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【EJJC2020】ルースター級準々決勝、タリソン・ソアレスが足関Advで10times世界王者マルファシーニ越え

21日(現地時間・火曜)から26日(同・日曜)にかけてポルトガル、リスボンにあるパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスにてIBJJF(国際柔術連盟)主催のヨーロピアンオープン柔術選手権が開催された。

ヨーロッパを中心に、各国から強豪が参戦するこの大会。レビュー第1回は、世界選手権にも匹敵するほどの超激戦区となり、さらに日本人選手も3人参戦したルースター級準々決勝の超新星✖10度の世界王者の戦いの模様をお届けしたい。


<ルースター級準々決勝/10分1R>
タリソン・ソアレス(ブラジル)
Def. by 4-4 アドバンテージ 2-1
ブルーノ・マルファシーニ(ブラジル)

今年のヨーロピアンにおいて、世界中のファンや関係者から最も待望されていたのがこの試合だろう。超新星ソアレスは17年と18年に紫帯で、そして昨年は茶帯にて世界王者に輝いて黒帯に昇格した20歳。12月のノーギワールズには黒帯として初参加し、世界柔術準優勝の強豪ルーカス・バルボーザに快勝して優勝を果たしている。

対する33歳のマルファシーニは、世界大会で10度優勝を果たしているこの階級の第一人者。一昨年の世界大会制覇後に引退を表明したものの、昨年の世界大会で復活。準々決勝で宿命のライバル、カイオ・テハを下したが、続く準決勝ではその弟子のマイキー・ムスメシに10-8で競り負けている。この元絶対王者が今年、11年以来出場していないヨーロピアンにエントリーしてきたのは、世界王座奪還に本腰を入れていることの証だろうか。とまれ、今回ソアレスが初戦をバックからのチョークで順当に勝ち上がったことで、早くも準々決勝で大注目の新旧頂上対決が実現することとなった。

低く構える両者。ソアレスが近づいて引き込むと、上を厭わないマルファシーニはすかさず両足担ぎを仕掛け、ソアレスのズボンの後ろを掴んで引き上げてみせるが、両者の体は場外に出てブレイクとなった。

中央から再開後、再びソアレスが引き込むと、マルファシーニはここも固執せず上にステイ。そのラペルを引き出し右ヒザ裏を通して掴んだソアレスは、そのまま内回転。体勢を崩されかけたマルファシーニだが、すぐに跳ねるように上の体勢をキープしてみせた。

まだラペルのグリップをキープしているソアレスは、すぐにシットアップして2点先制。が、マルファシーニも逆にシットアップして上を取り返して同点。ソアレスは、今度はマルファシーニのラペルを自分の右足に絡めて掴んで崩しにかかるが、マルファシーニは体勢を低くしてスイープを防ぐ。

ならばとソアレスは体を斜めにずらして角度をつけ、さらに左足を振って反動をつけてのスイープを狙うが、ここもマルファシーニは胸を合わせるように潰す。ソアレスがガードを閉じ、4の字ロックを作ったところで5分が経過。ここまでソアレスは、 世界でも頭抜けたトップゲームの強さを誇るマルファシーニにほとんどパスの攻勢すら許していない。巧みなグリップで元絶対王者の驚異的な身体能力を封じ込めている形だ。

やがてソアレスがガードを開く。すかさずマルファシーニは右ヒザを入れると、ソアレスの右足を取りにゆく。その狙いを察したソアレスはマルファシーニの左手首を掴みにゆくが、マルファシーニはそれを振りほどいて、ソアレスの右足を掴んで倒れ込んでのトーホールドに。その後マルファシーニはシットアップして上に戻るとともに、アドバンテージをひとつ獲得してリードを手にしてみせた。この種の接戦では、極まらないと分かっていても足関節を仕掛けてアドバンテージを稼ぐことが勝利への大きな一歩となる。

リードされたソアレスは、逆に下からマルファシーニの左足を狙う素振りを見せてから、シットアップして4-2で逆転。お互いの足が50/50のような形で絡むなか、ソアレスはマルファシーニに背中を見せるような体勢に。お互いがそれぞれの右足をアキレスグリップで捉え、アドバンテージを狙おうという姿勢だ。ここからソアレスが体を捻ると、右足を絞られたマルファシーニは自らのアキレスグリップを諦めて動いて対処せざるを得ない状態に。この場面ではソアレスが足関節合戦で上回ったことになる。

さらに回転しながらマルファシーニの右足を絞り上げるソアレスに対し、マルファシーニはその襟を掴んでシットアップ。この攻防でソアレスにアドバンテージが、マルファシーニに2点が与えられてスコアは完全な同点となった。

残り2分。マルファシーニは再びトーホールドを狙って倒れ込むが、マルファシーニの右足をロックしているソアレスはアキレス腱で逆襲。両者が回転した後、体を反って絞り上げるソアレスに対してマルファシーニは再び自らの足狙いを諦めて、防御に徹さざるを得ない状況となった。マルファシーニは上の体勢に戻ったものの、ソアレスがアドバンテージを追加し、逆転してみせたのだった。

残り1分半。下から有利なアキレスグリップを離そうとしないソアレス。追い込まれたマルファシーニはまたしてもトーホールドを狙うが、ソアレスは巧みに足を組み換えてそれも許さない。ならばとマルファシーニはシットアップしてなんとかこの体勢からの脱出を試みるが、下からマルファシーニの右足をがっちりとアキレスグリップで固めた上で両足を絡めたソアレスのポジショニングは強固きわまりなく、試合終了までマルファシーニはまったく動けず。結局ソアレスが終盤に足関節で奪ったアドバンテージ差を守り切って勝利した。

巧みなグリップでマルファシーニの動きを封じ、パスのチャンスすら作らせなかった強固なガードと、極めるというよりはアドバンテージを取るための足関節合戦で競り勝つ巧妙きわまるポジショニング──黒帯一年生のソアレスが、百戦錬磨の10タイムス王者を上回る驚異のゲームメイク力を見せつけて快勝。前評判に違わぬ実力を証明した超新星は、初戦が不戦勝となった芝本幸司との準決勝に駒を進めた。

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