【ONE94】改めて青木真也に訊く、クリスチャン・リー戦─01─「いつ死ぬか分からないことに尽きる」
【写真】戦った本人が、敗れた試合で技術解説を実践することは極めて異例だ。ここにも青木のプロフェッショナリズムが見え隠れしている (C)FIGHT & LIFE
現在発売中のFight &Life Vol.73で盟友・八隅孝平と5月17日のクリスチャン・リー戦における腕十字の攻防を実演&解説している青木真也。
腕十字を仕掛けた青木になぜ極めることができなかったのか。仕掛け、心理を振り返ってもらったインタビューと同時に、MMAPLANETではクリスチャンとの試合に向けて、青木のプロとして流儀、そしてこれからを尋ねた。
「人はいつ死ぬか分からない」という死生観が、今の青木の原動力になっているのかもしれない。
──改めてクリスチャン・リー戦について、Fight & Life誌では腕十字の攻防について自ら解説をしてもらいましたが、ここでは今後を含めてなど話を聞かせてください。
「ハイ」
──1カ月半強のインタバールで挑んだクリスチャン・リーとの試合、そしていつも通りPRもこなし続けた。どうしても、無理があったのではないかという風に……結果論ですが感じてしまいます。
「あぁ……そう言ってもらえることが、有難いです」
──負けたから、そうなるのであってエドゥアルド・フォラヤン戦にしても、やはり試合前が忙しすぎた。でも勝ったから流してしまったような。
「でも、武尊とか那須川天心もやっているじゃないですか」
──2人は若いですから。
「そこ?(笑)」
──私は武尊選手と那須川選手のことは分からないのですが、青木選手は露出やPRを自分でハンドリングしている。企画、演出、出演、青木真也のように。それは疲れますよね。
「疲れると思います(笑)。でも、プロモーションをしないで試合をするようなことはしたくなかったです。それは僕が一番やってはいけないこと。責任感がないことなので。多くのファイターが試合だけをしていれば良いという現状だから……ほとんどのファイターがそう思っているからこそ、僕はそうはできない。
考えて、動いて、Abemaを見てくれる人を増やしたい。そうしているファイターがあまりにもいないから、僕がおかしく見えるのかもしれない」
──おかしく見えるのはなくて、負担がかかり過ぎているのではないかということですよね。それはAbemaのスタッフも思っていることではないでしょうか。他の選手も頑張りだすと、青木選手のポジションが侵されるという考えもできますが……。
「それは全然思っていないです。他の選手が僕と同じことができるとは全く思っていない。それに僕でなくてもできるのなら、代わってやってほしいです。だから、そこは考えていないです。これは意地悪な言い方になっちゃいますけど、僕は自分から解説をしたいって売り込んだことないですし。他の若い選手がやれるようになって、やれば良いと思っています。
そうですね、日本大会もクリスチャン・リー戦のプロモーションにしても割と格闘技メディア以外で露出してきた。そこを頑張ってきたというのは結構あります。それは僕しかできない。色々なところにお願いしてやってきたことなので。
それをね……関係者の中に自分たちがやっていると思っている人間がいるのはむかつく。俺がやっていて、お前らがやっているんじゃないぞって」
──心当たりのある人間は、震えあがっていますよ(笑)。
「ちゃんとやっているつもりかもしれないけど、俺はお前たちから来た取材の仕事なんてほぼない。自分で頭下げて取ってきたんだぞっていうのはありますね」
──だから、負担だと感じるわけですよ。
「次も同じことやります(笑)。次もやる!!」
──勝負を運に任せるまで努力する。その努力のなかにプロモーション活動も含まれているということですね。
「だから、もっとやっておかないといけなかったということは実はあまりないです。やるだけやったんで」
──ベルトを20歳の選手に取られた。今後は、どのようにキャリアを築いていこうと考えていますか。
「もともとベルトに固執はしていないじゃないですか? でも大前提としていつ死ぬか分からないということがあります。人間って無条件で老後とか長く生きることを考える。でも、そもそも死はいつ訪れるか分からないと思っています。
花井(岳文)さんやプロレスラーの青木篤志さんのように言葉を交わしたり、一緒に遠征した人が亡くなった。そのことを考えると、人間はいつ死ぬかなんて本当に分からないです。だからとことんやりたいことをやって、勝負していきたいなとは思っています」
──ONEのなかでとことんやるMMAファイター人生とはどういうモノになるのでしょうか。
「ONEのなかで強いとされている人間と戦い続けることです」
──ここまで戦ってきて、タイトルが懸かっていない試合でローウェン・タイナネスやザイード・フセイン・アサラナリエフと戦うことは酷だと感じる。それは青木選手にとって、失礼な意見になってしまいますか。
「俺はスケベなことを言っちゃうと、そういうファイターと戦うことで価値が上がると思っています。本気で思っています。要は文脈というか、時期というものがあり、この年齢だからこそ勝負、勝つか負けるかを運に任せると言えるようなコトをしていく。それで自分の価値が上がると思っている」
──試合がなかなか組まれなかった時期を経て、Abemaというパートナーを得ることができた。なのでやり切りたいという気持ちが強くなりましたか。
「それはもうタイミングの話です。直接的につながることではないのですが、いつ死ぬか分からないということに尽きるんです。PRIDEもDREAMも無くなった。継続的にずっとあるなんてことはない。今、Abemaがあるなら一生懸命やりたいし、必死で楽しみたいです。今、ONEがあるなら一生懸命やりたいし、必死で楽しみたい。そこなんじゃいかと思います。いつまでも、あると思ってないので」
<この項、続く>