【WJJC2019】ルースター級、澤田伸大ー02ー 「ムンジアルも自然体、大事なことは『いつも通り』」
【写真】飄々というか、淡々としているというか。目の前の出来事を俯瞰できているような雰囲気だ(C)SATOSHI NARITA
30日(木・現地時間)から6月2日(日・同)にかけてカリフォルニア州ロングビーチで開催されるIBJJFブラジリアン柔術世界選手権=ムンジアルの黒帯ルースター級に出場する澤田伸大インタビュー後編。
今年に入って澤田は、1月はヨーロピアン、3月はロンドンでアブダビ・グランドスラム・ロンドン、キング・オブ・マット、Polarisを連戦。パンでは3位入賞を果たし、先月にはワールドプロにも参戦するなど、ハイペースでトーナメント出場を続けてきた。
これまではIBJJF中心だったと本人も語る中でのUAEJJF主催大会への参戦は、ムンジアルで勝つためのステップの一つ──というわけではないようだ。
Text by Satoshi Narita
<澤田伸大インタビューPart.01はコチラから>
──ノーギワールド後に話を戻すと、今年はUAEJJFの主催大会への参加が顕著でしたね。
「ヨーロッパとパンはずっと出ているのでアレですけど、イギリスの試合とアブダビは運が良かったと思っています。
そもそも(グランドスラム・)ロンドン大会に出ようと思ったのは、UAEJJFのランキングでアジアの上位に自分がいたので、何かの大会に出ればアブダビの航空券をもらえるんじゃないかと思ったからなんです。それでエントリーしたら、『キング・オブ・マットも出ないか?』とメールをいただいて。
さらに、僕のスポンサーをしてくださっているScrambleの社長、マットさんから『ロンドンに来るならPolarisにも出たら?』と声をかけていただき、とんとん拍子で3大会に出ることができました。
キング・オブ・マットはダメだったんですけど、ロンドン大会は2位に入賞できたので、そのおかげでワールドプロのチケットが出たんですよね。今まで僕はIBJJF中心に戦ってきましたが、もう一つ、自分が出たいと思える新しいステージができたのは良かったです。今年の夏には東京大会があるし、チャンスがあればまたワールドプロにも挑戦したいですね」
──ワールドプロでは、通常は一階級上のイアゴ・ジョルジとも戦いましたね。
「彼とはキング・オブ・マットで初めて試合して、ロンドン大会では自分と同じ体重に落としてきてびっくりしたし、それでいてパワーはまったく変わってなかったですね。パスされて『これはどうしようもないな……』という感じでした。
イメージ的には中村大輔さんに近い。1回目の対戦ではそれを体感する間もなく終わっちゃったんですけど、ホント、中村さんを縮小コピーしたような感じなんです。力はもちろんなんですけど、ひとつひとつの動きがタイトで。敵を褒めるって良くないと思うんですけど、素晴らしいと思います」
── IBJJFとUAEJJF、ルールの違いは気になりませんか。
「相当違いますね。やっぱり、先行逃げ切りのゲームですから、そういう能力や技術を持っている選手がかなり強い印象がありますし、芝本先生も『別競技と考えたほうが良い』とおっしゃっています。
だからこそ、自分が使っていなかった技術を伸ばす良い機会だと考えています。10分だと使えないようなリスクの大きい技を6分なら使っていくべきだと思うし、いろんなルールで練習することによって、柔術の幅が広がるかなと」
──なるほど。さて、ムンジアルのエントリーが締め切られ、ルースター級の顔ぶれが出そろいました。リストを見た印象は?
「当然ですけど最高峰の大会なので、最高峰の人間が集まっているというのが率直な印象です。ただ、自分もポイントを貯めて参加する資格がある以上、残り時間は短いですけど、コンディションと技術を整えていきたいと思っています」
──調整はどのように進めているのですか。
「当然、新しいことを覚える時期ではないので、いま自分が持っているものを磨くというか、精度を高めること。あとは『忘れないようにする』ことです」
──というのは?
「入れ込みすぎると相手を潰してやろうという意識がどうしても高くなってしまい、技が狭まるんです。勝負ですからその意識はもちろん大切ですが、もっと落ち着いて、ある程度の柔軟性をキープすることを心がけています」
──ルースター級には同門の芝本選手もいます。
「そうですね。ホントに恵まれていると思います。同じ階級で同じ舞台を目指す、そして日本最高峰の一人がすぐ近くにいるっていうのは最高の環境だと。
だからこそ、現状に満足するのではなく、自分のケツを叩いて結果を出していかないといけないんですけど……試合になったらそういう気持ちは、それはそれで置いておくというか(笑)、リラックスして臨むくらいが自分にはちょうどいいと思っています」
──ムンジアルも自然体なのですね。そんな澤田選手にこの質問は野暮な気がしますが、ムンジアルに向け抱負はありますか(笑)。
「う〜ん(苦笑)。自分の立ち位置を客観的に見ると、『絶対優勝してやります!』と言える段階ではないと思いますし。ただ、初めて青帯で参加した時も(2012年準優勝)、茶帯で初めてのパンも(2015年優勝)、「よっしゃ、絶対勝てる!」と思っていなかったんですよね。だからと言って、そういう期待感を自分で持ってしまうと別の問題になるし……(笑)。
最終的なゴール地点──優勝とか表彰台は関係なく、ただ目の前の人間と勝負をする。その到達地点が優勝かもしれないし、負けてしまったらまだそのレベルではなかったということだし。
大事なことは普段、自分が練習している動きをする。だから、抱負として述べるとしたら『いつも通り』ですね。日本での試合もワールドも、僕にとっては同じくらい大切だと思っていますから」
※インタビュー後、トーナメント枠が発表され澤田が初戦は橋本知之と日本人対決を行うことが決まった。