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【NEXUS41】フェザー級王者=横山武司に挑戦、須藤拓真「MMAで極めたら誰も文句は言わないと思って」

【写真】飄々とした喋り口ながら、今成正和を極めた時の涙と、今回のインタビューの最後からは熱い気持ちが伝わってくる(C)SHOJIRO KAMEIKE

22日(土)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるNEXUS41で、須藤拓真がフェザー級王者の横山武司に挑む。
Text Shojiro Kameike

須藤がMMAを戦うのは昨年1月の藤井伸樹戦から1年10カ月振り。NEXUS参戦は2022年8月の河村泰博戦以来となる。そのMMA復帰戦で、横山戦というビッグカードが実現した。須藤といえばグラップリング、特に足関節のイメージが強すぎるなか、なぜここで再びMMAで戦うことを決めたのか。そして自身がMMAで極めることへの想いも語ってくれた。


自分が面白くないと思う相手と試合をしてもなぁ……基本的に自分よりも強い相手なら良いんです

――約1年10カ月振りのMMAを控えている須藤選手です。

「そうなんですよ。MMAを全然やっていなくて……。久しぶりにMMAを戦いたいなぁと思っているところに、ちょうどネクサスからオファーを頂きました。タイミングが良かったですね」

――それだけの間、MMAを戦っていない理由は何だったのでしょうか。

「いや、特に――パッとするオファーがなかった、というだけですね」

――オファーがなかったというわけではなく、自分のモチベーションが上がるオファーがなかったと。

「自分が面白くないと思う相手と試合をしてもなぁ……と思っていたので」

――ここで言う「自分が面白くないと思う相手」というのは?

「基本的に自分よりも強い相手なら良いんです。少しでも自分のほうが勝っているなと思ったら、『面白さ』というものを考えてしまいますね」

――たとえば「この相手なら自分が足関節を極めてしまうだろう」と、比較的イメージしやすい相手とか。

「そうイメージできるような相手だったら、オファーは断るかなって感じです」

――なるほど。MMAから離れていたのは、修斗で2連敗を喫したことが理由ではなかったのですね。そう考えている人も多いとは思いますが……。

「アハハハ。僕も『もうMMAは辞めたの?』と訊かれることが多かったんですけど、そういうことではないんですよ」

――この期間はMMAでオファーがあった相手よりも、Level-Gの今成正和戦、プログレスの中島太一戦竹内稔戦、そしてONEサブミッショングラップリング(以下、ONE SG)のほうが面白い試合になるだろうとイメージできたわけですか。

「あと同じ相手であっても、打撃がない分グラップリングのほうが怪我は少ないので(笑)」

――結果的に今挙げたグラップリングマッチは、全て面白い内容とフィニッシュで。

「自分の中でもそうなると思ったので、グラップリングのほうを選んでいました。別にMMAを辞めようと思ったわけでもなく。MMAも面白そうな選手と対戦できるのであれば、やりたいとは考えていて。ただ、数年振りに山田(峻平ネクサス代表)さんから連絡があってビックリしましたけど」

――数年振り!?

「ネクサスで最後の試合をしたのが2022年(8月、河村泰博にダースチョークで一本負け)で、それ以来特に連絡は取っていなかったと思います。もしかしたら自分に直接ではなく、マネージメントとかに連絡は来ていたかもしれないですけど……。ともかく久しぶりに山田さんから連絡が来たと思ったら、まさかの横山武司戦のオファーでした(笑)」

――その間、修斗やグラップリングの試合が続々と決まっていましたからね。

「特にグラップラーとしてのイメージが固まっていたとは思います」

横山選手となら、ということでオファーを受けました。横山選手以外だったら断っていたかもしれない

――今年6月のマゴメドフ戦にしても、須藤選手は終始どのようなポジションになっても、スッと足関節のエントリーに入り続けていました。フィニッシュには至らなかったものの、グラップラーとしての力を存分に見せつけています。

ONE初参戦はグラップリングマッチで。ロシアのマゴメドフを相手に、徹底的に足関節で攻め続けた(C)ONE

「相手から攻められるような気持ちは一切なかったですね。でも相手も巧かったです。ちょくちょく良い音もなってはいましたけど、極め切るまでには至らなくて」

――一方、MMAを戦っていない間にMMAファイターとしての手応えは、どのように得ていたのでしょうか。

「それは保つことはできていなかったと思います。普段はMMAの練習を全くしていないですし。打撃だけの練習はずっと週1ぐらいでやっていますけど、MMAのスパーは……3週間ぐらい前に、久々にやりました。そこから週1ぐらいでやっています。アハハハ」

――……その練習ペースでMMAの試合に臨むうえで、不安はないですか。

「特にないですね。誰が対戦相手であっても、自分がやることは変わらないと思うので」

――グラップリングの時とMMAの試合で、足の取り方もそこまで変わらないですか。

「それは変えていないわけではないですね。やっぱりパウンドがある分、下になるのは落ち着けるポジションではないので。そこは意識しながら――グラップリングでも下になって落ち着かないようにしています。グラップリングとMMAでは、少し意識を変えて練習している感じです」

――まさにONE SGのマゴメドフ戦が、その意識を持っていたように見えました。もちろんMMAであれば相手もやることは変わってくるはずです。しかしポジションだけの話だけで言えば、常に自分の頭の位置をずらしていた。

