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【UFC207】ロンダ・ラウジーの挑戦を受ける世界王者アマンダ・ヌネスが有利な理由──

amanda【写真】女子MMAは個々の競技特性という部分で強さを持つファイターの時代から、ウェルラウンダーの時代に変わりつつある (C)MMAPLANET

30日(金・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC 207「Nunes vs Rousey」。2016年、掉尾を飾るUFC PPVショーのメインイベントはUFC世界女子バンタム級王者アマンダ・ヌネスに、ロンダ・ラウジーが挑戦する一戦だ。


世界王者がヌネス、主役はロンダ。女子世界バンタム級選手権試合がドミニク・クルーズ×コディー・ガーブラントの世界バンタム級選手権試合をセミに押し退けたのは、ひとえにチャレンジャーがロンダだから、こそ。

2008年北京五輪、女子柔道70キロ級銅メダリストは2011年のMMAデビューから2年でこのスポーツを変革し、UFCに女子バンタム級の設立を認めさせた。キャリア12連勝、うち11試合で1Rフィニッシュ。銀幕の世界にもデビューしたナショナル・ヒロインは昨年11月にホーリー・ホルムに敗れ、チャンピオンの座が引きずり降ろされたが、13カ月後にチャレンジャーとしてカムバックを果たす。

この間、チャンピオンベルトはホルムからミーシャ・テイト、テイトからヌネスと持ち主を代えている。キャリア13勝4敗のヌネスは、7月にミーシャを左ジャブから右ストレートで圧倒し、しゃがみ込んだところでバックマウント→RNCで王座をもぎ取った。

柔道&柔術ベース、パワフルな打撃を身につけ世界の頂点に立ったヌネスの最大の特長は、パンチ力を生かすことができる距離の取り方にある。彼女はMMAの距離の取り方が攻撃面において抜群に良くなっている。

3月にヌネスがKunlun Fight60キロ級王座に就き、IFMA世界アマムエタイで9度の優勝を誇るヴァレンチーナ・シェフチェンコと戦った際、解説者のジョー・ローガンが「ムエタイは序盤は待つが、これはMMA。シェフチェンコはムエタイのように1Rを待ちのファイトをしてはいけない」というような注文をつけていたが、待っているのではなく行けなかったというのが本当のところだろう。

ムエタイやキックボクシングは真正面で自分の拳や足が届く位置で戦う競技だ。対してヌネスはレンジより遠い位置に陣取り、シェフチェンコの打撃を無力化していた。そんな距離などMMAでは常識だとは言うなかれ。女子MMAの歴史は男子より短い、その分だけ技術の進歩の著しいが、その一方でベースとなる競技を持ち、その競技での高い実績を持つ選手ほど結果を残してきた。

柔道のロンダ、レスリングのサラ・マクマン、ボクシングのホルム、ムエタイのシェフチェンコがその好例だ。よって彼女たちは中間距離より内側の戦いに強い。個人的に高い資質持ち、そのまま競技特性が生きた戦い方をして勝つことができたからだ。

唯一、ホルムだけは組みのある競技で自分の弱さを理解しており、ディフェンス面でMMAの距離を駆使し戦うことができた(※シェフチェンコ戦では当たる距離の戦い方をしている)。そんなホルムに対し、ロンダはとにかく前進を続け、攻めの姿勢を貫いたことで打撃を被弾してしまった。

ロンダはサウスポーのホルムのパンチが見えていなかったのではなく、ある程度以上のスピードを持ったファイターのパンチ全般が見えないはずだ。それでも前に出て、組もうとしたことでダメージを蓄積させた。間合いを外す、そういう戦い方を1Rで勝ち続けてきた女王はできなかった。

ではヌネスはどうか。前述したようにヌネスは攻撃面においてMMAの距離を使いこなせる。ただし、序盤からその戦い方をするとリスクは大きい。ロンダの1発や2発を受けても組みに行くという開き直りが、彼女の前に出る原動力となっており、ヌネスといえども捕まる可能性は十分にある。

