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【WJJC2016】三強揃い踏み=カイオ、ジョアオ、マルファシーニ。ルースターを制したのは……

Rooster Podium【写真】三強揃い踏みのなかで、ルースターの頂点に立ったブルーノ・マルファシーニ (C)MMAPLANET

2日(木・現地時間)から5日(日・現地時間)にかけて、米国カリフォルニア州ロングビーチのカリフォルニア大ロングビーチ校内ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われた。レビュー第2弾となる今回は、最軽量級にて遂に顔を揃えた世界3強──ジョアオ・ミヤオ、カイオ・テハ、ブルーノ・マルファシーニ──の戦いをレポートしたい。

Caio<ルースター級準決勝/10分1R>
カイオ・テハ(ブラジル)
Def. 10-8
ジョアオ・ミヤオ(日本)

初戦で橋本知之に競り勝ったミヤオは、吉岡崇人を倒したルーカス・ピネイロを僅差で下して準決勝に進出、準々決勝で芝本幸司を振り切ったテハと注目の初対決が実現した。

Caio vs Miyao 01見るからに気合いの入ったテハが、試合開始と同時にスライディングして引き込むとミヤオも座ってダブルガードに。お互い譲らぬ攻防が続いた後、テハが上になるとなぜかこれで2点獲得。ミヤオの右足首を取った状態でテハが背中を付けると、ここでミヤオが起き上がって同点となる。直後にテハも起き上がって4-2とした刹那、試合をダブルガードに戻した。

Caio vs Miyao 02ジョアオは足首固め狙いからテハの足を抱えてヒザ立ちになることでアドバンテージ一つと2点を追加して、ポイント4-4ながらアドバンテージ差で逆転することに成功。かくして50/50の状態で、試合終了後に上になっていたほうが勝ちというシーソーゲームが成立することになった。

その後テハは一瞬上になってまた戻ることで6-4に。ミヤオも同じことをして6-6で再逆転。テハも足を取りながら上になり8-6とすると、そのまま腹這いでアキレスを極める仕草をしてアドバンテージの獲得を狙う。これが効を奏してアドバンテージを取ったテハだが、ミヤオはすかさず足首固めをかけ返してアドバンテージを取り返す。

Caio vs Miyao 03残り2分となったところで、再び腹這いでアキレス腱を狙って来たテハのパンツを背後から掴んで尻を出させたミヤオは、そのまま膝立ちとなり8-8、アドバンテージ2-1で逆転に成功。ここでテハはミヤオの踵を脇で抱えてヒザ十字を狙いながらヒザ立ちとなる。ミヤオは左足を取られながらも上体を起こし、テハの背後から首に手を伸ばしてのバック狙い。

Caio vs Miyao 04両手を首にかけられたテハは体を後ろに預ける。これでミヤオの上になったとみなされ、残り僅かの時点でテハがポイント10-8と逆転した。

Caio vs Miyao 05テハの背後に付いて首に手を回してはいるものの、このままではポイントを貰えないと判断したミヤオは首の手を離して50/50を作り直そうとする。とその瞬間、テハは足を抜いて脱兎の如くダッシュして距離を取る。ミヤオが走って追いかけて来ると、すぐさま座って引き込んだテハはハーフガードに。ミヤオは上からアンクルを狙うが時すでに遅し。最後はこれ以上ないほど露骨なポイントゲームを展開したテハが、まんまとミヤオを出し抜いて勝利してみせた。

テイクダウン、スイープ、パスといった従来の柔術におけるポジションの攻防が一切見られず、両者がひたすら「どちらが上とみなされるポジションを取るか」と「どちらがサブミッションを狙った形を作るか」を競り合ったこの試合。最後にダッシュで勝ち抜けを狙い、そして達成したテハの姿は、まさにポイントゲームの極北を体現していた。仮に柔術競技を形式(ポイントの取り合い)と中身(互いを制し合う攻防)に分けてみるなら、純粋な形式だけが突出したこの試合は、ある意味前衛芸術の如き様相を呈していた。


Bruno<ルースター級決勝/10分1R>
ブルーノ・マルファシーニ(ブラジル)
Def.0-0 アドバンテージ 2-0
カイオ・テハ(ブラジル)

芝本、ミヤオといった難敵を下したテハに決勝で立ちはだかったのは、宿命のライバルにして2年連続王者のブルーノ・マルファシーニ。世界柔術における3年前の決勝ではテハがポイント勝利しているが、最新の対決は昨年のパン大会で、この時はマルファシーニがチョークで一本勝ちしている。またしても、最軽量級を長年支配する二大巨頭による世界一決定戦となった。

Bruno vs Caio 01ダブルガードを取った両者だが、マルファシーニが上を選択してアドバンテージを獲得。テハは得意のデラヒーバからのアキレスを狙うも、マルファシーニはフックしてくるテハの足に腕をこじ入れて担ぎ、その体を二つ折りにしてスタック。さらにテハを後転させながらトラックポジションを作ってバックを狙い、これは凌がれたもののアドバンテージを追加してみせた。

Bruno vs Caio 02テハは下からマルファシーニの右足首をアキレス腱固めの形で掴む得意のパターンからバックを狙うが、マルファシーニは素早く動き、さらに腕を差し入れてディフェンス。さらにテハは、マルファシーニのラペルを引き出して握り、右足をキープしたままニーシールドを用いたハーフガードから回転して仕掛けようとするが、マルファシーニは脇を差して低く体重をかけてこれも許さない。

Bruno vs Caio 03それでも下から揺さぶるテハは、マルファシーニのヒザ裏に回したラペルを掴んだままオープンガードに。マルファシーニはテハの足の間に膝を入れて角度を作らせない。残り1分となり、テハはアキレス腱固めをキープのままスピンして体勢を崩して膝立ちで上になろうとするが、マルファシーニもすかさず反応して正対して上に。

Bruno vs Caio 05残り30秒。テハはマルファシーニの背後に付きながら立とうとするが、マルファシーニは崩れずテハのリバースハーフガードに。テハは最後の望みをかけて下から揺さぶるが、マルファシーニがベースを保ち続けて試合終了。二つのアドバンテージを守り抜いたマルファシーニが世界3連覇を達成した。

シーソーゲームになりがちのこの最軽量級で、あえて上攻めを選択して最後までトップをキープ出来るマルファシーニ。芝本もジョアオも崩された、テハのアキレスグリップを起点とした各種攻撃をはねのけた安定感と反応の速さは、この強豪ひしめくこの階級において頭一つ抜けていたといって良いだろう。

■リザルト

【ルースター級】
優勝 ブルーノ・マルファシーニ(ブラジル)
準優勝 カイオ・テハ(ブラジル)
3位 ジョアオ・ミヤオ(ブラジル)
3位 チアゴ・バロス(ブラジル)

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