【All Japan JJC】女子黒帯ライトフェザー級、湯浅麗歌子「最短で殿堂入りを狙います」
【写真】ADCCを見据え、アブダビ・グランドスラム東京ではトップからの攻めを課題にしたという湯浅。「試合じゃないと分からないことがある。これまでは巻きスパイダーがほとんどだったけれど、とにかく出したい技がいっぱいあるんです!」と語る(C)SATOSI NARITA
8月4日(日)、東京都文京区の文京区総合体育館にて開催されるJBJJF主催の全日本ブラジリアン柔術選手権。
女子黒帯ライトフェザー級には日本のブラジリアン柔術界の“女王”、湯浅麗歌子が10年振りに参戦する。今でこそクインテットへの参戦で国内でもその姿を目にする機会が増えた湯浅だが、これまで彼女がその雄姿を露としたのはIBJJFアジア選手権やUAEJJF主催大会などに限られていた。
そんな湯浅に一体どのような心境の変化があったのか。7月28日、大田区総合体育館で開催されたアブダビ・グランドスラム東京の試合後、話を訊いた。
Text by Satoshi Narita
──今大会(アブダビ・グランドスラム東京)の決勝は予想通りマイサ・バストスとの対戦となり、4-2でマイサの勝利に終わりました。
「ハイ。ただ、何とかなりそうだなという手応えを感じています。ダブルガードも以前はヤバいかなと思っていたんですが、今回は彼女も焦っていたようだし」
──ムンジアル後にお話を伺った時、マイサ対策はしていたものの、練習相手の体格が大きく、マイサ本人と組んでみると思わぬ距離感の違いがあったと話されていました。
「今日は距離を詰められたし、ラペラを外すこともできました。襟持ちのパスも行けそうだったけれど、彼女はよく、足をここ(ラペラの裏側)に入れてくるんですよね。どうすれば足を入れられないか、あの対策も考えなければと思っています。
でも、今回は一つ試してみたことがあって、最初の立ち合いでラペラが出ないように(上半身と太腿で)挟んでみたんです。あの形は良かったと思っています」
──普段より湯浅選手の構えが低いように見えましたが、そうした狙いがあったのですね。
「いつも以上にわざと低くしたら、ラペラを出せなくてマイサも困っていたようなので、あれは効くなって。ただ、6分だとちょっと焦ってしまいますね。『あと1分だよ!』と言われると『あと6分欲しいなぁ』と。
私は自分のゲームを創るに時間がかかるというか、パワーが強かったり動いてきたりする相手だと、それをディフェンスしながら創っていくことになるので、やっぱり10分のほうが好きですね。特に1試合目がそうで、相手が『ふぅ〜』って疲れてきた感じだったから『よし、ここから!』と思ったら、タイムアップになってしまって」
──その初戦の相手、エリーナ・モエスタムは今年のムンジアル茶帯ライトフェザー級で優勝した若手の有力選手です。
「普通に強かったです。初めは私自身が少し力んでみたんですけど、彼女の力が想像以上だったので下がって、距離を取ってという戦略を変えました。さっき話していたら、ルースターに出ていたこともあったけれど体重が落ちないから、普段はライトフェザー級で、フェザー級で出る時もあるそうです。今回も落として55キロで出ていたみたいで、6分だと力の強い外国人選手に分があると思います」
──続く2回戦(準決勝)は杉内由紀選手との日本人対決でした。
「由紀さん、深津(佐和子)さんのどちらが上がってきても、上をやろうと考えていました。今大会の課題は、それがメインだったんです。だからダブルガードで上を取って、とりあえずアドバンを取ってからパスを狙っていこうと。
ただ、練習だと由紀さんにいつも足関を取られるんですよね。今回も途中で由紀さんがポイントを献上して引き込んできたんですけど、足を掬われていたらヤバかったですね。そのくらい彼女の足関は恐いので」
──さて、今回のインタビューはJBJJF全日本選手権の開催前に公開する予定ですが、エントリーの受付が終了し、湯浅選手の名前が並んでいることに驚きました。リザルトから確認できる限り、2009年の青帯フェザー級優勝以来の参戦になりますよね。