よって、ホルムのように序盤はロンダの前に出る力を徹底的にいなす──守りのMMAレンジとステップを用いる方が懸命だ。それでもロンダが闇雲に前に出てくれば、ヌネスの左ジャブから右ストレートは、ホルムの左ストレートと同様に挑戦者の顔面を射抜けるようになる。

ではロンダが待つ戦いをすることはあるのか。そして、パンチが見える眼と防御力をこの間に身につけている可能性は? それは世界戦当日になるまで我々には想像するしかない。加えてロンダが成長していたとしても、これも上に書いたように女子MMAは歴史が浅い分、競技としての成長も早い。ロンダの成長が、他の女子MMAファイターの成長のスピードについていけていなければ、彼女が真の成長を果たしたとはいえない。

実際問題として、個々の競技特性能力が高かったホルムから、UFC女子世界バンタム級はミーシャを経てヌネスに覇権が移ったようにウェルラウンダーの時代を迎えている。魂の抜けたようなミーシャ戦の勝利が、どこまでヌネスの力を図る上で参考になるか分からない部分もあるが、ミーシャよりもヌネスはウェルラウンダーとして個々の部分での精度とフィジカルが高まっている。

より強化されたオールラウンダーのヌネスだが、それでも不安要素は残っている。それは疲れる前と疲れた後での粘りの差だ。マクマンのテイクダウン狙いを切った彼女が、疲れが見えてくるとシェフチェンコに大外刈りを返され、キャット・ジンガーノには2度までもフロント・ネックチャンスリーのような投げを食らっている。

何より、自分の間合いが取れなくなっているので簡単に組む展開を許してしまうのも、疲れた後のヌネスの脆さに繋がっている。仮にロンダの前進力をすかす選択をした場合、精神的に疲弊する恐れもある。かといって開始直後に組みの展開に持ち込まれると、いくらヌネスがATT所属といえ柔道を主武器にするファイターが、北米には圧倒的に少ないことから対策は十分に積めていないはずだ。

守備的MMAの距離を取ることでヌネスが疲れるようであれば、ロンダの王座返り咲きの確立は高くなる。対して、ロンダの前進にヌネスがパンチを合わせることを早々にできるなら、初回で王者が初防衛に成功する可能性も十分にある。とにかく、ロンダの現状が未知数なだけにサプライズを起こすなら彼女。つまりは勝つ要素を探して一つずつ並べていくと、ヌネスが有利な女子バンタム級頂上決戦ということになる。

■UFC207対戦カード

<UFC世界女子バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者] アマンダ・ヌネス(ブラジル)
[挑戦者] ロンダ・ラウジー(米国/1位)

<UFC世界バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者] ドミニク・クルーズ(米国)
[挑戦者] コディー・ガーブラント(米国/5位)

<ヘビー級/5分3R>
ファブリシオ・ヴェウドゥム(ブラジル/1位)
ケイン・ヴェラスケス(米国/2位)

<バンタム級/5分3R>
TJ・ディラショー(米国/1位)
ジョン・リネケル(ブラジル/2位)

<ウェルター級/5分3R>
ジョニー・ヘンドリックス(米国/6位)
ニール・マグニ―(米国/8位)

<ウェルター級/5分3R>
キム・ドンヒョン(韓国/9位)
タレック・サフィジーヌ(ベルギー/12位)

<ウェルター級/5分3R>
マイク・パイル(米国)
アレックス・ガルシア(カナダ)

<フライ級/5分3R>
ルイス・スモルカ(米国/12位)
レイ・ボーグ(米国/13位)

<ウェルター級/5分3R>
ティム・ミーンズ(米国)
アレックス・オリヴェイラ(ブラジル)

<ミドル級/5分3R>
アントニオ・カーロス・ジュニオール(ブラジル)
マーヴィン・ヴェットーリ(イタリア)

<ウェルター級/5分3R>
ブランドン・ザッチ(米国)
ニコ・プライス(米国)

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