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【WJJC2019】ルースター級、橋本知之─01─ 「準優勝もベスト4……8なんて毎年死ぬほど生まれている」

Tomoyuki Hashimoto【写真】天才は見ている先が違う(C)SATOSHI NARITA

5月29日(水・現地時間)から6月2日(日・現地時間)にかけて、米国カリフォルニア州ロングビーチのカリフォルニア大ロングビーチ校内ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われる。

一昨年、昨年とルースター級で3位を獲得している橋本知之は、メダルはデフォルトとなり日本のブラジリアン柔術界の悲願といえる男子黒帯世界一の座に一番近い存在だ。

しかも昨年、10度の世界王者ブルーノ・マルファシーニが引退を宣言し、ライバルであるカイオ・テハの出場もないと予想された今年のムンジアルは、橋本がポディウムの頂点に立つ機運が例年以上に高まっていた。

それが蓋を開けてみると、マルファシーニとテハの出場ばかりか、現在ライトフェザー級でムンジアル2連覇中のマイキー・ムスメシまで階級を下げてルースターで戦う。この事態に橋本が何を想っているのかを助けると、この異才は世界の頂点を目指す戦いの場に関しても、常人とは違った感性を持っていた。


──いよいよ今週末にムンジアルがあります。既にトーナメント表が発表されましたが、カイオ・テハ、マイキー・ムスメシ、そしてブルーノ・マルファシーニが一つの山に入り橋本選手は違う山となりました。

「う~ん、なんかそうなるということは聞いていました。ポイントで割り振られるので、そういう風になるじゃないかと。カイオはポイントを持っていないので。ただ僕にも選手目線とファン目線があって、ファン目線的には楽しみですね。どうなるのかなって」

──準々決勝でカイオとブルーノが潰し合うことになるというのは。それにしても、橋本選手がファン目線を今も持ち続けているのは意外です。

「もちろん持っていますよ。それは始めた頃から変わりないです」

──なるほど。では、橋本選手自身のトーナメント枠についてはどのように考えていますか。

「最初の相手が澤田(伸大)選手なんですが、これまでノーギと道着で2度戦って勝っているので、勝算という部分では高いかなって思っています」

──ブラジリアン柔術の世界に浸かっていると、海外の初戦で日本人と戦うのも気にならないですか。

「それは全然ないです。逆にそこを気にして『初戦が日本人か……』とかコメントしている人とか意味が分からないですね。トーナメントは誰と当たるか分からない。なら別に初戦で日本人と当たっても何も思わないです」

────クレベル・ソウザ、カルロス・アルベルト、ホドネイ・バルボーザらがライバルとなってくると。

「レベルは拮抗していると思います。僕が大きく優れているわけでもないし、大きく劣ってもいない。やってみないと分からないというか……、どう上手く戦えるのか。実力的には凄く拮抗している戦いになります。ホドネイにはヨーロピアンの決勝で負けましたけど、力の差はなかった。だから僕が勝てるとしても、簡単な試合にはならないです」

──過去2年銅メダルを獲得しているので、さらなる高い位置を期待されます。

「う~ん、どうなんでしょうね。その辺の結果で、評価が大きく変わることもないし。もちろん優勝したら凄いことですけど、内容が大切だと思っています。どういう選手にどういう勝ち方をしたのかが評価される部分なので」

──ムンジアルという最高峰の戦いでも、結果が全てにはならないですか。

「だって毎年、準優勝もベスト4も……ベスト8なんか死ぬほど生まれるわけですから。3位に2回なって得たモノはなくなはないです。でも、それが全てだと思っていないし。今年も2位とか3位になったところで大きく評価が変わることはないので。

それならきっと2回戦で当たることになるクレベル・ソウザにしっかりと勝てたほうが、それなりの評価がついてくる。まぁ、それでも大きく変わることはないですしね。その試合から評価されることがあると思うので」

──そうなるとムンジアルで評価される成績は優勝だけだと。

「優勝というか、ブルーノを倒して優勝すれば凄いことです。それは優勝よりも、ブルーノに勝つことが凄い。だから結果よりも、相手と内容だと思います」

──日本人男子黒帯の悲願の初優勝を欲し、マルファシーニもテハも出ない今年はチャンスだと感じる我々と橋本選手は見ている先も感性も違うのですね。それがチームメイトとはいえ、テハだけでなくムスメシまで階級を下げて出てきますし……。橋本選手のなかでは、そこも織り込み済みだったのでしょうか。

「マイキーは体重が厳しいそうで……結構、悩んでいましたね。だからギリギリまで分からなかったです。カイオも練習をしていたので出るのかなってぐらいで、あんまり分かっていなかったです」

──いずれせよ、マルファシーニを含めて強力な優勝候補です。そしてムスメシやテハが決勝進出となると、橋本選手が勝ち上がってもクローズアウトという状況になるのでしょうか。

「普通にあると思います。練習をしていて選手として向こうの方が優れているので。う~ん、その辺は僕も葛藤はあります。誰よりも上手くなりたいというのと、勝って世界一になりたいというのがあまりリンクしてこない状況には。だって上手くなりたかったら、自分が尊敬している選手と練習したいと思うのは当たり前じゃないですか」

──ハイ。

「でも、そうなってくると試合をした時にいつも学んでいる相手に勝とうと思わなくなる。自分より優れているなら、その人が1位で良いなって思ってしまうのは……若干、問題ですよね」

<この項、続く

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