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【EJJC2019】岩崎正寛が準々決勝で敗れたライト級に超新星ジョーンズが出現、レプリを破り優勝果たす

15日(現地時間・火)から20日(同・日)にかけて、ポルトガルの首都リスボンにあるパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスにてIBJJF(国際柔術連盟)主催のヨーロピアンオープン柔術選手権が開催された。ヨーロッパを中心に、各国から強豪が参戦するこの大会レビュー。第4回目は昨年ライト級準優勝の岩崎正寛の試合を中心として、超新星登場に世界が湧いた同級の戦いを振り返りたい。
Text by Isamu Horiuchi


<ライト級一回戦/10分1R>
岩崎正寛(日本)
Def. by 3-0
ジェレミー・ジャクソン(米国)

岩崎の一回戦の相手は、昨年32歳にして黒帯を取得したジェレミー・ジャクソン。サンノゼのカイオ・テハ・アソシエーションで練習を積むジャクソンだが、もともとは「ガンビー」ことアラン・マーケス(ハウフ・グレイシーの高弟にして、90年から00年代に南カリフォルニアのグラップリング・シーンを牽引した企業On The Matの創始者の一人)の弟子だ。

試合開始と同時に、滑り込むように引き込んでクローズドをとったジャクソン。対する岩崎はベースを取ると、力強く左腕でジャクソンの右足を下げさせてガードを開ける。すかさずジャクソンは右足でラッソーにゆく。

腰を上げる岩崎は右に回ってのパスを仕掛けるが、ジャクソンも付いてゆく。片襟片袖ガードを取るジャクソンに対し、揺るぎないバランスを見せる岩崎は低くプレッシャーをかけてから、左足を捌きながら左に回ってのパス。これでジャクソンに一瞬腹ばいの体勢を余儀なくさせ、アドバンテージを一つ先制した。

さらにオープンガードを取るジャクソンに対して、足を捌きにかかる岩崎。が、ここで指を負傷したかしばらく中断が入った。再開後、ジャクソンは岩崎の右腕を超えての三角を狙うが、岩崎はすかさず得意のスタックへ。そのまま上四方の体勢で低く体重を掛け、開始3分のところでパスガードの3点を先制してみせた。

やがてジャクソンは背中を向けて起き上がり、スタンド再開に。頭を付け組み合った体勢から、岩崎は飛び込んでジャクソンの右足を抱えてのシングルレッグに入るが、場外に。

再びスタンドに戻ると、岩崎は時折シングルを仕掛ける。やがて立ちでは不利と悟ったか、ジャクソンが再び引き込み。左足でラッソーを作るジャクソンだが、岩崎のベースを崩せないと判断するとまた立ち上がった。

残り4分。岩崎再び膝を付いてジャクソンの左足めがけシングルに。ジャクソンは反応するも、岩崎はドライブを続けその体勢を崩しかけることに成功。最後は場外に出るも、アドバンテージを追加した。

その後またしても引き込んだジャクソンは、左足でラッソー、右手で岩崎のラペルを掴んで仕掛けるが、岩崎のベースは崩れない。逆に岩崎が低く噛み付き、ジャクソンにスクランブルを余儀なくさせてアドバンテージを追加した。

スタンドに戻って残り1分。またしても引き込んだジャクソンは、岩崎の左腕を超えて三角の体勢に入るが、岩崎は体を入れる。残り30で引き込んだジャクソンだが、岩崎はその仕掛けを安定したベースで防ぎ、最後は立とうとしたジャクソンを浴びせ倒したところで試合終了。

スタンドでもグラウンドでも盤石のベースでトップを譲ることなく、相手に付け入る隙を与えず攻め続けての快勝──調子は上々と思われた岩崎だったが、続く準々決勝でアレッシャンドリ・モリナロにレフェリー判定負けを喫してしまう。このモリナロは、昨年岩崎が欠場したアジア大会ライト級を制した22歳。昨年北欧の超新星エスペン・マティエセンが登場したライト級に、また一人手強い新鋭が台頭してきたことになる。

ライト階級の決勝は、そのモリナロをチョークで仕留めた絶対王者ルーカス・レプリと、ユニティ柔術で練習をするオーストラリア出身の21歳の若者、リーヴァイ・ジョーンズ=レアリー(以下ジョーンズと呼称)の組み合わせに。

ジョーンズは準決勝でジャンニ・グリッポと対戦。橋本知之も得意とするアキレス腱固めグリップを使ったデラヒーバガードを駆使して押し気味に試合を進めたジョーンズは、終盤にレッグドラッグの形でグリッポの両足をまとめて抑えて横に回ってニアパス。最後はなんとかポイントを回避しようと背中を向けたグリッポのバックを奪いかけて、圧巻の勝利を収めている。

絶対王者レプリと、また一人ライト級に現れた超新星ジョーンズによる決勝戦は、なんとジョーンズが序盤にデラヒーバガード&アキレス腱グリップの形から迅速のベリンボロで先制。レプリもハーフからのスイープで同点に追いつくと、そこから世界一のニースライドパスを狙うレプリとデラヒーバを中心にベリンボロを狙うジョーンズによる熾烈な攻防に。レプリの右膝の侵攻を巧みな足&体捌きで止め、ベリンボロで何度かレプリのバランスを崩したジョーンズがレフェリー判定を2-1でものにし、衝撃の黒帯国際大会デビューを果たしたのだった。

この試合で特筆すべきは、序盤にジョーンズのベリンボロをもらったレプリは、上を取り返してからはそれを十分に警戒しつつ、ニースライドパスを狙っていったこと。そしてそれにもかかわらず、ジョーンズがその侵攻を止めた上でベリンボロを仕掛け続けて主導権を握ったことだ。ジョーンズは不意を突いたのではなく、絶対王者の必殺のムーブに自らの得意技で真っ向から挑み、凌駕してみせたのだ。

もっともレプリは前日の無差別級にも出場し、最軽量ながら3試合を勝ち抜き決勝進出をするという快挙を成し遂げており、翌日曜に行われた階級別ではベストコンディションにはほど遠かったようだ。では、万全の状態で両者が再戦したらどうなるのか。そして最近は体重を上げている(今大会はミドル級にエントリーしながらも欠場した)エスペン・マティエセンが再びライト級に参戦することはあるのか。さらにJTトレス、マイケル・ランギ、ヘナート・カヌート、エドウィン・ナジミ、ヴィトー・オリヴェイラ、そしてホベルト・サトシ・ソウザ。まさに強豪ひしめくこの階級で、岩崎がどのような戦いを見せるのか。3月のパン大会、6月の世界大会と興味は尽きない。

■EJJC2019ライト級リザルト
優勝 リーヴァイ・ジョーンズ=レアリー(豪州)
準優勝 ルーカス・レプリ(ブラジル)
3位 ジャンニ・グリッポ(米国)、アレッシャンドリ・モリナロ(ブラジル)

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