「そのことを言われて、もう10年も出てないんだ……って感じでした。当時はDUMAUのエントリー費が安かったし、獲得したポイント数によって海外大会の渡航費がもらえたので、そっちをメインで出ていたんですよね。やっぱりお金がかかりますし、バイトをしながら練習していたので」
──参戦を決められた理由を伺えますか。取材依頼のご連絡をした際、「殿堂入りを目指そうと思って」と言われていましたが。
「全日本はムンジアルの直後なので、これまではモチベーションが上がらなかったというのが正直なところなんですけど……。実は、しばらく前にIBJJFの殿堂入りについて問い合わせてみたことがあったんですが、『〇連覇すれば入れる』という明確な基準があるわけではないらしくて。それで、日本にも殿堂ができたし、せっかくなら狙ってみようかな、と。
今回無差別にエントリーしたのも、階級別と無差別の2階級制覇できれば、優勝回数が1.5回分でカウントされるんですね。殿堂入りの条件は黒帯で4回以上優勝した選手が対象なので、最短3年で取れるんじゃないかって。だから、来年も再来年も出るつもりでいます(笑)」
──2021年まではほぼ確定というわけですね。ただ、国内では敵無しと言える湯浅選手の参戦は、殿堂入り以外にも何か理由があるのでは、と詮索してしまいます。
「10分の試合ってなかなかないじゃないですか。アジア選手権だと気を張ってしまうし……。来年のムンジアルのことを考えると、その時に初めて出すような技では通用しないと思うんです。現時点で試したい技がたくさんあるので、いろんな人と試合をしながら、実戦で使えるかどうかを感じたいというか。トップからでもダブルガードからでも、自信を持って一つ一つの技をできるようにならないと、明確なプランを立てることもできませんから。
あと、子どもたちの影響もあります。指導をしているGRABAKAの子どもたちが全日本キッズ選手権に出るんです。で、『先生の試合が見たい!』って言われて(笑)。本当はアブダビだけにしようと思っていたんですが、全日本なら試合に出ない子も来られるだろうし、DRAGON’S DENからもみんな出るようだし。キッズのセコンドには行く予定だったので、どうせなら出てみようかなって。
違うと思うんですよね、自分たちの先生の試合を間近で見るのって。『ホントにこんな風に戦っているんだ』と思ってくれたら嬉しいというか。あと、威厳を保つじゃないけれど、子どもって段々調子に乗ってくるじゃないですか? だから『ちゃんと見とけよ〜!』って意味もありつつ(笑)。みんなで楽しく柔術をしていきたいし、それで言えば、来月のクインテットも出ます」
──8月25日に開催される、アマチュア・クインテットのAll JAPAN CHAMPIONSHIPに?
「ハイ。越後(伊織)を監督にしてエントリーしました。まだ相手チームはいないんですけど(苦笑)」
──これまでは大会を絞って出られていましたが、試合間隔について問題はありませんか。
「もともとひと月に2、3回は大会に出ていたので、あまり気にしていません。ただ、ADCCもあるので体重と相談しながらですね。ビア(・メスキータ)とかは64キロから落としてくるわけですから、もう少し食べる量や運動量も増やして、筋肉をつけないといけないなって。
ノーギ自体はコンスタントに練習しているし、クラスも持っているんですけど、体重を増やしてみたら動きが少し遅くなったので、吹っ飛ばされはしないけれど重くもない、自分が動きやすい体重に調整していきたいです」
──全日本、ライトフェザー級には芝本さおり選手、そして村上彩選手がエントリーしています。
「村上選手とはスパーリングをしたことがあるくらいなんですけど、芝本さんとは超久々です。2012年、紫帯のアジア選手権が最後だと思います。それまでは何度も対戦したことがあるけれど、茶帯や黒帯ではなかったので楽しみです(笑)。殿堂入りを目指す上で、挑戦者という意識で臨みたいと思います」