【ONE】Fight&Life#74。格闘紀行よりアギラン・タニ「秋山に勝てたことで、凄く自信を持てるように」
【写真】本人は否定するが、紛れもなくマレーシアのMMAを引っ張る若きリーダーがアギランだ(C)MMAPLANET
現在発売中のFight &Life Vol.74ではマレーシア・クアラルンプール紀行として、現地のMMAと柔術に関してレポートされている。
マレーシアのMMAといえばONEが活動を開始する以前は、その実態が殆ど知られていなかった。そのONEの定着とともに発展してきた同国のMMAを引っ張る存在がアギラン・タニだ。
6月のONE95=上海大会で秋山成勲を破ったアギランのインタビューをここで紹介したい。
──秋山成勲選手を破りました。
「とてもハッピーだよ。2連敗していたから、アキヤマのような名前のあるファイターに勝てて良かったよ」
──作戦はどのようなものだったのでしょうか。
「プレッシャーを与え続けること。そして投げを打てなくし、打撃も封じ込むことだったんだ」
──最初に一本級の払い腰を食らいました。その後はアジャストできたということですね。
「あの投げを受けてから、焦って自分からテイクダウンを仕掛けてはいけないと思った。そこからは打撃戦に持ち込んで、自分の距離をコントロールできていたから投げは問題なかったよ。僕の腰が最初に投げられた時のようにアキヤマに近づくことはなかったから、もう投げを食うことはなかった」
──アギランのキャリアのなかで、秋山戦の勝利の意味は?
「こんなに実績のある選手に勝ったのは初めてだから、間違いなくキャリア最大の勝利だよ。これでまたチャンピオンを目指すことができる位置に戻れたと思う。そうだね、アキヤマに勝てたことで、凄く自信を持てるようになったよ」
──大きなステップになりましたね。
「間違いないよ」
──ところでマレーシアMMA界のリーダーとなったアギランはいつMMAを始めたのですか。
「リーダーなんて呼ばないでよ(笑)。僕にその呼び方は相応しくないから。僕はまだ若すぎる。エブ・ティン、ジアニ・ズッバ、ケオニ・ズッバ、サイフル・メリカンの方が相応しいよ。ケアニは一緒に練習しているし、ジアニもバリMMAにいった時のトレーニング・パートナーなんだ。
そうそうMMAを始めたのは17歳の時だよ。2013年だ。その1年前に、ここモナキで柔術を始めたんだよ。マレーシアはまだ当時、ブラジリアン柔術もMMAも3年とか5年ぐらいの歴史しかなかった。始まったばかりで。その後もゆっくりと成長していたのが、ここにきて加速度を増しているね」
──2012年にONEがKLにやってくるまで、MMAの浸透度はどのようなモノだったのでしょうか。
「僕自身はStrikeforce、WECやUFCの視聴はしていたよ。PRIDEのことは、モナキMMAに入門して他の国のファイターから教えてもらうまで知らなかったよ。当時は自分の将来がどうなるのかなんて分からず、練習の成果をMIMMA(マレーシアン・イノベーションMMA)の試合で発揮することだけを考えていた。
その結果MIMMAでチャンピオンになることができて、ONEとサインができたんだ。今はONEのチャンピオンになることしか考えていない」
──世界最大のMMA大会であるUFCについては、どのような印象を持っていますか。
「ONEが成長しているから、UFCが世界一のプロモーションとは思っていないよ」
──今回KLにやってきたときに、空港からホテルに向かうために乗ったタクシーのドライバーはONEとUFCも区別がついていなかったですが、アギラン・タニのことは知っていました。
「僕はこの国のインド人社会からサポートを受けているから、それで普通の人も知っているのかしれないね。ただ、まだまだ一般のマレーシア人にはMMAは広まっていない。彼らが一番好きなスポーツはバドミントンとサッカーだ。それでもONEによって、より多くの人々がMMAを知るようになった影響もあると思うよ」
──マレーシアを構成する3人種、マレー、華人、インド人のなかでもインド系がMMAを良く見ているのですか。
「そんなことはないよ。人種によることはないと思う。皆、見ているよ。ただ、僕のサポートはよりインド系が多いということなんだ」
──ONEで戦い、知名度も上がり生活は変わりましたか。
「絶対的にね。ベン・アスクレンに挑戦をしてから、負けたにも関わらずもの凄く応援してもらえるようになった」
──ファイナンシャルのサポートも?
「スポンサーマネーは少しある。知名度が上がって、一般層でも徐々に注目されるようになった。街で話しかけられたり、握手を求められることも老けたよ。僕が注目されることでMMAとONEへの注目度も上がるからね」
──今はフルタイムでファイターなのでしょうか。
「そうだよ。他に仕事は持っていない。指導とファイト、スポンサーマネーで生活できている」
──モナキMMAでの指導は何をメインに?
「MMA、キック、柔術だよ。多くのジム生は楽しむためにここにやって来る。本気でファイターになりたい者はブルーノ・バルボーザ、コンラド・ファーランの指導を受けているんだ。ジムに100人いれば、本格的に試合に出たいと思うのは15人から20人だろうね。でも、長続きしない(笑)。だから実際にプロになれる選手はさらに少なくなるよ。
とにかく急がず、長い時間をかけることだよ。すぐに成功して、有名になるとかないからね」
──モナキでプロを目指す選手たちはどのようなキャリアアップの道があるのでしょうか。
「今、国内はプロMMAの大会はなくてプロとアマチュアのミックス大会はある。MIMMAから名前を変えたマレーシアン・ファイトフェスト(MYFF)はアマチュアだけで、アマチュアだけのランペイジ・ファイト、オクタゴン・エイジアがベナン州、クアラルンプールではムエフィットが行っているMFC(マレーシアン・ファイティング・チャンピオンシップ)という大会がある」
──ムエフィットもマレーシアを代表するMMAのジムですね。
「そうだね。MFCは2、3試合のプロマッチと10試合以上のアマチュアの試合を組むイベントだよ」
──それらの大会のルールは?
「アマはIMMAF、エルボーとヒザは顔面に入れてはいけない。プロはUFCと同じルールでONEルールじゃないんだ。アマでも試合に出る選手は、プロを目指している。モナキ所属でIMMAFのアジア王者になったコリーン・オーガスティンもそうだよ。彼女はキャリア2年でアマMMAで5勝0敗なんだ」
──プロとして彼女達が目指す舞台は、やはりONEになるのでしょうか。
「そりゃぁ、ONEが一番だよ。でも簡単じゃない。だから、どこだろうが戦える大会で試合をしていくべきだよ。彼らがキャリアを重ねるために当たって、ONEウォリアーシリーズの存在は大きいよ。ONEへの入り口になる、最高の選択肢だからね。
マレーシアのMMAはアジアのトップを目指している。今はフィリピンが1番で、日本と韓国がいる。この3カ国とはまだ距離があるから、まずは第2グループでトップを目指したい。でも、プロになることが全てじゃないよ。
だからこそ僕はMMAファンだけでなく、一般の人にとって良いロールモデルになりたいんだ。僕は……MMAを特別なモノにしたくないんだ。ジムに来る全ての人にMMAを楽しんでもらいたい。ダイエット目的の人達が楽しめるMMAであってほしいんだ」