【Special】カルペディエム三田、経営者・岩崎正寛「経営から学べる柔術もあるかもしれない」
【写真】試合を終えた澤田の話に耳を傾ける早川氏(C)MMAPLANET
Fight &Life Vol.73では「2019年、初夏。柔術」という23ページからなる柔術特集を組み、CARPE DIEM早朝柔術というカルペディエム三田で行われている早朝6時からの柔術クラスの記事がある。
朝6時からの柔術クラスを指導するのは、2月からCarpe Diem三田を経営するようになった岩崎正寛だ。日本の柔術界、ライト級を代表し、世界と伍してきた岩崎は以来、ADCCアジア&オセアニア予選しか試合に出ていない。道場経営者となった岩崎は、現役生活をどのように考えているのかを訪ねた。
──道場を経営するようになり、競技者からかなりシフトチェンジした柔術家生活に入ったということでしょうか。
「そうですね。多分、減量はもうできないですね……この生活になると。自分の我がままを通してはいけない状況になりました。減量をするとやはりイライラしますし、気持ちも試合に取られる方だったので。
道場をしっかりとやろうと思うと、ちゃんとシフトしないといけないと感じて、今こういう風にしています。僕自身、自分で才能があると思って柔術をやったことはなくて、それでも自分の生かし方を見つけてやってきました。結果、名前のある相手に勝たしてもらったり、良いタイトルを獲ることができました。
柔術と同じ根性の見せ方、徹底の仕方を貫けば世界に通じる良い道場にできる。なら、そこに集中しようと思います」
──もう現役に拘りはないということですか。
「グラップリングの練習は続けています。強い人とも組んでいるし、競技と距離を置いてからまたちょっと強くなれたと思います。なんで、強くなったのか……心に余裕ができたからだと思います。僕は競技志向が強すぎて、視野が狭かったです。これから自分はどういう風に練習して、どういう風になりたいのかって考えると、新しい技術を取り入れたいと思うようになったんです。
ジョン・ダナハーがグラップリング界に旋風を巻き起こした。そういうのは心に余裕のある人だからできるんじゃないかと。ダナハーは競技者じゃないけど、良い先生でバリバリの子たちに伝えた。だから、あれだけ影響力を与えることが可能だったんじゃないかと思います」
──トーナメントに出ることで見ていた柔術と、今、見ている柔術は違うモノに?
「今は会員さんを見て『この人はどうすれば、もっと柔術が上手くなれるのだろうか』、『どういう指導をすべきなのか』ということを考えています。以前、自分が強くなるためにはどうしたら良いのか──と考えていたのと同じぐらい考えるようになりました。スタッフと技術論を話し合うこともありますし、こういう風に嵌めこめば人は強くなるということを見つけたいです」
──だから、また強くなれたのではないですか。
「そうかもしれないです。自分が勝つことだけを考えると、視野が狭くなるのに対して、人を指導しているとどんどん枝葉が広がっていく。そういう部分で組み技を見ることができるようになったかもしれないです。
ディープハーフでどのタイミングでスイープするのかを考えていたのが、ゲームではなく組み技そのものを考え出したのかもしれないです。こういう原理で成り立っているという部分で柔術を見るようになった……かも。
クローズドガードを使う人もいれば、フレキシブルな人もいる。その人たちに合ったモノを100点でなくて良いので、50点以上のアドバイスをしたいです。そうなるには自分が技術を知っておかないといけないですし、絶対的に強くないといけないです」
──ADCC予選で負けて悔しさというのは?
「納得はしました。負けるべくして負けたので。負けたことよりも、勝ったことに違いがありました。これまで僕の展開は下だとハーフ、上は守って勝つ。この2パターンでしたが、この間はハーフガードをあまり使わずスタンドで戦い、がぶり、がぶり返し、バックエスケープという風に色々な動きを試しました。自由にやっても『勝てるじゃん!!』と想えたんです」
──記者としては道場経営者ではなく競技者を追いたいですし、まだまだ岩崎選手の試合を追いかけたいというのが本音です。
「ハイ。これで僕の柔術が終わりとは一切思っていないです。30歳を過ぎて35歳、40歳になっても柔術としっかりと接していれば……経営から学べる柔術もあるかもしれない。凄いシステムを見つけて返ってくる可能性もある。ちょっと時間は掛かるかなと思っていますが、それが今やりたいことです。
ここの代表になって、まだ経営者として白帯です。だからこそ片手間にできないです。カルペディエムは一道場でなく、組織です。無責任な経営……中途半端なことはできないと思って代表をしています。人に任せられるようになって、自分も試合に出る。そういう風になるためにも色々なことをやらないといけないと思っています」