【写真】先制点を取って、その差をリードして勝つ。芝本を相手にタリソンは、その王道というべき試合運びで決勝進出を決めた(C)IBJJF

21日（現地時間・火曜）から26日（同・日曜）にかけてポルトガル、リスボンにあるパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスにてIBJJF（国際柔術連盟）主催のヨーロピアンオープン柔術選手権が開催された。

ヨーロッパを中心に、各国から強豪が参戦するこの大会。レビュー第3回は、世界選手権にも匹敵するほどの超激戦区となったルースター級準決勝から、超新星タイソン・ソアレス✖芝本幸司の対戦をレポートしたい。

＜ルースター級準決勝／10分1R＞
タリソン・ソアレス（ブラジル）
Def. by 8-6
芝本幸司（日本）

両者引き込みから、上を選択してアドバンテージを獲得したのはソアレス。右手で襟を掴む芝本は、強烈に引きつけながらソアレスの体を大きく跳ね上げてのスイープを狙う。ソアレスが倒立するようにバランスを保って立つと、芝本もその勢いで立ち上がってのテイクダウンに移行する。が、巧妙に切ったソアレスが改めて引き込みなおす。体捌きの上手さを見せたソアレスが、アドバンテージを先行したまま下のポジションを獲得──このままシーソーで上下が入れ替わり続けても勝利は動かないという有利な状況を早くも作ってみせた。

シッティングを取ったソアレスは、芝本の右足を捕まえるとすかさずベリンボロで回転。上を取って2-0とした。だが芝本も下からソアレスの右足を抱え、さらに左足のズボンも掴んで起き上がって上を取り返し、スコアは2-2に。が、ソアレスもシットアップであっさり再び上となり、スコアは4-2となる。

このままシーソーが続くと勝てない芝本は、先ほどと同じ要領で上を狙うが、今度はソアレスも反応して立つ。それでも芝本はソアレスの左足を掴んで立ち上がると、軸足を刈ってのテイクダウン。一瞬崩されたソアレスだが、すぐに体を翻して芝本の体をまたいでマウントの体勢になったところで、場外ブレイクに。この一連の攻防で芝本はアドバンテージをひとつ獲得したもの、2点のリードを保ったままニュートラルな体勢からの再開に持ち込んだソアレスに軍配が挙がる。スクランブルですかさず上を取る体捌きの上手さは、先輩のミヤオ兄弟にも見られない類の動きだ。

スタンドで再開後、再びソアレスが上を選択してアドバンテージを獲得。芝本もシットアップして上を取り返してスコアを4-4とするが、アドバンテージでは2-1で遅れを取っている。下になったソアレスはまたしてもベリンボロからの上狙いへ。一度はこらえて上をキープした芝本だが、ソアレスは再度ベリンボロを仕掛けて上を取り切り、6-4とした。

シッティングを取る芝本に対し、ソアレスはその右足をアキレスグリップに捕らえると、絞り上げてアドバンテージを追加。そこから上を狙う芝本だが、ソアレスが上をキープ。この動きで芝本はアドバンテージを獲得した。

残り4分半。芝本は下からソアレスを浮かせると、下からその右足をアキレスグリップ捉え、ソアレスを返して6-6に。上からポイント、最低でもアドバンが必要な状況で残り2分半を迎え、芝本はアキレス腱固めを狙う。ソアレスは、アドバンテージを献上しあによう芝本に見栄えの良い状態を作らせないまま上を取り、8-6と突き放す。

このままソアレスは前に重心をかけ、頭と両足の三点でバランスを取るような格好を取り、捉えられていた右足を解除すう。姿勢を戻したソアレスは右ヒザを芝本の股間に入れると、その左足にレッグドラッグ。低く体重をかけて芝本の左足を潰したソアレスは、さらにその首を抱えて上半身の動きも殺していく。逆転を賭けた攻撃に出なくてはならない終盤にて、逆にピンチに陥ってしまった芝本は、下からソアレスの左足を抱えこむことでパスこそ防いだものの、有効な反撃ができないまま試合が終了した。

最終スコアは8-6、アドバンテージは3-2で超新星の勝利。序盤や中盤の要所のスクランブルで下を譲らない強さを発揮して試合を優位に進めたソアレスは、マルファシーニを制した足関節の攻防でも点を譲らず、最後は技ありのレッグドラッグ。ミヤオ兄弟譲りのベリンボロ以外にも多くの強さの引き出しを見せての快勝だった。

柔術界の未来を全身で体現するようなソアレス相手に何度か下からの仕掛けを成功させた芝本だったが、序盤で付けられた差を縮めることはできず、終盤には上から体を制されての敗戦となった。

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