑)。彼は最高にスマートな相棒だからね」

<この項、続く

■視聴方法(予定)
3月7日(日・日本時間)
午前8時~UFC FIGHT PASS
正午~PPV
正午~WOWOライブ

■UFC259対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者] ヤン・ブラボヴィッチ(ポーランド)
[挑戦者]イスラエル・アデサニャ(ニュージーランド)

<UFC世界女子フェザー級選手権試合/5分5R>
[王者] アマンダ・ヌネス(米国)
[挑戦者]ミーガン・アンダーソン(豪州)

<UFC世界バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者] ピョートル・ヤン(ロシア)
[挑戦者]アルジャメイン・ステーリング(米国)

<ライト級/5分3R>
イスラム・マカチェフ(米国)
ドリュー・ドパー(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
チアゴ・マヘタ(ブラジル)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)

<バンタム級/5分3R>
ドミニク・クルーズ(米国)
ケイシー・ケニー(米国)

<バンタム級/5分3R>
カイラー・フィリップス(米国)
ソン・ヤードン(中国)

<フライ級/5分3R>
ジョセフ・ベナビデス(米国)
アスカル・アスカロフ(ロシア)

<フライ級/5分3R>
カイ・カラフランス(ニュージーランド)
ホジェリオ・ボントリン(ブラジル)

<フライ級/5分3R>
ティム・エリオット(米国)
ジョーダン・エスピノーサ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
カーロス・アルバーグ(ニュージーランド)
ケネディ・ンゼチェクウ(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ショーン・ブレイディ(米国)
ジェイク・マシューズ(豪州)

<女子ストロー級/5分3R>
リヴィア・ヘナタ・ソーサ(ブラジル)
アマンダ・レモス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ウロス・メディッチ(セルビア)
アーロン・クルーズ(米国)

<バンタム級/5分3R>
トレヴィン・ジョーンズ(グアム)
マリオ・バウティスタ(米国)

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