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【LFA80】試合結果──と、ガチャガチャMMAの怖さについて

Steve Garcia def. Jose Mariscal【写真】体重オーバーはいただけないスティーブ・ガルシア。しかし、エルボーの連打で勝利──強い。彼のようにタイトル戦線に顔を出す選手は当然として、5勝0敗程度の戦績のファイターと日本で同程度のキャリアの持ち主を見比べる必要がある──北米を目指すのであれば (C)LFA

17日(金・現地時間)、ニューメキシコ州アルバカーキのルート66カジノホテルでLFA80「Garcia vs Mariscal」が開催された。

メインで体重オーバーのスティーブ・ガルシアJr、セミでジェローム・リヴェラ、再起に挑んだジョーダン・ライトらが、アグレッシブかつ体力と技術のある試合を見せ──LFAという北米最大フィーダーショーの質の高さが改めて感じられるイベントとなった。

昨年11月からUFC Fight Passでの配信が始まり、日本でも正規ルートでライブ視聴が楽しめることになったLFA。そして、PCや携帯の画面のなかで見られる試合の多くが、日本で見られているMMAとは、違いが生まれつつあることが理解できる。

ルール的には当然のように北米ユニファイドでケージ、日本でも多くのプロモーションがほぼ同じような試合環境を選手に提供できている。ただし、その中で行われる攻防は──UFCで世界最高を視たり、ONEでアジア勢の打撃の強さを見るのとは一味違い、これがフィーダーショーかと思うと正直なところゾッとさせられている。

これまで時折りチェックする程度でLFAに感じてきたのは、ダナ・ホワイト・チューズデー・ナイト・コンテンダーズ・シリーズと同様にガチャガチャしたMMAということだった。

ガチャガチャというのは打撃でパンチも蹴りも矢継ぎ早に繰り出され、そこからテイクダウンへ。テイクダウンが成った場合は即スクランブル、そしてまたスタンド打撃の状態に移る。この中でダメージを受けて被弾したり、スタミナを失うと敗北に近づく。

古い言い方をするとスイングするのが当然、しかもそれがハイスピードで噛み合っている。戦っている選手は、これはもう大変だ。息つく暇もなく、全力で15分間を走り切る必要がある。そんなLFAで行われているMMAには相手の攻撃を断ち切るという攻防が──特に組み技では見られない。

打撃戦と多い動きを好むファンの嗜好に合わせているから、しっかりと抑え要所を締める戦いができなくなっており、フィジカルコンテストとしては進化しているが、テクニック的には退化しているという風にも捉えていた。

それが11月移行LFAを見ていると、自分の目が節穴だったことに気付かされた。テイクダウンを奪うことが難しくはなっているが、テイクダウンを奪うことはできる。ただし、抑え込めないのは抑える技術が落ちているのではなく、抑えることができないだけ防御能力──ここでいえば立ち上がる能力があがっているのだ。

ONEのように明確にテイクダウン軽視の裁定基準ではないが、テイクダウンを奪っても抑えているだけでは効果的な攻撃とみなされないのは北米も同じだ。では何が必要になるのか、殴ることと極めることだ。殴るには相手を抑えるためにクラッチを組むことができない。そして勢いのあるパンチを打とうものなら隙間ができ、腰を押されてヒップエスケープから立たれる。

そうでなくても一旦は抑えようと思っても下の選手は、すぐにスクランブルに入っているので無理に抑えにいっても逃げられてしまう。それなら自分も力を使わずに流す。そして打撃でまたイニシアチブを取れば良い。LFAの上位ファイターは打撃を避ける選手はほぼ存在せず、疲れるぐらいならスタンドで仕切り直す傾向にある。

スクランブルも立ち上がり際にバックをとっても、胸を合わされる、もしくは下に落とされることを想定し戦っている。結果、下になった直後の極めが発展し角絞めやそこからの連係の精度が高い──フライ級王者ブランドン・ロイヴァルに代表されるような試合の流れも見られる。

この戦いに今、国内で戦い北米を目指す選手は対応できるのか。テイクダウンしてから、スクランブルというMMAは、日本でも見られるのは確かだ。ただし、そのガチャガチャにおいても打撃の威力と圧力、組みの瞬発力や抑えと極めの技術力に、LFAに出る選手と同じようなキャリアの日本人選手がついて行けるのか。

今、日本でしっかりと抑えることができない選手、打・極において仕留めることができない選手が、3つに大別されたベルトの一つを取って北米に進出して、彼らに勝てるのかはなはだ疑問だ。田中路教がLFAとの契約が合意に至ったことで、米国の労働ビザを取る過程にある。アーバインのチーム・オーヤマで腕を磨く堀内佑馬が、1月31日のLFA81に出場する。米国で練習している堀内が、LFAのケージでどのような試合をするのか。しっかりと日本の若い選手、北米を目指すファイター&指導者はLFAをチェックすべきだ。

LFA80「Garcia vs Mariscal」
<147.4ポンド契約/5分3R>
○スティーブ・ガルシアJr(米国)2R2分27秒
TKO
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×ホセ・マリスカル(米国)
<フライ級/5分3R>
○ジェローム・リヴェラ(米国)2R4分12秒
三角絞め
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×ケンドリック・ラクマン(米国)
<ライト級/5分3R>
○カーリントン・バンクス(米国)3R
判定
×クリス・ブラウン(米国)
<フェザー級/5分3R>
○トニーニョ・ガンヴィーニョ(ブラジル)3R
判定
×ジョッシュ・マーシュ(米国)
<ミドル級/5分3R>
○ジョーダン・ライト(米国)2R0分48秒
TKO
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×ガブリエル・チェッコ(ブラジル)
<ウェルター級/5分3R>
○テイラー・レイ(米国)2R3分01秒
RNC
×ジョシュ・ストレッカー(米国)
<フェザー級/5分3R>
○ショーン・ウィリアムス(米国)1R4分25秒
腕十字
×エドウィン・クーパーJr(米国)
<フライ級/5分3R>
○ジョシア・レイエス(米国)1R
RNC
×リッキー・エスキベル(米国)
<バンタム級/5分3R>
○ケイレブ・ラミレツ(米国)3R
判定
×クリス・ロジャス(米国)
<175ポンド契約/5分3R>
○ジェリン・ヒューラー(米国)1R0分12秒
TKO
×ゲイブ・ロドリゲス(米国)
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