「相手がパウンドを打てるようなポジションにいたことは、そんなに多くなかったはずです」

――ちなみにマゴメドフ戦以降、ONEからのオファーはなかったのですか。

「とりあえずは無いですけど、そもそもグラップリングの枠が少ないとは言われていて。もし試合があるとしても、ずっと先で――だから今回のオファーは、ちょうど良かったんです」

――これまで須藤選手は主にバンタム級で戦っていました。にも関わらずフェザー級タイトル挑戦のオファーが来たのですね。

「自分でも『なぜフェザー級なんだろう?』とは思いましたけど、自分としてもネクサスで試合したい相手といえば横山選手ぐらいしか思い浮かばなかったので。横山選手となら、ということでオファーを受けました。横山選手以外が相手だったら、もしかしたら断っていたかもしれないです(苦笑)」

――フェザー級で戦うために体づくりなどは変えたりしますか。

「いえ。ナチュラルが71~72キロで、そこから体を大きくすることは考えていないです。減量が楽になる、というぐらいですね」

――なるほど。横山選手とは柔術でもグラップリングでも、一度も絡みはなかったのでしょうか。

「ないですね。練習でも絡んだことはないです。だいたい柔術家ってどこかで交わると思うんですけど、運よく絡んだことはなくて。ただ、自分が柔術を始めた頃に横山選手はもう黒帯で。全然、上の選手でしたから。僕が黒帯に上がったのも最近ですし、その時には横山選手がMMAに専念していたので。だから交わることがなかったんだと思います」

――黒帯に昇格して何か意識は変わりましたか。

「別に……帯にこだわりもないので(笑)」

――アハハハ、そんな気がしました。

「いつもどおり、ですね」

極めることができるなら極める。殴れるシーンがあるなら殴る。特に足関にこだわるつもりもないです

――話を戻すと、プロMMAデビューは横山選手よりも須藤選手のほうが先です。横山選手のことは、意識していましたか。

「もともと柔術で名前を知っていたので、当時は『ヤバイ選手が来た!』って思いましたよ。でも階級が違ったので、心の中ではホッとしていたんです。アハハハ。ここで交わることになるとは思わなかったですね」

――MMAファイターとしても、互いに下から極めることが多い両者です。とはいえ、それでもタイプは大きく違うかと思います。

「違いますね。寝技に関していえば、横山選手のほうがオールラウンダーです。自分は特化型というか」

――柔術やグラップリングではなくMMAとして、その点は須藤選手にとってメリットになりますか。それともデメリットもあるでしょうか。

「どうなんでしょうね? そこが分からないから試合するのは面白いなぁ、って思います。ただ、お互いに寝技が得意だから極め切ることは難しいかもしれないです。横山選手が足関で攻められている試合も見たことがないし、ディフェンスがどうなのかは試合をしてみないと分からない部分で。もちろん足関の展開もできるでしょうけどね。

そこで勝敗が決まらず、もし判定になって優劣がつくとしたら、やっぱり殴ったかどうか。自分としては特にこだわりもないので、極めることができるなら極める。殴れるシーンがあるなら殴る。特に足関にこだわるつもりもないです」

――では須藤選手がMMAファイターとして目指すものは何ですか。

「う~ん、何て言うんだろう……。柔術をやっている時に『その体勢なら殴られて終わりじゃん』みたいなことを言われてムッとしたんですよ。あらゆる格闘技の中でMMAは一番制限が少ないじゃないですか。そこで極めることができたら、誰も文句は言わないだろうと思って。

プログレスの中島戦でブルドッグ・ニーバーを極める直前の状態の写真。MMAでもハーフガードになったら――期待が集まる(C)MMAPLANET

たとえばプログレスで極めたブルドッグ・ニーバーとかは、MMAでもあの体勢になると思うんですよ。むしろMMA寄りの技というか。MMAではハーフガードからワキを差して起きる攻防が多いので。あんな感じで、まだ世に出せていない技があります。MMAでもそんな技を出していきたいです。次のタイトルマッチも、高度な技術戦を楽しみにしていてください!」

■視聴方法(予定)
11月22日(土)
午後5時30分~ SPWN(有料ライブ配信)

■NEXUS41 対戦カード

<荻窪祐輔引退エキシビションマッチ/2分3R>
荻窪祐輔(日本)
Mr.X

<NEXUSフェザー級タイトルマッチ/5分3R>
[王者] 横山武司(日本)
[挑戦者] 須藤拓真(日本)

<NEXUSバンタム級王座決定戦/5分3R>
中桐涼輔(日本)
下田凛太郎(日本)

<フェザー級王座次期挑戦者決定戦/5分2R+ExR>
千春(日本)
アポロ中山(日本)

<ライトヘビー級/5分2R+ExR>
マシン(日本)
ダニエル・シウバ(ブラジル)

<無差別級/5分2R+ExR>
たまよせゆきと(日本)
佐藤翔太(日本)

<フライ級/5分2R+ExR>
鎌田悠太郎(日本)
川端祐樹(日本)

<ミドル級/5分2R+ExR>
一慶(日本)
荒井勇二(日本)

<バンタム級/5分2R+ExR>
塩谷優斗(日本)
岩松哲也(日本)

<フライ級/5分2R+ExR>
中村大信(日本)
ベクゾド・ナルズラエフ(ウズベキスタン)

<キック 63キロ契約/2分3R>
吉田武司(日本)
清水秀仁(日本)

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