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【ASIA OPEN 】アジアの道は世界に通ず。4連覇を目指す芝本幸司

Koji Shibamoto【写真】柔術家という職業の求道者、芝本の往く道は全て世界柔術に通じている(C)HIROYUKI KATO

「自分のルーティーンを崩さないことを大事にして、365日柔術のために生きています」 日々同じことを、粛々と――。いよいよ明日12日より2日間の日程で、東京都足立区の東京武道館にて、国際ブラジリアン柔術連盟(IBJJF)主催の「アジア・オープン柔術選手権」が開催され芝本浩司が黒帯ルースター級で4連覇を目指す。
Text by Hiroyuki Kato

7月の全日本ブラジリアン柔術選手権で同級4連覇を達成し、世界柔術でも日本勢唯一のベスト8に残った芝本は、対日本人で無敗を続けている。その強さの秘密は、求道者のような柔術哲学にある。練習は基本的に朝晩2回、自身の所属道場トライフォース柔術アカデミーで行う45~90分のスパーリングが中心だ。同じ相手に、同じ技を仕掛ける事を心掛けている。

「性格的に腰を据えて、日々の繰り返しが自身を高めると思っています。他人はマンネリと思うかもしれませんが、私にとっては反復練習。私が毎回同じ技を仕掛ければ、相手は対策を練る。そして私がその一歩上を行くように対策を練ることを繰り返すことで、技の精度が高めるという考えです」。他道場との交流が盛んな柔術界において、芝本は黒帯になるまでJFTの練習には参加していたものの、一度も出稽古を行った事がないという。師匠・早川光由に対する絶対的な信頼感はあるが、ストレスになることは避けたいという思いもあると話す。

「練習一つにも心身共に“準備”が必要で、他道場を巡ればそれだけストレスや、怪我のリスクが増えると自分は思っています。先ほども言ったように日々の繰り返しが柔術を磨く。でも、特異なスタイルを持つ初顔合わせの柔術家に負けるかもしれない。そういう意味で、早川先生に『パラエストラ東京さんの昼柔術ぐらいは行ったらどうだ?』と勧められて、ルーティーンの一つとしてお邪魔することにしました」

基本的にオフは作らない。大会以外は週7 日、練習漬けの日々をもう何年も過ごしている。それでも芝本ももう30代半ば、コンディション維持は本来辛いはずだが、本人は気にする素振りすらない。 「自分の中で年齢は言い訳にしないようにしています。黒帯になって、世界を目指した時で既に30代。でも、回復力が20代の時により下がってきたならば、30代は一手間かけて回復すればいいだけの話。手間を惜しまなければ、20代、30代でも一緒です」。

それでも最軽量の57. 5キロという小柄な体型だけに、日々の練習パートナーは自分より一回り、二回りは大きな相手ばかり。本来は怪我もし易いはずだが、黒帯になってから怪我はほとんどしていないそうだ。

「練習前に必ず10~30分近く掛けたウォーミングアップを行います。ただ僕の中でウォーミングアップは体を温めるといよりも、ダメージを減らすという意味合いが大きい。ある程度筋肉に弾力を持たせた状態でやることによって、相手の負荷を逃がす。1回の練習のダメージを減らすという考えです。練習が終わった後のクールダウンも、明日のためのウォーミングアップとしてやっていますね」

毎日のウォーミングアップも、練習も、クールダウンも全てルーチンだから週7回続けられる。この工程をごく自然に受け止めることでモチベーションに左右することはない。大会出場も毎年5回だけと決めている。全日本選手権、アジア・オープン、ヨーロッパ、パンアメリカン、そして世界柔術選手権だ。

「2週間掛けて減量して、試合を終えて2週間掛けて感覚を戻していくという自分なりの調整方法があるんです。大会の前後合わせて、1カ月掛かる。そこにまた別の大会を組み込むのは……正直難しい。世界柔術を軸にして、逆算して日々ルーティーンで過ごしていますね」

薄皮を重ねるように、反復を重ねて技術を高めていく。全ては世界柔術のため。今年はジャアオ・ミヤオと接戦を演じたが、芝本はまだ同じ土俵には立ててはいないと話す。

「黒帯はアドバン1差が勝敗を別ける世界なので、例えばポイントAD0-1でも10回連続で負けたら接戦とは言えません。やはりカイテ・テハ、ジョアオ・ミヤオ、ブルーノ・マルファシーニに1度でも勝ってから、はじめて対等と言えるのではないでしょうか。ただ、彼らの思い通りにさせないレベルの実力が自分にはあると思います。少し背中が見えている段階に来ていますね」

自身の柔術も未完という想いがあることで、芝本は365日の柔術漬けの生活を続けられる。まずは明日のアジア・オープンで4連覇を狙い、自信が日本、そしてアジア代表であることを証明する。

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